2月に新しいモデルを発売したTOTOのタンクレストイレ「ネオレスト」。発売に先立ち、1月31日付の朝日新聞朝刊に全30段の広告が掲載された。「菌の親子」を主人公にしたユーモラスな物語で、TOTO独自の技術を搭載した商品の特長を伝えている。この広告の狙いなどを聞いた。
物語を読み進めるとメッセージが伝わる
「今回のキャンペーンの目的は、フルモデルチェンジしたネオレストの発売告知と商品に搭載している『きれい除菌水』という技術をわかりやすく伝えることでした」。そう話すのは、TOTOの販売統括本部 メディア推進部マスメディア企画グループ グループリーダーの森川光子氏。
「きれい除菌水」は、2012年に開発したTOTOが誇る技術だ。水道水に含まれる塩化物イオンを電気分解して除菌成分(次亜塩素酸)を含む水を作り、目に見えない汚れまで分解・除菌する。だから、便器やノズルを清潔に保つ効果があるのだという。
「日々の生活の中で掃除の回数が減ったと実感できる技術なのですが、すぐに効果が目に見えるものではありません。水道水から除菌効果のある水を作り、時間が経つと水に戻るという環境に優しい性質など、伝えたいことがたくさんあり、簡潔に説明するのがとても難しい性能です」と森川氏。
そこで、今回のキャンペーンでは視点を移し、便器の汚れの原因となる「菌」の立場でネオレストの性能を語らせる。「除菌するトイレ→菌の居場所はない」、つまり「清潔なトイレ」であることをユーモラスな物語に仕立てているのだ。登場人物は、ビッグベンとリトルベンという親子。読み進めると「きれい除菌水」の技術や性能について理解できる構成だ。
特に目を引くのは「ベン親子の悲劇・“いきなり”最終回」というコピー。森川氏は次のように説明する。「掲載前、社内のいろいろな部署のチェックを受けます。そのとき、多くの人から、コピーを見た瞬間に『なぜ新商品なのに“最終回”なのか?』『前の話はどうだったのか、疑問は持たれないか?』と聞かれました。それを聞いて宣伝担当としては実は「やった」と感じました。何か気になる。気にさせる。それこそが読み飛ばされないための仕掛けです。新聞の読者に『なんだろう』って思ってもらえれば、読んでもらえるチャンスが広がるという考えです。社内で思った通りの反応を確認できたので、このクリエーティブなら大丈夫だと自信が持てました。当初は“いきなり”という言葉はなかったのですが、クリエーターに社内での反応を伝えたら加えて下さり、より好奇心をそそるタイトルになったと思います」
こだわったのは、個性的なキャラクターを使いながらも、TOTOの最上位機種であるトイレにふさわしい品格は失わないこと。キャラクターを中央に配しているが、余白をたっぷりとったレイアウトで色味も落ち着いている。
「ビッグベンとリトルベンという大胆なネーミングなので、センスとして受け取ってもらえるかは挑戦でした。面白さだけが目立ちすぎると、本当に伝えるべきことがぼやけてしまうので、そのバランスにも気を配りました」と森川氏。
ゆっくり読める週末に掲載 トイレの進化を知ってもらう機会に
掲載後、同社のお客様相談室には「新聞広告に掲載していた商品の品番を教えてほしい」という問い合わせが増え、新聞広告の読者調査「J-MONITOR」には、「商品をよく理解できた」という回答が多く寄せられた。
省エネ住宅ポイント制度も追い風となり、全国に約100カ所あるショールームの来場者も増えている。「ショールームでは、『リトルベンやビッグベンのトイレ』という話題で会話が弾みやすくなったという報告もあります。キャラクターの面白さと商品説明が両立でき、広告の効果には満足しています」と森川氏は手応えを語る。
新聞広告を掲載したのは、ネオレストが発売される2日前。「発売告知なので、通常は発売当日(月曜日)の朝刊に掲載するのですが、今回は物語を熟読していただきたかったので、あえて2日前の土曜日を選びました。平日よりも、週末の方が新聞をゆっくり読んでもらえると考えました」と説明。メインのターゲットはトイレのリフォームを検討している人だが、「今回は、それ以外の読者にも届くように意識しました。トイレはなかなか壊れるものではないので、これほど進化していることを知っている人はまだ少ないのです。需要を増やすためにも、トイレについて考えるきっかけを与えたいという狙いもありました」。
新聞広告と同じタイミングでテレビCMも放映。ウェブ広告も展開した。「テレビCMのリトルベンはかわいいと評判です。今後は、ラジオCMにも展開していく予定です。最終回という始まりでしたが、『続編は?』という問いに「ビッグベンもリトルベンもネオレストにはいられないという設定なので、今後どういう展開となるのか、私自身が楽しみです」と森川氏はうれしそうにほほえんだ。