2014年3月、女優の米倉涼子さんのりりしい表情が印象的な佐川急便の広告が朝日新聞に掲載された。佐川急便といえば一般消費者にとっては個人向け宅配サービスのイメージが強いが、今回訴求したのは法人向け物流ソリューション。広告の狙いや企業戦略の変化などについて聞いた。
法人向けソリューションを展開中 From B(B to B)事業をメーンに
佐川急便は2014年3月11日付朝日新聞朝刊に、調達物流ソリューションに関する全15段広告を掲載した。その経緯を、広報部広告宣伝課課長の松村哲氏は次のように語る。
「テレビCMとの連動を意識した出稿でした。2014年2月に米倉涼子さんを起用したテレビCM『プロのためのプロがいる。~SAGAWAという手がある~編』を、『緊急納品編』『海外・国内一貫物流編』の2編に分けて放映。それに近いタイミングで新聞広告を掲載しました」
「新聞広告の狙いの一つは、当社が提案する『調達物流ソリューション』における、新しい納品形態について説明し理解を促すこと。調達物流ソリューションとは、当社の営業所を、小売店や通販事業者にとって通過型物流センターとして機能させ、入荷側の業務を効率化するソリューションです。当社の営業所で各事業者の荷物を一次仕分けしたり、入荷検品・ラベル貼りをするため、貨物の滞留を防ぎ、物流センターの運営コストや販売機会ロスなどを大幅に削減できます。物流拠点を海外に移管する企業の方々に対しても、グループ会社を含めた国内外にある当社の物流拠点を活用していただくことで、グローバルなサプライチェーンを最適化して展開することができます」(松村氏)
この物流ソリューションは中小企業から大企業を含めた法人向けで、広告のターゲットも法人やビジネスパーソンだ。こうしたサービスを訴求した背景には、13年度に定めた中期経営計画があるという。
「従来より、企業間物流は私たちの強みとするところでしたが、近年改めてその事業軸に重点を置き、リコールに伴う商品購入者からの返品・修理依頼品の回収・返金業務や、事前のコンサルティングなどいわゆる静脈物流を包括的に担うリコール・トータルサービスや、重要書類をセキュリティーボックスで配送する飛脚セキュリティ便など、法人向けソリューションを開発しています。そのため、広告戦略においても法人向けソリューションにおける当社の強みををメーンに訴求しようと、クリエーティブの方向性を大きく転換しました」(松村氏)
テレビCMでイメージを醸成 新聞広告で理解を促す
今回、新聞広告で訴求したのは、「プロのための、プロがいる。」という強いメッセージと具体的なソリューションの内容だ。
上8段はテレビCMと連動させ、30秒で描いた世界観・スケール感をそのままに、一枚絵に集約して表現した。8段のスペースでテレビCMのインパクトを残しつつ、7段のスペースではターゲットとなるビジネスパーソンの視点に立ち、シンプルに分かりやすく情報が伝わることにこだわった。
同社では純広告と記事体広告を組み合わせて表現するのは初の試みだったという。広報部広告宣伝課 主任の北浦豪文氏は、近年の広告戦略の変化をこう話す。
「これまで新聞広告は純広告が中心でしたが、12年度に初めて記事体広告を利用、その後は目的に応じて純広告と記事体広告を使い分けています。法人向けソリューションに注力する方針を固めてから、具体的な文字情報として詳細に伝えられる記事体広告は、イメージ広告を実際のビジネスにつなげる非常に有効なコミュニケーションツールとなっています。」
同社ではテレビCM、新聞広告に加え、ウェブのディスプレー広告やリスティング広告も展開している。その使い分けについて、
「今回、当社がどのような物流のプロなのかを明確に訴求するため、テレビCMで行っているイメージ訴求の純広告に加え、顧客課題を解決する当社物流ソリューションの具体的事例を記事体広告で展開することで、当社の事業内容の理解促進を企図しました。また、ウェブサイトではこれまでの実績を「事例紹介サイト」として多数公開しているため、リスティング広告やディスプレー広告を通して、物流課題を抱える方々が当社のウェブサイトを訪問するきっかけになればと考えています。」(北浦氏)という。
法人向けソリューションの訴求に、経済紙や専門紙ではなく一般紙を利用する理由は何か。
「朝日新聞は、経済専門紙の読者に近いビジネスパーソンにも読まれていて、さらに読み回しされて、ご家族などにもリーチすることができます。逆にご家族からターゲットであるご主人に伝わる副次的な効果も期待しています。
法人向けソリューションは、個人向けサービスと異なり、一度決めると他社サービスに乗り換える機会が限られます。そのため、商談にたどりつくのも容易ではありません。しかし、今回は掲載初日から商談につながりそうなお問い合わせもいただき、新聞広告はビジネスの成果につながる可能性のあるツールだと改めて確信しました。法人向けソリューションについて知りたいと名指しで問い合わせをいただいたということは、当社が『総合物流企業』だと徐々に認識されるようになってきた証だと手応えを感じています」(松村氏)
今後も、こうした法人向けソリューションの広告コミュニケーションは継続する予定だ。サービスの導入事例として、顧客企業の担当者に登場してもらうアイデアもある。また、反響のよかった新聞広告を自社のウェブサイトのランディングページに掲出することも検討している。