鮮やかなブルーのパッケージと「エメマン」の愛称で知られ、缶コーヒーで一番飲まれているブランド「ジョージア エメラルドマウンテンブレンド」。同製品の商品開発およびマーケティングを企画・展開する日本コカ・コーラは、早くからウェブサイトやメールマガジンといったソーシャルメディアを介したコミュニケーションを展開し、デジタルリテラシーの高い若いファン層を獲得してきた。その新たな試みとして、昨年12月26日から30日にかけて朝日新聞との共同企画を実施した。
ソーシャルと朝日新聞との連動を「やらかす」面白さ
ジョージア エメラルドマウンテンブレンドは、「エメラルドマウンテン」豆が持つすっきりとした後味が特徴で、缶コーヒーの「定番ブランド」として幅広く愛されている。
「コーヒーは気持ちを高ぶらせるカフェインを含み、何かを始める時の気合入れとして飲まれることが多い飲料です。ブランディングにおいても高揚感や、『エメマン』のターゲット層である20代から30代の若々しさを大事にしてきました」と語るのは、マーケティング&ニュービジネス・コーヒーカテゴリー・ジョージアグループシニアマネジャーの島村朋希氏。
昨年10月末からは、「さて、やらかしますか。」というキャッチコピーを掲げ、「一歩前に踏み出す勇気」を呼び起こす様々な企画を展開。「太陽と競争してみよう」といった型破りな挑戦から、「ハロウィーンで主役になろう」といった気楽にできる消費者参加型の挑戦まで、専用サイトで紹介している。そして、昨年の暮れ、「朝日新聞で、和田ラヂヲと共演、やらかしますか。」との文字がサイトに踊った。
和田ラヂヲ氏が描く4コマ漫画のうち1コマだけセリフが空白になっており、これを埋めるセリフをツイッター上で募集。リツイートの多かった投稿の中から1点を選出し、翌日の朝日新聞スポーツ面で掲載するという仕掛けだ。キャンペーンの開始に先がけて、同社のキャンペーンポータルサイト「コカ・コーラ パーク」に登録している会員に向けてメルマガで一斉に告知。朝日新聞デジタルでも告知を行った。
「お堅いイメージのある新聞メディア、しかも朝日新聞と一緒に『やらかす』ことが、意外な驚きやキャンペーンのスケール感につながるのではないかと考えました。そもそも4コマ漫画と新聞は相性がいいですし、スポーツ面の読者は商品ターゲットと重なります。4コマ漫画のフチ取りを『エメマン』のイメージカラーにし、商品写真を入れるなど、ブランドらしさも確実に印象づけました」
マーケティング&ニュービジネスIMC・コネクションプランニング&メディア統括部長の渡仲容子氏は次のように語る。
「商品が持つ『王道感』を伝えるため、ソーシャルメディアとマスメディアとの連携を模索していました。ソーシャル上にネタを投げっぱなしにするのではなく、盛り上がりをすくいあげ、新たな盛り上がりを作る。その舞台として新聞を活用しました」
企画の斬新さとともに、和田ラヂヲ氏の起用も光った。シュールな作風で知られる漫画家だが、「ブランドの世界観をきちんと理解してくださり、多彩なストーリーを提供してくださいました。模範解答も作ってくださったんです。どれも大爆笑でした」と島村氏。
続々と届いた投稿コメント。ポイントはスピード感と『つながってる感』
投稿募集は、初回のみ12月21日15時から紙面発表前日の25日14時までと長めの期間を設けたが、2回目からは紙面発表の前々日14時から前日14時までとした。
「ツイッターに上るネタはすぐに飽きられてしまうものなので、結果発表までのスピード感と“つながってる感”が大事だと思っていました。投稿コメントは随時専用サイトにアップし、その状況をリアルタイムで観察していましたが、続々と寄せられてくる様子に驚きました。当初は、ターゲット層が仕事から帰宅して落ち着く夜10時頃から投稿が増えると予想していたのですが、仕事中と思われる昼間の時間帯も活気づいていました(笑)」(島村氏)
回ごとに比較しても、年末休暇に入る前の27日や28日の投稿数が多く、職場からのアクセスが盛んだったことが推測できる。今後の顧客とのつながり方の参考になったと両氏は語る。
「キャンペーンに先がけて、ソーシャルメディアに書いたコメントがマスメディアで取り上げられることを楽しみにしている人が多いという調査結果を耳にしていたんです。投稿の様子を見て、本当にそうなんだなと実感しました。和田ラヂヲ先生にも多くの反響が届いたそうです」(渡仲氏)
一方で、リツイートの多かった投稿から1点を選出するルールについては、反省点もあったという。
「4コマ漫画の1コマを切り取った言葉なので、前後の流れがわからないと面白さが理解しにくく、それもあってリツイートの数は予想したほど伸びませんでした。企画の趣旨によりけりですが、リツイートよりも投稿数を増やす工夫に注力したほうが、いろいろな意味で効果が高まる気がしました」(島村氏)
キャンペーンは紙面掲載で終わりにせず、専用サイトでも紙面に載った4コマ漫画を紹介し、和田ラヂヲ氏の評価コメントをつけた。
「1対マスではなく、1対1のコミュニケーションだと感じられる工夫が大事だと思っています。『コカ・コーラ パーク』でも、いただいたコメントにこちらが反応すると、すごく喜んでいただけるんです。キャンペーン参加者とのキャッチボールを常に意識しています」(渡仲氏)
一連のキャンペーンの締めくくりとして、様々な職種の人たちが、「前向きにトライしてみたい抱負」を掲げた全15段広告を大みそかに展開した。テレビでおなじみの芸人や、和田ラヂヲ氏の漫画もさりげなくまぎれている。
「『さて、やらかしますか。』ということを『自分ごと化』して2013年をいきいきと過ごしていただきたい、という思いを込めました」(島村氏)
特設サイト
新聞広告とソーシャルメディアとの連動について、改めて感想を聞いた。
「正直、トラディショナルなメディアである新聞とソーシャルメディアがうまくつながるイメージを持っていませんでした。課題を見つけたことも含めて手応えがありましたし、朝日新聞デジタルとの連動についても考える機会になりました。朝日新聞デジタルがソーシャルの盛り上がりにうまく絡んでいけば、そこで『ニュースを求める人たち』にリアルタイムでアプローチできる可能性が生まれるので魅力的です。朝日新聞に今後期待したい取り組みですね」(渡仲氏) 「投稿するために頭に汗をかいて下さる方がたくさんいたというのは大きな収穫でした。ソーシャルの世界で完結した企画だったら、ブランドへの関心や理解はこれほどまでに深まらなかったと思います」(島村氏)
コーヒー市場は、街にカフェが増え、コンビニもいれ立てコーヒーを100円程度で販売するなど、競争が激化している。そうした中で、ファン層をいかにつなぎ、新しいファン層をいかに増やしていくのか。
「コーヒーを飲むシーンが増えているということは、市場が広がっているということ。そうした中で、やってはいけないのは、背広を着たサラリーマンが缶コーヒーを飲んで、さあ頑張るぞ、というようなお決まりのイメージを引きずることだと考えています。そもそもステレオタイプなサラリーマン像が消えつつありますし、コーヒーを飲むシーンはオフィスにとどまらず多様化しています。缶以外の容器もそろえるなど、シーンにフィットした商品を提案していくことで、さらにファンを増やしていきたいですね」(島村氏)
「コミュニケーションにおいては、やはりソーシャルメディアの効果的な活用が目下の課題です。今回のような面白い施策にはどんどん挑戦していきたいと思っています」(渡仲氏)
2012年12月 朝刊 小型 日本コカ・コーラ 全5回シリーズ広告