新年に「日本を元気にする」メッセージ広告

 多くの人が仕事始めとなった1月4日、朝日新聞朝刊に宝島社の見開き全30段広告が掲載された。これまでも新聞広告を活用し、世相を反映させる独自のメッセージを発信してきた同社。今回は、「不況、不況」とネガティブになっている日本を元気にしたいという思いが表現されている。宝島社広報課課長桜田圭子氏に話を聞いた。

メディアが不況をあおる中
活字で元気を与えたい

――1月4日の全30段広告出稿の経緯、概要を聞かせてください。

 1998年から、折々のタイミングでメッセージを込めた企業広告を出稿してきましたが、実は新年に出すのは8年ぶりです。企画を進めるにあたり、新しい年が始まったばかりの広告ということで、「読んだ人みんなが元気になるような広告」という方向性が決まりました。

 世界的な経済不況が続いているのは事実ですが、それをさらにメディアがあおることによって、世の中に「不況ムード」が横行しているように感じます。こんなときこそ、メディアは元気や勇気を与える使命があるのではないか。そんな思いから、とにかくポジティブなことだけを伝える内容にすることに。しっかりと読んでもらい、活字の力を感じてほしかったので、あえてビジュアルは使わず、活字だけのクリエーティブにしました。

――こだわった点、工夫したポイントは。

 活字だけなので、内容はもちろん、言葉選びや言葉遣いには徹底的にこだわりました。特にメーンの「明日に向かって跳ぶ。」というコピーは、ともすれば「跳ぼう」という言葉を使いがちです。でも、個人的な意見でもあるのですが、「こうしよう」「こうしなければ」と言われると、何かお説教をされているような、押しつけられるような感じがすると思えたのです。そこで「跳ぶ」という言い切りの表現にしました。ちょっとした違いですが、できるだけ読み手に抵抗なく受け入れてもらえればと思いました。

 さらに、ビジュアルを使わなかった分、文字をきちんと読んでもらえるレイアウトにしています。メーンコピーを左紙面に置いていますが、一面から読んでいくと、紙面をめくった瞬間にメーンコピーが目に飛び込み、手を止めてもらえるという効果もあったようです。

 また今回は、あえてホームページのURLを記載しませんでした。デザイン面だけでなく、URLを載せることで、いかにも広告っぽくなってしまうのではないか、と考えたからです。ホームページでもこちらの広告はご紹介していますが、あくまでもメッセージ広告は新聞の紙面だけで完結したい。その点は、販促広告との大きな違いととらえています。

2010年 1/4 朝刊 2010年 1/4 朝刊

 

ポジティブな内容が
ツイッターで大きな話題に

――反響はどうでしたか。

 これまで企業広告を出すと、弊社に直接電話やメールで意見や感想を寄せてくれる読者が多かったのですが、今回はそれがいつもより少なく、もしかしたらあまり響かなかったのかな、と当初は少し心配していました。しかし、なんとツイッターで大きな話題になっていたのです。「今日の朝刊の宝島社の広告はすばらしい」「(内容に)そのとおり! と、ひざをたたいた」「会社の人にも教えてあげよう」など、たくさんの書き込みがされていました。ほとんどが肯定的なご意見だったことも併せ、うれしい反響でした。

 これまでも、広告に対する反響が、電話や手紙よりもメールが増えてくるなど、メディア環境の変化を感じることがありましたが、今回もまさにそうでした。新聞広告を見て、共感したり意見があったりしても、直接広告主に伝えてくる方はそれほど多くはないと思います。家族や友人、職場の仲間同士でも、わざわざ話題に出すかというとそうでもありません。でも、同じように広告に何かを感じた人とはちょっと共有してみたい。広告に対するそんな気分や態度と、ツイッターの気軽さが合っていたのではないでしょうか。

 さらに、1月4日掲載だったので、企業の年頭挨拶などで引用されたケースも多かったそうです。仕事始めというタイミングに、ポジティブな内容のメッセージが響いたのかもしれません。

 もうひとつ実感しているのが、弊社の認知度が上がってきている、という点です。以前は「宝島社って何の会社ですか?」「なんで出版社がこんな広告を?」という問い合わせやご意見があったり、社名を正しく認識してもらえなかったりすることもありました。しかし、女性誌の売り上げが好調なことなどで当社を知る人や、当社の雑誌のファンとして支持してくれる人が増えたおかげで、メッセージの理解度や浸透度が高まってきているように感じています。

――今後の展望を聞かせてください。

 これまでもメッセージ性の高い企業広告を数多く出していますが、その方針は今後も変わらないと思います。弊社のビジネスが新たな展開を迎えるとき、また、世の中に対して何かを発すべきと判断したときなど、タイミングをとらえてメッセージを発信していきたいと考えています。