今年8月、デルは朝日新聞の無料会員サービス「アスパラクラブ」の会員に行ったアンケートの結果をもとに、パソコン初心者を対象としたQ&Aスタイルの記事広告を朝日新聞朝刊に掲載。併せてアンケート結果を価格や構成に反映した製品を販売した。コンシューマ事業本部マーケティング部アシスタントマネージャーの横塚知子氏に聞いた。
会員アンケートの声から「お奨めモデル」を開発
――企画の背景と概要は。
デルが通常展開している新聞広告は、パソコンの購入を検討している方に向けて、我々の強みである価格の安さをアピールし、鮮度の高い情報を発信するというものです。しかしこの1年ほどで、消費者に対するコミュニケーションの仕方が、360度の全方位で展開することへと変化しています。新聞広告も、デル商品の購買意欲があるお客様をとらえるだけではだめなのではないかと考えていたところに、今回の企画広告の提案を受けました。
これまでもデルは、新聞に大きな予算を割いています。新聞は企画決定から掲載までを迅速に展開し、情報を瞬時で全国に広げることができます。また我々のユーザーの約80%は30~50代の男性で、新聞読者と合致しているからです。
しかし、パソコンに興味はあっても、デルが考えの中に浮かばない方もいらっしゃいます。この企画はそんな方たちにデルを知っていただき、「アスパラ会員」という朝日新聞が持つ会員組織を使って、第三者の視点を交えながら説得力のあるプロモーションができると思いました。
――紙面で特に配慮したことと、アンケートが商品企画にどう反映されたかを紹介してください。
デルに対して「安い」というイメージは定着していますが、それゆえに品質やサポートを心配されている方もいらっしゃいます。デルの安さの理由には、お客様の注文後生産に入るため、流通や通販コストをおさえられるということがある点などを伝え、新しいターゲット層の購買に働きかけました。
「お奨めモデル」に関しては、例えばアンケート結果でよく使う機能に「インターネット」「メール」「ワード、エクセルなどのオフィス機能」が上位に挙がりました。そこですぐに文書機能などが使えるように「オフィス」 を付け、ネットやメールに十分快適に使える「メモリは4GB、HDDは500GB」という現在の標準的なスペック構成にしました。10万円を切った価格もアンケートを反映しています。構成を自由にカスタマイズできるのはデルのよさですが、初心者には難しい面もあります。アンケートには5,320人という予想をはるかに上回る回答をいただきましたが、それだけ多くの声が反映されていることを強調し、お店ではなく通販でも安心して買えるモデルであることを伝えました。
――新しい試みの手応えはいかがですか。
この企画広告はデルが初めて、新聞と、当社のウェブサイト、ヤフーなどインターネットのバナー広告、会員の方々に送っているメールにすべて同じクリエーティブを使った初めての試みでした。新聞を起点とした360度のコミュニケーションを目指し、社内が大きな達成感を共有しました。
新聞には即効性とブランディング力のどちらもがあります。コール数を稼ぐための広告、デルというブランドを覚えてもらうための広告など使い方を変えながら、いろいろなお客様にデルを購買の選択肢にしていただくことがこれからは大切だと思います。