家庭用ルームエアコンで60年の歴史を誇る三菱電機。日本の住宅事情に合わせたセパレートエアコン「霧ヶ峰」を1967年に生み出して以来、ルームエアコンの人気ブランドとして、「この国の『きもちいい』」を支え続けてきた。同社は今年9月に大規模なキャンペーンを展開。その狙いを聞いた。
特別な日の「9月30日」 巧みな戦略で広告掲載
左寄席三菱電機にとって、「霧ヶ峰」ブランドはいわば「4番バッター」。これまで、萩本欽一さん、小泉今日子さん、西田ひかるさん、プロゴルファーの宮里藍さんなど、その時代で勢いがある、輝きのある人物をイメージキャラクターに起用し、テレビCMでも話題を集めてきた。そして今年の9月30日、新しいキャラクターとして女優の杏さんが登場。同日、朝日新聞朝刊には二連版・全30段の「霧ヶ峰」の商品ブランド広告が掲載された。
「杏さんは昨年の9月から、IHクッキングヒーターや炊飯器などのテレビCMには登場していましたが、満を持して『霧ヶ峰』のキャラクターに。その宣言であり、お披露目の場として新聞広告を選びました」
そう話すのは、三菱電機宣伝部B to Cコミュニケーショングループ グループマネージャーの水沼慶徳氏。掲載日の「9月30日」は、杏さんがヒロインを務めるNHK朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」が始まる日だった。
「ドラマがスタートする最高のタイミングで、『霧ヶ峰』のキャラクターが杏さんになるということをニュースとして伝えたいという思いがありました 」(水沼氏)
杏さんの大きな写真で登場感を演出しながら、歴代の霧ヶ峰の写真で「三菱電機のエアコン60年」の歴史を紹介。そして、人の動きを検知する「ムーブアイ」が、手足の温度まで測定する「ムーブアイ極(きわみ)」に進化したこと、新冷媒「R32」を搭載したことなどで、商品としても全く新しく生まれ変わったということをアピールした。
「『霧ヶ峰』の新キャラクターが杏さんになったことを、社内外に対しても、インパクトを持って認知を広められたととらえています」(水沼氏)
さらに同日付のテレビ面には、同社のキッチン家電商品の表札広告を掲載。欄外の広告スペースにも同社の広告メッセージ。そして同じ面のコラム「試写室」には「ごちそうさん」の解説とともに杏さんの写真が掲載された。同じ紙面に広告と記事で杏さんの二つの笑顔。もちろん、この「連動」を期待しての出稿だった。水沼氏は「このドラマシリーズの初日には番組紹介の記事が掲載されることが多いので、この日の掲載を決めました」と振り返る。「広告を杏さんの記事の近くに掲載」するための出稿は他紙誌でも展開された。
2013年9月30日付 朝刊 全30段>
テレビ面 表札+変形スペース
新聞を起点にソーシャルでも話題が拡散
朝日新聞では10月5日付の週末別刷り「be」でも、杏さんの記事の面に全5段広告を掲載した。
和服姿の杏さんの写真、「あなたのキッチンに、『おいしい』ストーリーを。」というコピーなど、家族や周囲の人たちを「食」で幸せにしていくという、このドラマを想起するようなクリエーティブだった。イラストを用いたストーリー仕立てにして機能を説明するという、ひとひねりある手法を用いた。
「ドラマを思い浮かべる雰囲気を醸しつつ、当社家電製品のコンセプトである『スマートクオリティ』が伝わる表現を探りました」と水沼氏は語る。
この広告展開は消費者の目もしっかりととらえた。
「ソーシャルメディアでは『三菱電機の広告がいい意味であざとい!』という投稿が広がりました。特に朝日新聞のテレビ面の表札広告は、朝の早い時間にすでに話題になっていて、その反応の速さと大きさに驚きました」(水沼氏)
新聞広告を活用した理由を聞いた。
「『霧ヶ峰』のキャラクターが杏さんになる日、そして杏さん主演のドラマが始まる日。この節目の日にインパクトある広告を出すことに意味がある。それができるのは、即日性とニュース性のある新聞広告しかありません。新聞広告の特性を十分に活用できたキャンペーンでした」と水沼氏は手応えを見せる。
「商品そして当社の家電が旗印にする『スマートクオリティ』を、杏さんという一人の人間を通じてしっかりと訴求していきたい。世の中にしっかり響く広告コミュニケーションを通じて「杏さんと言えば三菱電機」という印象を広く浸透させていきながら、同時に家電業界全体の活性化にも寄与していければ」と展望を語った。