「ゴクン!といえば龍角散」 安全なえん下補助製品の価値を伝えた啓発広告

 江戸中期の創業以来、「のどを守る」ことに特化して様々な医薬品や医療製品を提供してきた龍角散が、「えん下(げ)補助製品」のラインアップを紹介する全面広告を3月25日付朝刊に展開した。「えん下補助製品」とは、口に入れた薬がのどを通過するのを補助する「ゼリー状のオブラート」のことで、同社が1998年に世界で初めて売り出した。

子ども向け商品の発売を機に告知活動を活発化

藤井隆太氏 藤井隆太氏

 商品開発の背景について、代表取締役社長の藤井隆太氏は次のように語る。
  「従来、薬は水や白湯と一緒に服用されてきました。しかし、当社でえん下の実態について科学的に検証したところ、固形物の薬よりも液体の水や白湯が先にのどを通過し、のどに取り残された薬によってのどの筋肉に余計な負担がかかることがわかりました。特に、服用する薬の数が多い方や高齢者は『のどストレス』に注意が必要で、薬を気管内に飲み込んでしまったりする『誤えん』の原因になることもあります。誤えんによる肺炎で亡くなる方さえいます。そのようなことが起きないために、命を救える服薬補助剤を作ろうと決意しました」

 世界で初めて「えん下補助」に着目した同社は試行錯誤の末、のどをスムーズに流れ、かつ薬効を損ねないゼリーの開発に成功した。製品完成後、最初に試用を働きかけたのは介護の現場だ。その結果、「ごはんに薬をまぶして食べる必要がなくなった」「食後に大量の水とともに薬を飲むのがしんどかったが、ゼリーのおかげで楽になった」といった反響が返ってきた。製品の評判は、その後、医療領域へと広がっていく。
  「医療現場で使用が広がる中で、唾液(だえき)を出やすくするためにつけていた酸味が子どもには酸っぱ過ぎるという声が届くようになりました。そこで、子ども向けのえん下補助製品の開発に乗り出し、2001年に『おくすり飲めたね』シリーズの販売を開始しました」

 同シリーズの発売を機に告知活動を活発化したところ、商品はヒット。病気の子供を持つ親たちから感謝の声が続々と寄せられるようになった。飲みやすさと安全性の追求はその後も続き、10件の特許も取得した。
  「医薬品を日常的に服用する人はどの年代にもいます。介護領域、乳幼児領域での成功を弾みに訴求先を広げ、幅広い年代に適応する『らくらく服薬ゼリー』のPRも始めました。製品への評価はますます高まり、厚生労働省にも認められました」

 ちなみに、苦みの強い薬を飲むための「おくすり飲めたね チョコレート味」や、漢方薬専用の「らくらく服用ゼリー 漢方薬用」は服用しにくい味の薬を提供する製薬会社からの提案があるなど、期待も大きかったという。東日本大震災の際は、3万人分の「おくすり飲めたね」シリーズを断水した地域に無料配布。薬の欠かせない人たちを助けた。

2014年2月22日付 夕刊 龍角散

2014年2月22日付 夕刊 龍角散

目的は消費者保護 地道に実績を積んだからこそ意義ある広告

2014年3月25日付 朝刊 全15段 2014年3月25日付 朝刊 全15段

 製品ニーズがますます高まる中で、新たな課題も生まれた。安全性が十分に検証されていない類似品が出回ったり、「ゼリーなら何でもいいのではないか」と、一般の食品ゼリーで薬を飲む人が出てきたのだ。
  「一般の食品だと、医薬品と反応を起こしたり、体内への吸収を阻害してしまうことが少なくありません。一部の食品ゼリーでは過去にのどづまりの事故も発生しています。当社製品がそれらと全く違うことをきちんと訴求しなければならないと考えました」

 そうした意図のもと展開した新聞広告では、「命を救えるゼリーかどうか。」というコピーを掲げた。ビジュアルイメージは、ゼリーに包まれた薬だ。薬は人の体を形作っている。
  「広告の目的は、ずばり消費者保護です。『深刻すぎる』という拒否反応も覚悟した上で、当社製品の存在意義と安全性を強く訴えました」

 広告の掲載からほどなく大阪で開催された総合福祉展「バリアフリー2014」では、来場者の多くが新聞広告を認知していたという。商品の売れ行きも好調だ。
  「当社は年間を通じてテレビの健康番組への提供も行っていますが、テレビCMはアイキャッチに徹し、大事な情報は紙のメディアで伝えるようにしています。特に今回は啓発的な意味合いが強かったので、社会性の強い新聞を重視しました。その他、業界向け専門誌での告知や、『バリアフリー2014』の会場の最寄り駅で交通広告を展開しました」

 2月22日付朝日新聞夕刊では、4ページにわたって商品広告を掲載した。えん下補助製品のラインアップはテレビ面で紹介、長く使っているコピー「ゴホン!といえば龍角散」の新バージョンとして、「ゴクン!といえば龍角散」というコピーを掲げた。藤井社長自ら考えたコピーだ。
「実績のないままこのコピーを掲げていたら、ふざけていると思われたでしょう。16年をかけて実績を積み、学会や医療界でえん下補助製品の価値が確認された今だからこそ、このコピーを打ち出すことに意義があると思いました」

藤井隆太氏 藤井隆太氏

 同社の売り上げは前年比倍増を記録しており、そこには「えん下補助製品」の貢献が大きいという。今後は看板商品の「らくらく服薬ゼリー」の他、「らくらく服用ゼリー 漢方薬用」の訴求にも力を入れていくという。
「高齢化とともに医療費が膨らむ昨今、セルフケアの重要性がますます注目されています。誤えん防止も必要なセルフケアであることを、社会的メッセージとして伝え続けていきたいですね」