大塚食品は9月8日から、「ボンカレースマイルプロジェクト」をスタートした。プロジェクトの概要やPR戦略について、同社宣伝・広報部部長の松本渉氏に話を聞いた。
カレーを食べて生まれる笑顔で
ブランドコンセプトの理解を広める
――「ボンカレースマイルプロジェクト」を立ち上げられた背景と、プロジェクトの概要を聞かせてください。
「ボンカレー」は、世界初の市販用レトルト食品として1968年2月12日に誕生しました。41年目の記念として、今年2月に新商品「ボンカレーネオ」を発売。「家族のために手間ひまかけて作る愛情たっぷりの美味(おい)しさ」というボンカレーブランドの原点はそのままに、時代とともに進化し続けるカレー、というコンセプトです。この商品を通じ、ブランドが守り続ける部分と進化して変わってきている部分を、多くの人に理解してもらいたいと考えました。さらに、私たちの一番の願いでもある「愛情たっぷりの手作りの味で生まれる笑顔」を広めながら、ブランドコンセプトの浸透をはかろうと考えたのが「ボンカレースマイルプロジェクト」です。
まず、チーフボンカレーオフィサー(C.B.O.)に、芸能界切ってのカレー好きとして知られるタレントの関根勤さんが就任。9月8日に立ち上げたプロジェクトサイトで発表しました。今後は、一般公募で「プロジェクトスタッフ」100人を募り、さまざまな取り組みを行う予定です。具体的には、東京・大阪で開催する社会貢献活動に参加し、終わった後にみんなでボンカレーを食べる「ニコニコボランティア活動&カレーなるランチ」や、ボンカレーを食べている笑顔を収めた写真を全国から募集し、1ショットにつき10円が寄付される「ボンショットコレクション」などです。スタッフは来年2月に予定する「ボンカレー42nd 誕生祭」にも参加してもらいます。
プロジェクトはウェブを中心に展開します。10月中旬にはプロジェクトスタッフの発表を行う予定で、以降は「ボンショット」の応募や作品の公開、オリジナル待ち受けなどのコンテンツを配信していきます。また、サイトはC.B.O.の執務室をイメージしたデザインになっており、日や時間帯によってさまざまな姿の関根さんが登場する仕掛けになっています。
プロジェクトをスタートした9月8日には、東京・表参道ヒルズでプレスイベントを開催しました。100人を超えるプレス関係者が出席し、テレビの情報番組などでもその様子が取り上げられました。
――新聞広告も出稿されています。
キャンペーンの宣言広告を8月27日に、9月9日にはスタッフ募集を告知する広告を、朝日新聞に掲載しました。話題喚起がねらいです。10月中旬にはスタッフ100人が決まるので、その発表広告もウェブと新聞で展開する予定です。今回のプロジェクトは、応募や発表など、すべてウェブ上で展開していく予定ですが、41年という長きにわたって愛されてきたブランドとして、今回の取り組みを社会的に告知する必要があると考えました。社会性のあるメディアである新聞広告には、その役割を期待しました。
ハードルの高い応募で
「コアなファン」を募る
――「戦略PR」が注目されています。コミュニケーション戦略において、PRをどのようにとらえていますか。
プロジェクトのプラットホームがウェブなので、いかにたくさんの人に集まってもらい、その人たちに意見や情報を拡散してもらえるかが鍵だと考えます。
プロジェクトスタッフは、ボンカレーの知識を問うクイズに答え、ボンカレーを食べている笑顔の写真を送ることが応募の条件です。また、スタッフになればボランティアなど実際の活動に参加していただくこともあり、ただメールアドレスを送ればいいといったキャンペーンよりもハードルは高いと思います。しかし今回は、ボンカレーのコアなファンの方に集まっていただきたかったのです。そして、スタッフの皆さんには、笑顔でボンカレーを食べる写真(ボンショット)を、自ら投稿するだけでなく、周囲にも呼び掛けてもらうことをお願いしています。このように参画型にすることで、ボンカレーを愛してくれる「第三者」からの波及効果があれば、と期待しています。
また、プロジェクトの動向やイベント、広告活動と連動した形で、マスコミにパブリシティーとして取り上げてもらうような仕掛けをしていきたいと考えています。
――PRと広告活動について、今後の課題や展望などがあればお聞かせください。
社会性があり公共性があって、かつ、第三者がおすすめしている商品は、モノがあふれている中で選択するひとつの条件になってきています。ただ単に「私はあなたのことが好きです、買ってください」という広告だけでは、浸透しないし、信頼性を勝ち得ないようになってきている。だからこそ本当にいいものであれば自分で主張するよりも第三者に語ってもらう方が、より浸透すると思われるケースが多いように思います。そうした状況を受け、当社としてもPRと広告をいかに意識的に融合させていくかが課題であり、さらに積極的に取り組んでいきたいと考えています。