2014年にいすゞ自動車から国内の営業・販売機能を全面移管し、設立されたいすゞ自動車販売。日本全国にある販売会社と連携し、トラックやバスなどの卸売り販売を行っている。その企業活動を紹介する全30段の広告が4月1日付全国版朝刊に掲載された。
「いすゞグループ全体での世界展開」をアピール
ドバイの青空とビル群をバックに一人の男性が立っている。「ISUZU」のロゴが入ったシャツを着ている。右下に目をやると、「橋本美司(32才)2002年、販売会社であるいすゞ自動車中国四国(株)に入社。メカニックを10年、サービスフロントを1年経験。海外業務を希望し、2013年12月からいすゞモーターズミドルイースト(ドバイ)に駐在。」とある。
左上には、「いつもの仕事が、世界一につながっていた。」というキャッチコピー。ボディーコピーを読み進むと、いすゞのトラックと、そのメカニックを担当する橋本さんが、高層ビルや空港など数々の“世界一”がひしめく、中東のドバイで活躍している様子がうかがえる。
この広告の狙いについて、いすゞ自動車販売の営業部企画業務グループ 宣伝・販促担当の工藤緋沙子氏は次のように語る。
「当社はトラックユーザーへの製品訴求やキャンペーン展開など、販促に直結する施策を展開する一方、長い目でいすゞの製品やサービスへの信頼感や、『トラックならいすゞ』というイメージを育むためのブランディングに力を入れています。ブランディングにおいては、メディアの信頼性、社会性といった観点から新聞広告を重視しています。今回もその一環で、いすゞのトラックの世界的な活躍と、活躍を支える人材をテーマにメッセージを発信しました」
同社は世界各国に駐在員を派遣しているが、系列の販売会社からのスタッフ派遣は前例がなく、昨年ドバイに2人派遣したのが初めてのケースだという。橋本さんはその一人だ。
「橋本さんは、現地でメカニックの技術指導などを行っています。いすゞは製品力に加え、メカニックの技術力の高さやサービスの手厚さによってお客様との信頼関係を長く築いています。そこに大きく貢献しているのが全国の販売会社であり、橋本さんのような方々です。『販売会社から世界へ』という動きは始まったばかりで、その新たなトピックを、社外はもとより全国の販売会社にくまなく周知したいと考えました」
2014年4月1日付 朝刊 全30段
ドバイにはコピーライターも同行 現地の臨場感を言葉に込める
背景に写り込んでいるトラックは、同社の看板車種「ELF」。主役は人物に譲っているが、ドバイの景色に溶け込み、この都市を縦横無尽に走り回っているシーンを想像させる。
「全体のビジュアルイメージとしては、成長を続けるドバイのスケール感を意識しました。右手のタワーは、世界一高い超高層ビル『ブルジュ・ハリファ』です。ドバイは海が近く霧が立ちやすい土地柄で、ビル群が全く望めない日もあり、撮影には数日をかけました」
撮影にはコピーライターも同行し、ドバイの交通網や橋本さんの働きぶりを取材した。
「私も現地に赴きましたが、熱意をもって技術指導されている橋本さんの姿に感動しました。勤務地だった広島を離れて遠く海外に赴任し、これまで培ってきた技術やサービスを現地に根づかせようとしている橋本さんはグループの誇りであり、広告の主役にふさわしい方でした」
ドバイの活動を伝える広告は、新聞のみの出稿だ。他メディアとの反応の違いはあったのだろうか。
「普段多いのは、テレビとラジオのCMで、特に朝の時間帯のラジオCMは、トラックドライバーの聴取率が高いため重視しています。新聞広告はブランディングに主眼を置いた時に活用しています。今回の広告に関しては、朝礼の際に『いい広告が出た』と社員に掲げる販売会社のリーダーも多かったと聞いています」
朝日新聞読者のイメージについては、「個人的な印象ですが、メディアの特色をよく理解し、自分で意識的に情報を取捨選択している読者が多い気がします」と工藤氏。
また、今回出稿した4月1日は、大学生を対象とする企業の採用選考の開始日にあたり、学生の注目にも期待していたという。
「グローバル時代において、海外で活躍したいという学生さんは増えています。地方の学生さんが橋本さんの活躍を見て、『こういう仕事もあるのか』と、将来の選択肢に加えてくれたらいいなと思います」
今後のコミュニケーションの課題については、ソーシャルメディアなどネットの活用を挙げる。
「これまでは、トラックユーザーとネットユーザーの親和性は比較的薄いのではないかという考えがありましたが、地方の農家の方がスマホで天気を確認するなど、トラックユーザーがネットに触れる機会がごく日常的になっています。今後はもっと取り組んでいかなければならない課題だと考えています」
最後に、今後の展望を語ってくれた。
「グループ全体のスローガンは、『働く人と、世界を走る。』『いすゞは、今日も世界中の「運ぶ」を支えています。』というもので、今後もこのスローガンに即したクリエーティブを模索し、適切なメディアで適切なメッセージを発信していきたいと思います」