手術用照明器「無影灯」のグッドデザイン賞受賞を機に、一般紙に初出稿

 シップヘルスケアホールディングス(大阪府吹田市)は、「医療機関のあらゆる要望に応える」ことを目指して、仕事の幅と奥行きを同時に広げながら急成長してきた企業だ。2011年秋、グループ会社山田医療照明の手術用照明器・無影灯「SKYLUX CRYSTAL」がグッドデザイン金賞を受賞という好機をとらえ、初めて一般紙への広告を展開した。

グループ41社、正社員3千人規模の企業として

 黒をバックに明るく輝くシルバーグレーの手術室用照明装置のビジュアルがシャープな印象を与えるカラーの全面広告(2011年11月10日付全国版朝刊)。ヘッドコピーは端的に1行、「2011年度グッドデザイン金賞受賞。」。その下に寄り添うサブコピーは「医療の優しさは、美しさでもありました。」。今回の広告を、シップヘルスケアホールディングス取締役で経営企画室長の横山裕司(ひろし)氏は、グループとして初めて一般の人々に向けて発信したコミュニケーションと位置づけている。

横山裕司氏 横山裕司氏

 「当社は2012年で創業20周年を迎えるまだまだ若い企業です。病院を中心に、医療・保健・介護に特化した仕事を展開する中で、お陰様で2011年末にはグループ会社が41社、正社員だけでも3千人を超える企業に成長することができました。これだけの規模のグループに成長させていただいたことに感謝するとともに、我々のパートナーである病院様に、患者さんとして来られる可能性のある一般の方々にも当社のことを少しでも知っていただきたい、また、上場企業としては株主の皆様に、より一層ご理解を深めていただきたいという思いもありました」

 タイムリーにも、グループ会社の山田医療照明が製造する手術室のライト(無影灯)が2011年度のグッドデザイン金賞を受賞するという、うれしい知らせが飛び込んできた。このニュース性の高い話題を得た好機をとらえ、グループ内の他の医療設備機器メーカー2社の紹介と併せて新聞広告で広く社会にアピールすることにした。同時に取り上げた2社は、手術室の内装や医療ガスの配管設備施工を手がけるセントラルユニと、リハビリ機器や特殊浴槽の製造メーカーである酒井医療だ。

 広告のボディーコピーでは、この無影灯が他の多くのLEDが苦手とする色の再現性に優れていることに言及。病変した血液の色か、正常な血液の色かを的確に見分けることが求められる手術室現場の要求に応えている。また、無影灯の右のアームにそっと羽を休めるアゲハチョウのビジュアルで「軽く動き、ピタリと止まる操作性の優しさと、金賞を受賞したフォルムと技術の美しさ」を視覚的に訴えた。さらに、東京・本郷にある医療従事者や設計会社・建築会社向けのシップヘルスケアグループのショールーム「マッシュアップスタジオ」への来場促進も狙った。
「掲載直後に地方の医師から直接問い合わせをいただき、具体的に導入を考えてみたいという連絡が入ったほか、業界でも話題になり、医療機器だけでなく医薬品の営業現場でも『見ましたよ』という声を多数聞いているようです」

今後はグループ理念と事業内容の発信へ

2011年11月10日付 朝刊 2011年11月10日付 朝刊

 今回、一般紙への出稿は初となったが、朝日新聞を選んだ理由について横山氏はこう話す。「B to Bの企業間コミュニケーションではなく、広く社会に、グループ全体の機能と個別の機能をアピールしようとなった時、読者に医療関係者や医療従事者も多く、ピンクリボン運動など医療に貢献する活動にも早くから取り組んでいた新聞であることが決め手になりました。設立当初の当社は、富士フイルムの医療用レントゲンフィルムの販売を主力事業としており、ピンクリボン運動にも関心を持っていました。私も神戸でのウオークに朝日新聞の人と一緒に参加したこともあるんですよ」と横山氏。

 グループの中から、最新の医療設備メーカー3社を取り上げた今回の新聞広告。次なる展開では、同社のスローガン「生命を守る人の環境づくり」を踏まえ、高齢社会を支える人たちへの訴求を検討している。「例えば、介護に従事する人たちの負担を少なくするために、グループ会社のリハビリの機器、特殊浴槽などを案内していきたい。これらの良さは、見れば伝わるものですから。その後、医療材料のサプライ、調剤薬局グループの展開、介護付有料老人ホームなど、順次、一般の方々を含めてご理解いただく場を設けていきたいと考えています」

 病院の建て替え企画・医療機器販売・医療薬品販売等、コンサルティングを含む病院への総合サポートや、調剤薬局・介護付有料老人ホームなどの運営までを幅広く手がけ、他の一般的なグループのように傘下の社名に統一感を持たず、M&Aでグループを拡大してきた同社にとって、グループ理念「S.H.I.P.」(※)の共有は命綱であり、その理念に基づく各社の事業内容を社会に浸透させることも今後の大きな課題と位置づけている。その課題を解決する一つの場と方法として、横山氏は新聞広告に可能性を感じ、期待を寄せている。

 (※)「S.H.I.P.」とは 「Sincere(誠実な心)、Humanity(「情」の心)、Innovation(革新者の気概)、Partner SHIP(パートナーシップ精神)」という四つの英単語の頭文字であると同時に、新しいビジネスの創出という荒海に、みんなで一つの船に乗ってこぎ出していこうという気概を込めたもの。古川國久代表取締役社長をはじめ創業メンバーたちが、会社設立にあたってぶれない軸を作ろうと、各自の理想を持ち寄って定めたという。