大学進学希望者の工学離れが進んでいると言われる中、17の国立大学工学系学部が連携した広告が、朝日新聞1月21日付朝刊に掲載された。この企画を推進した千葉大学大学院工学研究科長・工学部長の野口博教授にお話をうかがった。
マスメディアを通して幅広く情報を発信
子どもたちの工学離れに対しては、各大学が児童・生徒を招いて科学実験の授業をするなど様々な取り組みをしています。しかし、一大学の活動だけでは限界があります。そこで、昨年10月に開いた国立大学52工学系学部長会議で大学が連携して取り組むことを決め、工学離れ対策のワーキンググループを立ち上げました。小中学生や高校生、受験生をはじめ、教員やマスメディア、産業界や行政など、多方面に情報や工学系学部の実態と、その魅力を発信していくという考えです。
新聞広告はその活動の一環で、主に東日本地域の国立17大学が連携して出稿。大学センター試験の数学と理科の解答が紙面に載る日で、工学系学部を目指す学生の目に止まるタイミングをねらいました。朝日新聞では、工学部を卒業して活躍する人のインタビューを通じ、「工学っておもしろい」と興味を持ってもらうような構成にしました。科学面の下と対向面に掲載できたことも、非常に効果的だったと思っています。
── 広告の反響は。
朝日新聞社が行った広告モニター調査の結果を見ると、印象はまずまずよかったようです。特に、大学進学予定者が家族や周囲にいる人や女性の反応が顕著でした。メディアを使ったメッセージの発信は、1回で目的が達成できるものではありません。今後も様々な企画や見せ方を考えていきたいですね。
── メディアの中で新聞の果たす役割、期待する機能などは。
新聞は親しみがあったり、一覧性があったり、持ち運べたりする特性が、非常に「人間的」なメディアだと思います。また、科学に関するトピックスも、ニュース報道はもちろん、解説もされていて、情報を多角的に得られるのは新聞ならではととらえています。とはいえ、ネットがこれだけ普及し、特に学生はインターネットや携帯電話が主な情報収集手段ということを鑑(かんが)みると、紙面とウェブがうまく連動するような企画や仕組みも必要と考えます。
── 今後の展開は。
今回出稿した17大学以外の国公立大学や私立大学の工学部にも呼びかけ、工学系学部全体での連携を目指していきます。また、新聞広告を全国で展開することで、社会の工学部への理解が深まり、大学同士の連携も強くなるのではと期待しています。