先進の技術力で社会を「変える」 巧みな表現でわかりやすく

 「変える。三菱電機」というキャッチコピーを掲げ、8月18日から22日までの5日間、三菱電機の企業広告が朝日新聞朝刊に掲載された。自社の技術を一つずつ紹介する内容だ。このシリーズ広告の狙いについて聞いた。

幅広い事業を紹介 社内にシナジー効果も

橋詰 透氏 橋詰 透氏

 1回目の広告は、東京駅丸の内駅舎がライトアップされて夜の街に浮かび上がる美しいビジュアル。昨年保存復原が完成した歴史的建造物を照らし出す、美しさと省エネを両立する三菱電機のLED照明と照明制御システム「メルセープNET M」を紹介している。これに続く4回は、同社が開発した気象衛星「ひまわり7号」、様々な製造現場で欠かせない産業ロボットに搭載されているロボットシステムといった同社の技術と事業の解説が続いた。

 「B to B事業の取引先だけではなく、広く一般の消費者にも当社がどんな技術力を持っているか、どのような事業領域を手掛けているかを知っていただきたい。それが今回、朝日新聞に出稿した狙いです」
  そう話すのは、三菱電機宣伝部コーポレートコミュニケーショングループ専任の橋詰透氏。同社が手掛ける事業は多岐にわたるため、「新しい技術で、一般消費者にもわかりやすく、かつ親近感や興味を持ってもらえるような題材を厳選しました」

 広告を掲載すると、「世界に誇れる日本の技術力を頼もしく思った」といった感想や、シリーズ広告として毎日チェックしていた読者からは「あと何回続くのか」「楽しみにしている」といった電話やファクスが届くなど、予想を超える反響があったという。

2013年8月18日付 朝刊 全5段 2013年8月18日付 朝刊

 一般的に、B to B事業を展開する企業は、マスメディアを使った広告コミュニケーションをあまり行わない傾向があると言われる。同社もかつてはそうだったという。2004年に経済紙で企業広告シリーズを始めるときも疑問視する向きが少なくなかった。しかし、「『三菱電機』を知らない人とビジネスの話を進めるのは難しい。まずは知ってもらわなければ」という思いから、担当部署が様々な事業部と折衝して、少しずつ理解を得ながら実現にこぎつげた。

  企業広告を掲載してからは期待以上の効果を上げているという。
  「社内の反応が明らかに変わってきました。自分の事業部の技術や取り組みを取引先だけでなく、社会に広く知ってもらうことで、仕事上で良い影響があったのはもちろん、社員のモチベーションが上がったようです」と橋詰氏。さらに、
  「広告がきっかけで、他部門の事業や技術力を知り、事業部を横断して新しいビジネスの検討を始めるなどのシナジー効果も生まれたのです」

信頼性の高い新聞を起点に ネットやSNSとの連携も

 同社にとっては着実に効果を上げている企業広告だが、取り上げる題材の多くが一般的になじみのない技術だけに苦労もある。
「素晴らしい技術が『絵』になるか、ビジュアルでわかりやすくできるか、という点が実際は難しい」と橋詰氏。
  例えば、ネット上の情報セキュリティーである暗号技術は、世界的に評価される最高難度の技術力を誇るが、「絵」にして見せるのは難しい。今回の企業広告で取り上げたロボットシステムも見た目だけでは技術は伝わらないため、ロボットが繊細なシャンパングラスをつかみ、シャンパンタワーを組み立てるというビジュアルでその制御力を表現した。
「いかにわかりやすく、読者の目を引くようなビジュアルに落とし込むかは、これまでもこれからも課題です」と橋詰氏。

  さらに、朝日新聞をはじめとする一般紙への出稿について、こう続けた。
「一般の読者に何をどこまで伝えるのか、どうすれば共感してもらえるかは、模索している状況です。まずは、『三菱電機は先進的な技術力を持っている』という印象を伝えることが重要。それを『変える。三菱電機』という短いコピーに託しています。自社をうまく伝えるには苦労がありますが、一般読者に訴求するコミュニケーションには大きな意味を感じています。

 コミュニケーションメディアとして、新聞広告をどう見ているのか。
「新聞は、媒体としての信頼度が圧倒的に高い。当社のコミュニケーションには欠かせないメディアと捉えています」
  また、今後は「SNSとの連携や、朝日新聞デジタルなどのデジタルメディアと連動させるなどで、広く、興味を持ってくれた読者には深い情報を提供し、コミュニケーションを図っていきたい」と話している。

2013年8月19日付朝刊 2013年8月19日付朝刊
2013年8月19日付朝刊 2013年8月19日付朝刊
2013年8月21日付朝刊 2013年8月21日付朝刊
2013年8月22日付朝刊 2013年8月22日付朝刊
<参考記事>
  B to B企業の広告を紹介する特集記事も合わせてぜひお読みください。
  スペシャルインタビュー【B to Bコミュニケーションの今】