9月21日付の朝日新聞『GLOBE』に、中面4ページと1ページを使って「フード・アクション・ニッポン」の広告が掲載された。「フード・アクション・ニッポン」とは、日本の食料自給率の向上と国産農林水産物の消費拡大を推進する、農林水産省による取り組みで2008年度から始まった。より多くの国産農林水産物を食べることによって食料自給率の向上を図り、豊かな食を次世代へ引き継いでいくことを目指している。広告は「フード・アクション・ニッポン」の頭文字から「FAN LETTER(ファンレター)」と題し、食料自給率の現状やフード・アクション・ニッポンの取り組みなどが分かりやすく書かれている。この広告展開の趣旨や狙いについて聞いた。
食料自給率の問題を視覚的に表現
まず目に飛び込んでくるのが、4ページ特集の第1面の「お弁当箱」の写真。「これが、今の日本の『食』の姿です。」というタイトルに合わせて、日本の食料自給率の低さを際立たせた。9つに仕切られた枠の食べ物の多くがさびしいぐらいに少ない。どういう品目がどのくらい自給できていないのか、一目瞭然だ。
「食料自給率の問題は文字や数字だけでは伝わりにくいものです。読者に少しでも身近な問題であると気づいてもらうために、お弁当という切り口で、小麦はパスタ、大豆は煮豆、油脂類はマヨネーズなど原材料を食品に置き換えて表現しました」と話すのは、フード・アクション・ニッポン推進本部事務局の事務局長・田中慶一氏。
2014年9月21日付 朝日新聞GLOBE 広告特集4ページ
中面では、世界と比較した日本の食料自給率の現状をはじめ、なぜ食料自給率を上げる必要があるのか、食料自給率を上げるために消費者ができることなど、Q&A形式で紹介。田中氏自ら「わたしがお答えします」と写真入りで登場し、リアリティーがある。また、昭和40年以降の日本の食料自給率の推移を表した折れ線グラフには、昭和から現在までのお弁当の変化がわかる「イメージ写真」を添えた。「できるだけ視覚的に分かりやすく伝えることを心がけた」という。
掲載時期は、2013年度の食料自給率の発表の翌月。『GLOBE』を選んだ理由については次のように語った。
「和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、食をテーマにしたミラノ万博が2015年に開催されます。このように世界を意識した今の日本の状況を踏まえると、このタイミングで広告を掲載するならば、グローバルな視点での情報発信が多い『GLOBE』が最適だと判断しました」
「世界の人口は増え続け、食料の需要が高まる一方、地球温暖化による農地面積の減少や異常気象による生産量の減少などが進めば、今後、世界の食料問題はますます深刻化する可能性があります。多くの食料を輸入に頼っている私たち日本人にとっても他人ごとではありません。私たちが普段の食生活の中で積極的に国産を選んで食べることが、日本の豊かな食を未来につないでいくことになる。このことを、企業や消費者の皆様に伝え、ともに活動しています」
フード・アクション・ニッポンを軸に広がる6つの事業展開
朝日新聞GLOBE 1ページ広告
フード・アクション・ニッポンの最大のミッションは、この取り組みに賛同する企業や団体に「推進パートナー」になってもらうことだ。登録制で費用はかからない。推進パートナーになると、フード・アクション・ニッポンが主催またはブース出展するイベントなどでの商品サンプリングや、フード・アクション・ニッポンの公式サイトやメルマガでの紹介など、プロモーションのサポートを受けることができる。推進パートナーは現在約8,300社(2014年12月31日現在)。「フード・アクション・ニッポンのロゴマークを貼付した商品を販売したり、フード・アクション・ニッポンと連携して国産フェアを開催してくださるなど、企業や団体などの間に、着実にフード・アクション・ニッポンの取り組みが浸透してきている実感があります」(田中氏)。
一方で、消費者に向けたプロモーションにも力を入れている。現在、メルマガの登録会員は約1万人。「定期的にメルマガを配信するなど、皆様に情報発信しているものの、更に幅広い層にアプローチできる新聞広告は、とても効果の高い広報手段だと思っています。ただし、広告を見た人たちの次の行動につなげるための施策も必要です」と田中氏。
フード・アクション・ニッポンでは、国産農林水産物の消費拡大に資する優れた取り組みについて表彰する「フード・アクション・ニッポン アワード」や、対象商品にポイントを付与し応募された方の中から抽選によって国産食材が当たる「国産応援ポイントプログラム『こくポ』」、また、観光分野と連携し地域食材の消費拡大を推進する「日本の食でおもてなし」、被災地産食品の消費拡大を推進する「食べて応援しよう!」、医療・福祉分野と連携し国産農林水産物の消費拡大を推進する「医福食農連携」に加えて、米粉の消費拡大を推進する「米粉倶楽部」といった、6つの事業を展開している。9月末に開催された世界最大級の旅の祭典「ツーリズムEXPO」では、フード・アクション・ニッポンの取り組みを紹介するブースを出展。国産食材のメニューを楽しむことができる会場内の「ジャパンフードコート」コーナーでは、推進パートナーの生産者の方々とともに、国産食材にこだわった料理をその場で調理し提供。同時に、提供メニューに「こくポ」ポイントを付与することで「こくポ」キャンペーンも併せて実施し、「ジャパンフードコート」を盛り上げた。「各地の素材を生かした料理でおもてなしをすることができた」と田中氏。「それぞれの事業の特性を生かし、推進パートナーとも連携することで、日本の食に新しいイノベーションが起こせる可能性がある」と期待は高まる。