これからも変わらぬパルコであり続ける決意を新聞広告で表明

 1969年の池袋パルコ誕生以来、単にモノを売るだけでなく、心豊かな生活を提案する情報発信基地として、独自の文化を生み出す取り組みをしてきたパルコ。そんな同社が、5月の9日と25日の朝刊紙面に企業広告を掲載した。

被災した仙台パルコ発のメッセージで世の中に元気を

井上肇氏 井上肇氏

 営業再開を果たした仙台パルコの前で、手をつなぎ笑顔を見せる人々。ショップのスタッフ、シェフ、設備、警備、案内係……、いずれも実際に仙台パルコで働いている人たちだ。地震で崩れ落ちた外壁を直しているところなのか、左下から右上へ、紙面を切り裂くようにクレーン車のアームが走る。その上に力強く重ねられた「LOVE HUMAN.」のコピー。つなぎ合った手と手のぬくもりが伝わってくるかのようだ。

 「『LOVE HUMAN.』は、若い才能を発掘・応援するというパルコの企業姿勢を表したコーポレートメッセージ。昨年から引き続き使っているキャッチフレーズですが、大震災を経たことで、その意味合いは、さらに大きな広がりを持ったものになりました。人と人のつながりが、困難に向かうときの大きな力になる。世の中が若い人の力を必要としている今、改めて、未来を切り開く若い力を応援していきたい、そんな思いを託しました」と、同社のストアプロモーション部担当・執行役の井上肇氏は、今回の新聞広告のねらいを説明する。

 キャンペーンモデルには、「女性から支持される女性の発掘」をテーマにパルコ各店のスタッフが審査員として参加した「第35回ホリプロスカウトキャラバン『スターオーディション2010』」でグランプリ受賞の新人・安田聖愛(せいあ)さんを起用。5月9日掲載の第1弾では、全15段の紙面全体を使って、メークや衣装で作り込まない聖愛さんの素の表情をとらえた。

 「原石のような謎の少女の登場に、『あの子はだれ?』『なぜか気になる』『心引かれる』という声が上がっています。これこそが、まだ知られていない新しい才能にいち早くスポットライトを当て、世の中に「なんだろう?」を呼び起こしてきたパルコのDNA、パルコらしさ」と、井上氏は力を込める。

 続く第二弾が冒頭で紹介した、震災翌月の仙台パルコをビジュアルにした紙面だ。テナントスタッフの協力があってこそ可能となったこの紙面に、パルコのもうひとつのDNAが表現されている、と井上氏は言う。「私たちが提供しているのは、パルコという『場』であって、主役はそこに集うお客様とテナントです。テナントはともにビジネスをしていく仲間であり、パルコのビジネスはテナントに支えられている。逆に、パルコはお客様に喜んでいただける店づくりや仕掛けについて常に考え、企画し、テナントが仕事をしやすいよう支援する。これまでもそうだったし、これからもそうしていく。そんなもうひとつのパルコらしさを伝えたいと思いました」

 掲載後は、「仙台パルコのみんなが元気にやっているのを見て、自分たちも元気がわいてきた」というほかのパルコのテナントスタッフの声や、「パルコの気持ちが伝わってきた」「これからのパルコに期待している」という取引先の声など、うれしい反響が数多く寄せられたという。

2011年5月9日付 朝刊 パルコ 2011年5月9日付 朝刊
2011年5月25日付 朝刊 パルコ 2011年5月25日付 朝刊

「君」たちが力を発揮する「場」であり続けたい

 昨年はテレビCMをメーンに据えて展開した「LOVE HUMAN.」キャンペーンだが、今期は一転して新聞広告に注力した。その理由は明快だ。

 「今回は、ビジュアルインパクトで話題を集めようとするのではなく、パルコの思いがつまったボディーコピーをじっくり読んでもらいたいと考えました。さらに、震災があったけれども、パルコは元気にやっていますよ、これからも今まで通りにやっていきますよ、ということを、お客様のみならず、株主、取引先とその従業員、社員、社員の家族、地域の方々など、パルコをとりまく人々に伝える必要があった。幅広い読者にじっくりメッセージを届けられる信頼性の高い媒体ということで新聞を選びました」

 創業以来、「パルコ文化」とでもいうべき独自の文化を生み出してきたパルコ。「LOVE HUMAN.新しい時代を、君とつくる。」というコピーに込めた、「新しい時代を切り開くのは『君』であり、パルコは『君』たちが力を発揮する場でありたい」とのメッセージは、「君と共にこれからも歩み続ける」同社の決意表明でもあるのだろう。

 「私たちの思いは届いた、伝わった、という手応えはあります。今後は、パルコをご利用いただいているお客様に対して、具体的に『LOVE HUMAN.』なことを提案し、メッセージを腑(ふ)に落としていくことが大切になっていくでしょう。これまでと同じように、テナントと手を携え、お客様に喜んでいただける活動をしていく、それが『LOVE HUMAN.』な企業姿勢ということになるのではないでしょうか」