新聞を「初日の出」に透かして浮かび上がる企業メッセージ

 ガスを使った発電と太陽光発電を組み合わせたエネルギースタイル「ダブル発電」を推進する大阪ガスは、2014年1月1日付の紙面で、表裏2ページ全30段を使ったキャンペーン告知を展開した。表面のキャッチコピーは「あけましておめでとうございます。本日から、新しい1年が始まります。」。シンプル極まりないこの一文は、“ある仕掛け”によって新たな命を吹き込まれ、元日を過ごす各家庭の読者に、強く鮮やかな印象を残した。

ダブル発電推進への思いを、太陽に込める

 「1月1日は、各社こぞって新年に向けたメッセージを発信する日。その中で目立つのかな?という不安も杞憂(きゆう)に終わるほど、クリエーティブの力で読者をひきつけられたと思います」
と今回の広告を振り返る大阪ガスのPR担当者。正月別刷り特集に一枚もので折り込まれるセクション折り(大阪本社セット版エリア)の形をとり、表面には世界遺産にも登録された富士山のビジュアルに前述のキャッチコピー。裏面は、大阪・淀川に広がる一面の青空のビジュアルに、キャッチコピーは、< 大阪ガスは、この「太陽光」と「天然ガス」の力で、「  」の、エネルギー問題の解決に貢献します。

 「  」の中は空白で、一見不可解な印象を与えるこの広告を成立させるカギを握るのが、他ならぬ「太陽」だ。

※画像は拡大します。

太陽にすかした紙面 太陽にすかした紙面

 「※裏面を太陽に透かしてご覧ください。」の誘導文に従い、裏面を太陽に透かしてみると

 「  」の部分に、表面のキャッチコピーで使用されている「本日」が反転されて「日本」の文字となって浮かび上がる。わが国のエネルギー問題に、自然エネルギーを有効的に利用したダブル発電で貢献していく、という同社の決意表明となって、紙面に現れてくるというものだ。

 新聞の透ける性質を巧みに利用したこの仕掛けは、朝日新聞社が提案。

 「年の初めにみなさんの気分も改まっている中、ダブル発電とは切っても切り離せない太陽、しかも1月1日の『初日の出』にかざして、当社のメッセージを伝える……。太陽に注目の集まる元日に掲載することで、同日から始まった新しいキャンペーンのスタートにもふさわしい、完璧なギミックの提案をいただきました。しかも『朝日』新聞ですから。私も、もちろん掲載日は新聞を朝日にかざしました(笑)」

2014年1月1日付 朝刊 セクション折り 大阪ガス

2014年1月1日付 朝刊セクション折り 大阪ガス(表面) (表面)
2014年1月1日付 朝刊セクション折り 大阪ガス(裏面) (裏面)

インタラクティブなコミュニケーションを新聞だけで完結

 制作過程では特に「透け具合」の調整には細心の注意を払った。

 「当社としても前例のない仕組みの広告。いざ透けなかったり、太陽にかざす前から透けていたり……では取り返しがつきません。事前の打ち合わせを何度も重ねて、『本日』の文字濃度については何パターンも調整しました。こうした朝日新聞担当者の迅速かつ誠実な対応で、イメージ通りの紙面が完成しました。制作中から、この広告が社内の各部署で話題に上ったほどです」。
掲載後の大きな反響を得られる手応えを、すでに早い段階から感じていたという。

 「こちらからメッセージを一方的に送る従来型の広告ではなく『紙面を太陽に透かして』と、受け手に具体的なリアクションを促し、その結果、ちょっとしたサプライズとともに、ハッピーな気分になってもらえた」
と、送り手と受け手のつながり感を生み出したコミュニケーションを振り返る。また、新聞から動画などへ、スマホやウェブを使って誘導する手法が多く見られる中で、インタラクティブなコミュニケーションを新聞だけで完結・成立できたことに、新聞広告が秘めたさらなる可能性を感じたという。

 「われわれの投げかけるメッセージにしっかり向き合ってもらいたい時に新聞広告は効果的です。編集記事でも日々エネルギー問題が報じられているように、エネルギー企業が発するメッセージと、新聞媒体の親和性は高いと思うからです。ダブル発電推進の際に、当社が広告で用いるメッセージは『ダブル発電家に、さぁ、あなたも!』。この言葉のように、効果的に『受け手を巻き込んでいく』事例の蓄積ができたキャンペーンだったと思います」