2007年と08年の2度にわたり、首都圏において「ながさき旬彩紀行」と題した長崎県産品のイメージアップ広告を実施した長崎県。百貨店の長崎フェアとタイアップした大がかりな企画広告は大反響を呼び、双方に予想以上の相乗効果をもたらした。流通を巻き込んだその斬新な販売戦略について、指揮を執った長崎県物産流通推進本部本部長の橋元和昌氏にうかがった。
百貨店のブランド力を商品のブランド力に
── 百貨店とのタイアップ企画広告の狙いは。
自然に恵まれた長崎県には、北海道に次ぐ水揚げ量を誇る水産物をはじめ、様々な農・畜産品がそろっています。にもかかわらず、全国的な認知度は決して高いとはいえず、各地の地場産品の販売競争が激化する中、販路拡大による長崎県産品の知名度アップが課題となっていました。
販路の拡大といっても、売れればどこでもいいというわけではありません。産地のためには、やはりより高い価格で買っていただきたい。それにはブランド化が必要です。有名なお店で取り扱っていただいて、いいものを求めるお客さまの支持で売れていく。お店で評判になれば長崎県の商品を我々からお願いしなくても売っていただける。そうしたお店を増やすことが販促であり、長崎県産品のブランド化につながると考えました。
誘致したい客層と読者層がぴったり合致
── 広告の経緯は。
私は2年前、百貨店から県庁にまいりました。首都圏における長崎県産品のブランド化を図るには、信頼感の高い百貨店での販路拡大が欠かせません。そのため、百貨店にとってのメリットをどうやってアピールできるか考えました。
県という立場から、県漁連や全農などの生産団体と話がしやすく、農産品から水産品、加工品に至るまで、豊富な県産品の提案ができます。そこで、百貨店の長崎フェアとタイアップした朝日新聞夕刊の企画広告を実施することにしました。
豊富な長崎県産品の集客力に加えて、新聞広告による店舗誘導が図れるわけですから、百貨店にとっては大変価値があると思います。
── 広告の反響は。
こうした取り組みが功を奏し、長崎フェアを開催した首都圏や関西圏の百貨店は、平成18年に4店舗だったのが、19年には13店舗に増え、今年は15店舗になる予定です。百貨店の方には「全国紙に掲載されたことで、お店の集客やイメージアップはもちろん、食品売り場の活性化にもつながった」と喜ばれています。新聞広告が、百貨店の販促の大きな武器になっているようです。
「ながさき旬彩紀行」では、県橋元和昌氏が委嘱している「長崎県ブランド大使」の栗原小巻さん、木の実ナナさん、市川森一さんらに県産品の魅力をうかがうインタビュー記事を掲載。記事下広告に、都内百貨店などで開催する長崎フェアの告知を組み合わせました。「読ませる広告」にしたことで、ブランド大使のファン層と新聞夕刊の読者層、そしてフェアに誘致したい客層とが、ぴったり合致したと思います。
長期の取り組みに最適の新聞広告
── 流通対策における新聞広告の効果とは。
私たちは、この企画広告で県産品の売上効果だけを追求しているのではありません。今回は「食」をテーマにしましたが、これを土台に、次はどう広げていくかという視点でとらえています。例えば次は「買って食べるだけでは長崎の魅力はわからない、一度長崎に来てみんね」といったように。地域の活性化という長いスパンでの取り組みに、じっくり読ませる新聞広告は最適です。
一方、百貨店の方では自分たちのお客さまをたくさん持っており、県産品の良さを一度わかってもらえると、こちらから改めて提案しなくても、お得意さまに長崎県産品をダイレクトメールで売り込んでくれています。新聞の企画広告から始まった長崎フェアから、百貨店のダイレクトメールにつながり、長崎県産品のマーケットはどんどん広がっているのです。これも新聞という媒体が持つ、ひとつの大きな効果ではないでしょうか。
新聞広告で長崎県の意気込みが伝わる
大丸浦和パルコ店 店長 冨田 裕氏
――「長崎フェア」開催の背景は。
2007年10月、大丸浦和パルコ店は「食の専門大店」としてオープンし、その目玉として、約2週間にわたり「長崎フェア」を開催しました。
首都圏の百貨店には、地方の優れた食べ物を消費者に提供する使命があると思います。私は長崎大丸にいたこともあり、長崎が様々な農・畜水産品がそろう食材の宝庫であることを知っていました。何とか首都圏でも県産品を提供できないかと考え、店舗オープンの目玉となる催事で「長崎フェア」の開催を提案し、実施することになりました。
――「長崎フェア」の売り上げや反響はいかがでしたか。
催事に来られたお客さまにはとても喜んでいただき、例えば松浦で養殖したブリは、天然モノよりおいしいといった評価をいただきました。「長崎フェア」も目標の売り上げを達成し、08年4月に第2回の開催が決まるほど社内外で好評でした。県産品の商品力も認識され、催事がないときも食品売り場に常設されるようになりつつあります。
長崎県と大丸、農・畜水産品業者、そしてお客さまのすべてにWin-Winの関係が実現できたと思います。
―― 朝日新聞夕刊の「ながさき旬彩紀行」の評価は。
新聞広告はとてもインパクトがあり、様々な反響がありました。店舗誘導の効果はもちろん、紙面で紹介された五島手延うどんがよく売れたのが印象的です。また、このような催事では食材の迅速な供給体制や新たな人員配置が必要となり、催事を運営する主体の意気込みは非常に重要です。新聞広告を使うことで長崎県の本気度が伝わってきます。社内で提案を通すのはなかなか容易ではありませんでしたが、新聞広告の掲載が店舗誘導への期待と長崎県の意気込みを伝える一助となり、今回の企画の実現につながりました。