朝日新聞グループのメディアを活用 看護の心と看護職の魅力を効果的に伝える

 医療や生命の現場を支える看護の仕事。少子高齢社会においてその重要性は増すばかりだ。そうした中、看護職の魅力の周知を目指して日本看護協会が展開したクロスメディアキャンペーンが光っている。5月12日の「看護の日・看護週間」の活動のうち、看護にまつわるエピソード作品を表彰する「忘れられない看護エピソード」と中学・高校を訪問して看護の仕事を紹介する「みんなで話そう―看護の出前授業」を軸に、朝日新聞、朝日新聞デジタル、テレビ朝日、BS朝日、CS朝日ニュースター(現テレ朝チャンネル)、そして同協会ホームページを組み合わせた立体的なキャンペーンだ。

訴求ターゲットの中心は 中学・高校生とその親世代

伊藤雄介氏 伊藤雄介氏

 キャンペーンは、「看護の日」の二つの事業を中心に展開している。一つは、全国の中学・高校に現役の看護師・助産師が訪問し、看護職の魅力を講義する「看護の出前授業」。もう一つは、看護にまつわるエピソードを募集し、「看護の日」に優秀作品を表彰する「忘れられない看護エピソード」。両事業を軸としたキャンペーンは2011年にスタートした。

 「出前授業は以前から実施していました。ただ、各都道府県での実施と地元での報道にとどまり、広報活動という視点では全国的な広がりに乏しいのが実際でした。また「忘れられない看護エピソード」の実施以前は、講演会やシンポジウムを開催していましたが、地域や会場の制約から訴求には限界がありました。全国組織である日本看護協会の役割は、より多くの人に看護の心や、看護職の魅力を知っていただくこと。とりわけ将来看護職の担い手になりうる中学・高校生と、その親の世代を訴求ターゲットとしています。そこで、全国紙やテレビを組み合わせ、この二つの事業を大々的に伝えることにしました。従来はメディアを利用した広報といっても、通常の新聞広告を出稿するぐらいでしたので、初めてのチャレンジでした」と語るのは、広報部の伊藤雄介氏。

 キャンペーンの概要はこうだ。BS朝日では、「看護の出前授業」を中心に「看護の日」事業についてまとめた30分の特別番組を放映(2012年9月30日)。これをCS朝日ニュースター(現テレ朝チャンネル)でも再放送(同10月初旬)。この番組の告知CMはテレビ朝日でも放映した。同日の朝日新聞では、番組の告知と同じ出前授業の内容を盛り込んだ全15段広告を掲載した。

 朝日新聞ではさらに、同年11月から翌13年2月まで、「忘れられない看護エピソード」の募集広告を掲載。2月には、テレビ朝日とBS朝日でも募集のためのインフォマーシャル(30秒)を放映した。

 そして、最も重要な5月12日の「看護の日」については、この日を周知するために、テレビ朝日とBS朝日でインフォマーシャル(30秒)を放映。さらに、朝日新聞では、「忘れられない看護エピソード」の最優秀賞などの4作品と表彰式(5月11日)の模様を「看護の日」当日の朝刊全30段で掲載した。続く13~18日には残る優秀賞6作品を日替わりの全2段広告で紹介した。

※画像は拡大します。

2012年9月30日付 朝刊 広告特集「看護の出前授業」 2012年9月30日付 朝刊
「看護の出前授業」特集
BS朝日特別番組「看護の心をみんなの心に ~心がふれあう看護の授業~」(2012年9月30日放送)

BS朝日特別番組
「看護の心をみんなの心に ~心がふれあう看護の授業~」
(2012年9月30日放送)

忘れられない看護エピソード」募集告知CM(2013年2月) 忘れられない看護エピソード」募集告知CM
(2013年2月)
「忘れられない看護エピソード」受賞作品発表広告(2013年5月13~18日掲載) 「忘れられない看護エピソード」受賞作品発表広告
(2013年5月13~18日掲載)
2013年5月12日付 朝刊「看護の日」特集 2013年5月12日付 朝刊「看護の日」特集
= 「看護の日」告知CM(2013年5月)
朝日新聞デジタル 朝日新聞デジタル

 朝日新聞デジタルでは、この優秀作品と表彰式の採録を5月20日から1カ月間掲載。日本看護協会のホームページでは、全優秀作品とともに過去のキャンペーンの内容も紹介した。

 こうして、朝日新聞グループのメディアを総動員した展開で、協会の活動を周知することに成功した。
「テレビと朝日新聞デジタルでの展開は朝日新聞社からの提案でした。過去にも映像による広報活動を行ったことはありますが、新聞やインターネットと連携した今回の方が、大きな反響があったと思います。新聞社の一つの窓口で、各メディアの特性に適合した展開時期や展開内容を示していただいたことや映像の2次利用についてフレキシブルに対応していただいたことにも感謝しています」

文字で伝えきれない心の機微や臨場感を映像で補完

 昨年9月の特別番組では、看護師や助産師による出前授業の様子や「第2回 忘れられない看護エピソード」の表彰式の様子などが紹介された。
「新聞では正確で詳しい情報は伝えられますが、看護に従事する人たちの心の機微や、現場の臨場感まではなかなか伝えきれません。情緒的な部分を映像で補えたことは非常に大きかったです。また、PRを前面に出した演出ではなく、一つのテレビ番組として面白く仕上げていただいたので、協会内の評価も高かったです」

 これまで出前授業の告知は、全国の学校へのダイレクトメールに頼っていたため、学校側から授業の依頼があるのは、発送する年度末に集中していた。ところが昨年は、番組を放送した9月以降も多くの問い合わせがあったという。
「実際に、出前授業を受けて看護職を目指した人もいます。活動をより広める貴重な機会になっていますね」

 「忘れられない看護エピソード」は、看護師などが対象の「看護職部門」と、患者やその家族から募る「一般部門」の2部門を設置。集まった応募作品は、両部門を合わせて3,419件だった。初回の2011年は1,940件、昨年は2,952件だったので、年々着実に増えている。
「朝日新聞社の共催ということもあって、一般部門の応募がグンと伸びました。看護部門は、機関紙や病院でのポスター掲示など応募促進を図るルートがありますが、一般部門は、メディアの力がなければこれほどは集まらないと思います」

 「看護の日」に朝日新聞に掲載した全30段広告は、前述のように「忘れられない看護エピソード」の4作品を紹介し、記事のボリュームが多くなったものの、朝日新聞社の調査では、「しっかり読んだ」というスコアが高いうえ、「感動した」などポジティブな感想が多いことがわかった。

伊藤雄介氏 伊藤雄介氏

 「また、エピソードを送ってくださった方の多くが、『賞への応募が、看護の仕事を見つめ直す機会になった』『入院した際にお世話になった看護師さんを思い出して改めて感謝するきっかけになった』といったコメントを寄せてくださいました。そういうことまで想定していませんでしたが、副次的な効果として喜んでいます」

 広告紙面には掲載前日に行われた表彰式の写真も掲載した。
「新聞社側の特別な対応で、撮ったばかりの写真を翌日紙面に掲載できました。また、この紙面には「看護の日」の取り組みに協賛してくださっているテルモ、東洋羽毛工業、パラマウントベッドホールディングスの広告を掲載しました。紙面でエピソード集の冊子の無料配布のご案内をしたところ、希望者がとても多く、在庫があとわずかという状況です。この反響にも驚いています」
  今後も「看護の日」を中心とした訴求活動を継続していくという伊藤氏。
「継続と同時に、常に新鮮なアプローチをしていかなければならないと思っています。効果的にメディアを活用しながら、看護の心を伝え続けていきたいですね」