エコポイント対象商品が好調 4ページ連続の新聞広告も

 政府は、環境に配慮して省エネ性能が高い冷蔵庫、エアコン、地デジ対応テレビ購入に対してポイントを付与する「エコポイント事業」を、5月15日からスタートさせた。地球温暖化防止や経済の活性化とともに、2011年に完全移行する地上デジタル放送対応のテレビの普及を目的にしたものだ。この事業に応じて、東芝は「ecoスタイル」を統一コンセプトとして対象家電のコミュニケーションを展開している。同社広告部国内広告担当部長代理の関根優一氏に話を聞いた。

「ecoスタイル」の認知も売り上げも
エコポイントが追い風に

東芝 広告部国内広告担当部長代理 関根優一氏 東芝 広告部国内広告担当部長代理 関根優一氏

――「ecoスタイル」の取り組みについてお聞かせください。

 全社的には「地球内企業」というキーワードを用いて、環境問題に積極的に取り組んできました。10年前と比べると、工場などからのCO2排出量が減っているのに対し、家庭からの排出量が増えているという現状をふまえて、CO2削減の家電商品の開発を進めています。その統一コンセプトとして2007年10月に立ち上げたのが「ecoスタイル」です。冷蔵庫やランドリーといった白物家電の分野において「エコ」を切り口に横断的に展開するコミュニケーションです。これまで、ひとつの商品や事業単位では広告展開してきましたが、「ecoスタイル」というひとつのコンセプトのもとで一斉に統一的なコミュニケーションをするのは、当社100年の歴史でも初めてのことです。

 競合他社が早くから統一コンセプトを打ち出しているのに比べ、やや遅れてのスタートとなったのですが、2年目にあたる昨年、大々的にクロスメディアでの広告展開をしたところ、「東芝のエコ=ecoスタイル」という認知はかなり高まりました。朝日新聞でも11月に、「ecoスタイル」の訴求と該当商品紹介を、8ページ連続の全15段カラー広告で展開し、好評を得ました。

――5月15日から「エコポイント」がスタートしました。

 エコポイントの対象商品は、冷蔵庫、エアコン、薄型テレビで、白物家電ではないテレビは、これまで「ecoスタイル」の商品ラインアップには入っていませんでした。しかし政府発表を受け、液晶テレビ「レグザ」も「ecoスタイル」のラインアップに加え、エコポイントの対象となる3商品でのコミュニケーションを展開することにしました。「ecoスタイル」がスタートした2007年から全国の量販店を中心に、6月と年末に「ecoスタイルフェア」というイベントを実施しています。このタイミングでメディアによるコミュニケーションを進めようと、6月13日に全国紙に新聞広告を出稿しました。また、イベントは全国的に催すため、地域ごとの日程に合わせ、地方紙の広告も活用しました。

――キャンペーンの成果は。

 エコポイントは当初、7月あたりからスタートするという見方が強く、5月、6月にどう仕掛けるかが重要と見て、4月ごろから準備を進めていました。しかし、直前の買い控えを回避するため、5月に前倒しして始まりました。結果として、6月中旬からのメディア展開や店頭での大々的なキャンペーンは、抜群のタイミングで進めることができたと、手ごたえを感じています。売り上げを見ても、液晶テレビと冷蔵庫はこれまで以上に好調に推移しています。当社だけでなく、業界全体にエコポイントは確実に「追い風」になっているようです。


一大キャンペーン直前に
新聞広告で大々的にアピール

――新聞広告のクリエーティブのポイントは。

 ターゲットが40代を中心とした女性、主婦層ですので、夏の花の押し花をモチーフに、きれいで季節感があり、さらにエコを感じさせるようなビジュアルにしました。

 広告は、当社のエコに対する考えとともに対象3商品をアピールする紙面と、各商品のエコ面と機能面を解説する紙面の、計4面連続で展開しました。当初は3商品をまとめた紙面だけを検討しましたが、それぞれの商品について、もっともっと語りたいことがたくさんあり、4面の出稿に至りました。そういう意味では、昨年11月の「8面連続の15段広告」の実績と成功があったため、社内のコンセンサスが取りやすかったですね。

6/13 朝刊 34面6/13 朝刊 34面
6/13 朝刊 33面33面
6/13 朝刊 32面32面
6/13 朝刊 31面31面

――反響はいかがでしたか。

 新聞出稿後の朝日新聞の会員サービス「アスパラクラブ」での調査結果では、「4面連続の全面広告で東芝の環境に対する企業姿勢が感じられる」「東芝=エコ、と思うようになった」など、当社の企業姿勢に共感してもらえたようです。また、デザインへの評価も非常に高かったですね。そして、最終目標である「購入検討」についても、「今回の広告を見て、ウェブサイトを見たり店頭に行ってみたりしようと思いました」という意見もあり、強い手ごたえを感じました。

――新聞広告の役割、特性をどうとらえられていますか。

 「エコ」を訴求する場合、ターゲットの中心は、40代、50代の女性になります。その層は新聞の読者層と重なるので、新聞は有効なターゲットメディアととらえています。また、じっくり読んでもらえる媒体なので、商品の仕様やメリットを語れるのも魅力です。

 また、新聞広告は、発売日や出荷日、記念日に合わせられるのがメリットのひとつです。今後期待したいのが、効果測定です。テレビに比べると難しい部分がありますが、大きなキャンペーンをした場合、社内的にもその反響や効果が最も問われます。定量的なものだけでなく、定性的な効果についても測れると、より使い勝手がよくなるのでは、と期待しています。その点、読者の生の声が聞ける「アスパラクラブ」のアンケートは非常に役に立っています。

――今後の課題、展望などについてお聞かせください。

 「ecoスタイル」も間もなく3年目を迎えます。今後どうしていくかはまさに今、色々と考えている最中ですが、エコを配慮することは「当然」という認識が、生活者の中にもある程度浸透していると見ています。そうした状況の中、もう一度「機能」を訴求するところに立ち戻ろうか、と。「ecoスタイル」のコンセプトが「快適しながら、エコできる」なので、エコはきちんと押さえた上で、家電を使うことで得られる生活の快適性を、しっかりと提案していきたいと考えています。

 コミュニケーションについては、新聞やテレビ、ラジオなどのマス媒体のほか、交通広告、ウェブなどで展開しており、今後もクロスメディアでの取り組みは当然と考えています。これから取り組んでいきたいのが、「クチコミ」の活用です。家電をもっとも利用するのは女性です。「ママ友」や「母娘」など、女性はコミュニティーの意見を重視する傾向があると見ており、そこに対して何か仕掛けができないかを検討しています。