大きな話題を毎回集めている、宝島社の企業広告。今年は「新しい女性像」、そして同社の「女性誌」をテーマに、二連版30段の広告を出稿した。宝島社宣伝部長の新井浩志氏に話を聞いた。
企業活動を切り口にメッセージを伝える
今年のテーマは「進化する女性たち」
――企業広告について聞かせてください。
1996年から企業ブランディングを目的に続けている取り組みで、当社のあらゆる企業活動を切り口に、社会に対してメッセージを発しています。コンセプトは毎回、社内外のスタッフが集まり、社会情勢や今問題になっていることについてブレストして決めます。メッセージ性の高いコピーを重視しているため、文字と親和性が高く、社会への発信力が高い媒体である新聞広告を起用。過去には、駅張りのポスターを使ったこともあります。毎回、広告掲載日に問い合わせや感想の電話をいただくなど、非常に大きな反響があります。2006年の「団塊は、資源です。」の広告では、まさに団塊世代の読者から多くの感想、ご意見をいただきました。
――9月24日に掲載された「女性だけ、新しい種へ。」の企業広告について聞かせてください。
当社の今年を語る上で、「女性誌」はとても象徴的な要素です。これまでの女性誌は、「対男性」「男目線」を意識した内容でしたが、当社が発行している『InRed』『sweet』『spring』といった女性誌は、女性が感じるかわいさを女性同士が認め合って楽しめるような内容の記事を編集しています。その姿勢が女性たちに支持されたことが、好調な売り上げにつながっていると考えます。9月に出稿した企業広告は、こうした当社が考える女性像、女性誌のあり方を、まだ知らない人たちも含め、世の中に訴えていきたいという思いを形にしたものです。
テーマは「進化する女性たち」。「ビューティー」「セクシー」「パワフル」といった形容詞ではもはやくくれない、また、性別にも年齢にも国にもとらわれない、そんな女性が日本に増えています。何より彼女たちは、肩ひじを張ることも気合を入れることもなくそうした変化を手にし、意識せずに自由に生きている。そのような女性像が、「新しい種」というメーンコピーの表現につながりました。
ビジュアルは、漫画家の安野モヨコさんにお願いし、アートディレクターの石井原さんとアイデアを出しながら描いてもらいました。実は安野さんには、10年以上前に雑誌『CUTiE』で連載漫画を描いてもらっていたという縁があります。モデルの写真を使う手法もありましたが、「色」がついてしまうのは避けたかった。安野さんの描く漫画が持つ強さは、コンセプトをより明確にできたと思います。コピーは、96年からずっと担当していただいているコピーライターの前田知巳さんが手がけました。
――反響はいかがでしたか。
これは毎回のことですが、「ポスターにしてほしい」「原寸大のコピーがほしい」という意見がありました。「携帯の待ち受け画面にしてほしい」という声もありましたね。新聞社の掲載後調査によると、女性はどの世代からもおおむね好評でした。男性は、30代と60代は比較的肯定的でしたが、ほかの世代からは反感もあったようです。
――今後について聞かせてください。
女性誌に代表されるように、当社の刊行物は、これまで本を読まないような人にも読んでもらうような仕掛けを行ってきました。結果、他社も含めて、雑誌全体の売り上げが前年同月比で100%を超えるなど、出版業界の活性化に貢献できたと自負しています。今後も、企業として進化を続けながら、新しいテーマや課題に積極的に取り組み、そこから生まれる方向性や企業姿勢、メッセージを世の中に発信していきたいと考えています。
2006年~2008年にかけて掲載された宝島社の企業広告