がんの情報があふれる中、患者は何を軸に治療法を選択すればよいのか。また、患者の周りの人はどんな知識を持つ必要があるのか。広報IR部の小田育子氏にお話をうかがった。
── 啓発活動の位置づけは。
以前、がん患者さんと交流する機会がありました。そのときに、インターネットをはじめ、がんに関する情報があふれているにもかかわらず、「今の自分に適した治療法が見つからない」と患者さんが話していたことが印象的でした。自分の症状への認識、自ら入手した情報、直接医師から聞いた情報などが上手く整理できずに、どの治療を選択すべきか迷ってしまうことがあるようです。
それ以来、患者さんが最適な治療を納得して受けられるように何かしたいという思いが強くありました。情報に流される前に、それぞれの症状や病歴を一番知っている主治医と積極的にコミュニケーションをとってもらいたい。そのような思いのもと、患者さんへの情報提供を中心とした啓発活動を行っています。
── 昨年、Q&A形式のシリーズ広告を新聞で展開されました。
情報過多により患者さんは多くの言葉にふれる一方、「標準治療」や「セカンド・オピニオン」など、基本的な言葉ほどなかなか人に聞けずに、正しく理解されていないように思います。例えば「標準治療」は平均的な治療と受け取られがちですが、実際はその時点で最も優れた治療の意味です。そこで、「Asahi Oncology News」を昨年11月にシリーズ展開しました。
読者からは「知っておくべき情報がわかりやすい」と好評で、紙面上で小冊子配布を告知したところ、大変多くの応募がありました。患者さんだけではなく、ご家族の方々にも正しい理解を促し、患者さんのサポート体制づくりに貢献できたのではと考えています。
── 新聞の印象は。
雑誌は買いに、インターネットは自分から情報を探さねばなりませんが、新聞は毎日届きます。めくりながら興味がなかったものも目にとまる。がんの情報なども目にとまったら読んでみようと思うかもしれません。テレビCMでは「病院に行きましょう」などの情報量しか発信できませんが、伝えたいことを詳しく伝えられるのは新聞の魅力です。
新聞社には継続して信頼性を維持してもらい、今後も協力しながら啓発活動を行っていきたいと考えています。