ニュージーランド航空とニュージーランド政府観光局は今年8月~9月にかけて、同国の壮大な自然など、観光の魅力を訴求するシリーズ広告を掲載した。キャンペーンの狙いや、共同で宣伝戦略を展開した背景などを聞いた。
15年にわたり、共同でニュージーランドの魅力を訴求
シリーズ広告は8月29日付~9月28日付にかけて、朝日新聞に7回掲載された。このうち5回は旅行会社と組んだ広告、2回はニュージーランド航空とニュージーランド政府観光局合同の広告だった。
2つの組織が連携した経緯について、ニュージーランド政府観光局日本・韓国地区マーケティング部長の矢島節子氏は次のように話す。
「私たちはこれまで15年ほど、ジョイントベンチャーのような方式で、合同で宣伝活動を行ってきました。8月~9月は、ニュージーランドの観光産業にとって10月~11月のショルダーシーズン、また12~2月(南半球の夏)のピークシーズンへ向けた重要な時期です。そこで、ニュージーランドの魅力を伝え、需要を高めることを狙いました。もともと日本人には人気のある国なのですが、『次の旅行先』として具体的に検討してもらい、旅の予約にまでつなぎたいという施策です」
ニュージーランド航空の広報部長、矢我崎陽子氏も「私たちにとっては、ニュージーランドという国をアピールすることが航空券の販売に直結します。政府観光局と一緒に取り組むことで情報量も増え、より大きなキャンペーンを展開できます」と口をそろえる。
連携する際は、両者の間で明確に役割を分けている。ニュージーランド政府観光局はブランディングを担い、観光客のインサイト(感情)に訴えかけて、ニュージーランド観光に対するモチベーションを高める。一方、ニュージーランド航空はキャンペーンを実施して、購買へつなげる役割を担う。
8月29日付、9月22日付に掲載した広告では、ニュージーランド政府観光局のタグラインを配置し、ニュージーランド航空が航空券の特別価格を提示した。壮大な自然を大きく見せるビジュアルは、新聞のメーン読者であるシニア層にふさわしいものを、双方で話し合って選んだ。矢島氏は、「タグラインの『100% PURE NEW ZEALAND』と『毎日が、別世界。ニュージーランド』は政府観光局が使っているものです。中でも、『毎日が、別世界。ニュージーランド』は、今年7月に定めた新しいブランドコンセプト“Everyday a Different Journey”の日本語バージョンです。ニュージーランドは、国内のアクセスが便利で、『今日は原生の森の中をハイキング、明日は野生のペンギンを見に行く』と、毎日違う景色や経験を楽しめる点が魅力の一つです。その魅力を日本のお客様にもお伝えしたいと考えました」と話す。
矢我崎氏は、「この2回の広告は、当社のウェブサイトへ誘導することが狙いでした。旅行先として、ニュージーランドに対するモチベーションを、『いつか行きたい』から『来月行こう』へと高めるため、近年この時期には特別料金を発表しています」という。
新聞広告でウェブサイトへのアクセス増
「オフライン・トゥ・オンライン」に手応え
9月6日~28日付のうち5回は、半5段の純広告と半5段の旅行会社の広告の構成だ。イメージ写真とニュージーランドツアーのプランを合わせて掲載している。これは両者が旅行会社に働きかけてコラボレーションを実現させた。
矢島氏は「複数の旅行会社のプランを掲載することで、旅行会社の会報誌やダイレクトメールなど、旅行会社独自のチャネルとも連動して幅広く集客できます」と話す。
矢我崎氏は、「左側の純広告で私たちのイメージ広告を載せて、右側に具体的な旅行プランが掲載されていれば、販売につながりやすいのではと提案しました」という。
今回の展開を通じて、ニュージーランド航空のウェブサイトにも通常の4~5倍のアクセスが集まった。電話での問い合わせも相次いだという。
「一般的に、ウェブサイトにアクセスしてもらうのであれば、ネット広告の方が合理的かもしれません。でも、きちんと設計された広告計画なら、新聞からデジタルへもアクセスしてもらえることが今回証明され、手応えを感じています。『オフライン・トゥ・オンライン』の施策で期待以上の成果を上げることができ満足しています」(矢我崎氏)
長年、キャンペーンに新聞を使ってきた理由について矢島氏は、「宅配制度もあって、広く確実にリーチできるところが一番の魅力です。いい広告に巡り合ったら、紙面を切り取って保存してくれる読者も多いですよね。今後は朝日新聞デジタルなど、オンラインメディアとよりパワフルに連携できたらと思います。そうすれば、アクティブな若い世代のお客様も増えるのではと思います。また、リーチのみならず、エンゲージメントを強める取り組みにも挑戦していきたいですね」と力を込めた。