ソニー・ミュージックエンタテインメントは、音楽を中心とした学びの祭典「ソニックアカデミーフェス」を開催。その中で親子向けの「おとのしんぶん」講座も開講しました。また、フェスの様子を採録した新聞広告も出稿。その背景や狙いについてエデュケーション事業部チーフ・ゼネラルマネージャーの髙木伸二氏に話を聞きました。
音楽を中心に据えた学びの祭典「ソニックアカデミーフェス」を開催
長きにわたり日本の音楽業界を牽引(けんいん)してきた同社は、これまで培ってきた技術やノウハウを伝えるべく、教育分野へと進出した。その取り組みで、大きな話題を呼んだのが2014年に始まった「ソニックアカデミーフェス」だ。今の音楽制作のノウハウや、制作者の声を直接届けることをコンセプトにした、“学び”のフェスだ。講師として、旬のアーティストや音楽プロデューサーを迎えた講座の数々は、業界や音楽ファンの間に衝撃を与えた。2回目となる2015年は、200組を超えるアーティストに携わった音楽監督の武部聡志氏や、R&Bシンガー・ソングライターの清水翔太氏が講師として登場し、前回を上回る盛況ぶりとなった。開催の経緯について、教育部門を一手に担うエデュケーション事業部の髙木伸二氏はこのように語る。
「ソニックアカデミーフェスのおもしろさは、なんといっても第一線で活躍するアーティストやプロデューサーの話を直接聞くことができる点です。どの講座もこのイベントでしか聞けない内容ばかりで、価値のある時間を提供できている自負があります。なかでも今年の清水翔太さんの講座は大変見ものでした。“音楽が好きなだけではプロとしてやっていけない”と言い切った彼の声に、その場にいる全員が聞き入っていました」
教育事業として、いずれは赤ちゃんから高齢者まで全世代をターゲットに、音楽を学ぶ楽しさを訴求していく予定だが、最初の一歩としてまず狙いを定めたのがキッズ。そこで2015年夏、同社はキッズ専門の総合エンタテインメントサービスを提供する「KIDSTONE」を立ち上げた。KIDSTONEでは、CDやDVD商品をはじめ、ミュージカルレッスンや公演、ワークショップの開催など、「音」を軸にさまざまな形で教育事業を世に送り出している。ソニックアカデミーフェスの中では、親子に向けたKIDSTONE講座も開講。この講座では朝日新聞社メディアラボの協力のもと、参加した親子17組に「おとのしんぶん」をつくってもらった。紙に好きな音楽や楽器について自由に書きだすスタイルをとったところ、好きな音楽についてインタビューをし合う親子や、子どもに歌を歌って聞かせる人も現れ、会場はさまざまなコミュニケーションであふれたという。
「当初はソニーグループ以外の会社と組むことは想定しておらず、正直に言うと迷いました。しかし教育に強い朝日新聞社であれば、ともに取り組むことで新しい可能性が見えるのではという期待もあってゴーサインを出しました。結果的にイベントは大成功で、講座も大変盛り上がりました」
新聞出稿後、サイトアクセス数が6倍に
開催後、ソニックアカデミーフェスで講師を務めた清水翔太さんのスペシャルインタビューとKIDSTONE講座の模様を採録した15段広告を出稿した。すると掲載日にはKIDSTONEのホームページへのアクセス数が前日と比べて約6倍に増え、商品について問い合わせる電話も多数かかってきたという。
「この数字の伸び方には驚かされました。おそらく朝日新聞というブランドと組み合わせることで親世代に信頼感を醸成できたのでしょう。ここのところの情報発信は、新聞や雑誌などの紙媒体にはあまり力を入れていなかったのが現状です。ただ私たちがウェブで発信する情報は、音楽ファンというターゲット層には強いのですが、それ以外となるとどうしても弱い。この“音楽ファン以外の層”をカバーできたのが、今回の取り組みのポイント。新聞広告を活用することで、これまで手の届かなかった層にも私たちのブランドについて伝えることができました。何より15段の新聞広告のインパクトは特別。一般の読者の方だけでなく、業界内に対しても大きなアピールになったと思います」
また髙木氏は、エデュケーション事業部が手がけるKIDSTONE以外の展開でも、新聞広告が最適なPRの場になるだろうと期待をのぞかせる。
「50歳前後で子どもの手が離れた世代は、時間も金銭も余裕ができるため、興味が“学び”に戻ってくると考えています。それも他の誰のためでもない自分のための学び。仕事や子育てに追われて一度は音楽から離れていた人たちが、またバンドを結成したり、楽器を購入したり、ミュージカルに興味を持ち始めたり、あらためて音楽について学ぶ場を探しはじめるのもちょうどこの年代です。エデュケーション事業部としては今後、そういった音楽を通じた自己実現のお手伝いをしたいと思っているのですが、ターゲットを考えると新聞はとても相性のいい媒体。新聞を活用した広告展開には強く可能性を感じています」