著名作家の書き下ろし小説を通じて バファリンブランドの世界観を伝えたシリーズ広告

 「早く効いて胃にやさしい」というキャッチフレーズで知られるバファリンAが、今年発売から50周年を迎えた。この節目を記念し、「3人の作家がつづる『やさしさ文庫』」と題する3回にわたるシリーズ広告を展開した。

小説の力を借りて“ケアリング”の精神を訴求

諸星裕夫氏 諸星裕夫氏

 シリーズに登場した作家は、初回は椎名誠氏、2回目は山崎ナオコーラ氏、3回目は池澤直樹氏。それぞれバファリンのある日常をテーマに小説を書き下ろした。企画の意図について、ヘルス&ホームケア事業本部 薬品事業部 ブランドマネジャーの諸星裕夫氏は語る。
「50周年の節目に、以前からバファリンを愛用してくださっている方、やや疎遠になってしまっている方、あるいは全く服用したことがない方まで、幅広く接点を持ちたいという思いがありました。ただ、店頭キャンペーンなど型通りの企画にはしたくありませんでした。鎮痛薬市場は、各社で品質を競う中でコモディティー化が進み、商品機能の差異が生まれにくくなっています。そうした中では、ブランドが長く大事にしてきた精神を伝えることが何より重要だと考えたのです」

 その精神とは、頭痛に悩む人へのいたわりややさしさ、同社が長くキーワードとして使ってきた“ケアリング”だ。無数にいる作家の中から椎名氏、山崎氏、池澤氏に依頼したのは、「商品ターゲットである30〜50代の男女に支持されている」という理由からだという。さらに各作家の読者層を意識し、椎名氏には「母と娘」、山崎氏には「女友達」、池澤氏には「男性の上司と部下」というテーマを提示した。
「テーマとともにバファリン50年の歩みをお伝えし、あとは自由に書いてくださいとお願いしました。そうそうたる顔ぶれの作家さんたちにご登場いただけたのは、多くの文化人とのネットワークを持つ朝日新聞を活用したからこそ。朝日新聞の強みを最大限に利用させていただきました」

 椎名氏の小説のタイトルは、「やわらかあたま社物語」。アメリカで “やわらかあたま社”という会社に勤めることになった娘を心配してバファリンを送る母親の姿を、その夫の目線でつづった心温まる一作だ。
  山崎氏の小説のタイトルは、「女友だちはなんのために」。30歳過ぎの女性が、同じビルで働く別の会社の女性とあいさつを交わすようになり、歯痛に悩む彼女をいたわり、友情を深めていく物語だ。
  池澤氏の小説のタイトルは、「ノーザン協定」。頭痛に見舞われながら残業に励む部下を、上司がバファリンにまつわるトリビアを交えて気づかい、早く家に帰れと促すユーモラスな展開だ。

 「椎名氏の作品は、椎名ファン、特に50代女性からの反響が大きく、『椎名さんの小説が新聞で読めてうれしかった』という声が寄せられました。山崎氏は、かつてご自身の作品で、歯痛でバファリンを飲んだ、という描写をされているんです。今回は女性同士の友情をみずみずしく描いてくださり、30代の女性から『とても新鮮な気持ちで読めた』という声が寄せられました。池澤氏の作品は、理科系出身の作家さんらしく、バファリンの成分にまで触れた専門的な内容で、私も含めて社内で大受けでした」

 サブコピーは、小説の内容に沿わせつつ、「気遣う」「やさしい」「女性たちのそばに」「がんばって働く人を、ほっとけない」など、ケアリングの精神をしっかりと込めた。ビジュアルは、頭痛や歯痛の悩みがすっと晴れる爽快感を抜けるような青空で表現し、母と娘、女友達、上司と部下、それぞれの関係性を想起させる人物を配した。
「広告を見た方にご自身の姿を投影していただきたかったので、人物はすべて後ろ姿にしました。小説が上がってくるまでは、ブランドの世界観とうまくマッチングするだろうかと心配でしたが、筆力のある作家さんたちのおかげで、予想以上の仕上がりとなりました」

朝刊 全15段 全3回シリーズ

2013年9月14日付 2013年9月14日付
2013年9月21日付 2013年9月21日付
2013年9月28日付 2013年9月28日付

ロングセラー商品らしい「声の出し方」がある

 出稿は、9月14日、21日、28日。すべて土曜日の朝刊だ。
「休日の人も多く、ゆっくりと文字を追っていただけるのではないかと思いました」
  なお、新聞広告に掲載した小説は前編で、後編はバファリンAの特設サイトで読むことができる。出稿後、サイトのページビュー数は急伸した。また、バナー広告からサイトを訪れた人が同企画を知り、新聞紙面を改めて開いて確認する流れもあったという。
「紙面とウェブの行き来があったこと、商品ターゲットの年齢層に確実に響いていることなど、反響の多くは、新聞広告共通調査プラットフォーム『J−MONITOR』の結果から知ることができました。また、朝日新聞の読者の特徴といえるかもしれませんが、自由意見の書き込みの多さと熱心さには驚きました。ネガティブな意見も貴重で、何が購買に影響を及ぼしているのか、とても参考になりました。中には副作用に関する誤解などもあり、今後のコミュニケーション設計に役立てていきたいと考えています」

 諸星氏は、今回の企画が、広告表現における「声の出し方」について意識するきっかけにもなったと語る。
「新製品をアピールしたい時や、短期間で売り上げを伸ばしたい時には、大声で商品を連呼するようなコミュニケーションが効果的で、特に流通が反応してくれます。しかし、バファリンAはすでにブランドの認知度が高いので、大声で叫んだところで、『もう知っています』と、あまり気に留めてもらえません。それよりは、ターゲットをしぼり、読者にゆったりと語りかけるような、 “50歳”らしいシブい声の出し方のほうが人々の心にしみこみやすく、中・長期的な効果につながるではないかと改めて実感しました。朝日新聞読者のインテリジェンスに訴えることができたのではないかと思います」

 鎮痛薬のブランドは、廉価品からスイッチOTC(医療用医薬品を市販で購入できるように転用した薬)まで様々あり、競争は激しくなる一方だ。今後の抱負について、諸星氏はこう締めくくった。
「痛みを我慢して自分らしい時間が持てないのはもったいないこと。バファリンAは、『早く効いて胃にやさしい』という確かな商品力でそれを解決し、50年もの間愛されてきました。さらに100年先まで愛されるブランドとなるために、培ってきた信頼と安心、そしてケアリングの精神を今後もコミュニケーションし続けていきたいと思います」