2012年5月の金環日食にむけて「日食グラス」を訴求

 2012年5月21日朝、東京、大阪、名古屋といった大都市を含む太平洋側の広い範囲で、リング状に太陽が輝く「金環日食」が観察できる。金環日食が見られない地域でも、大きく欠けた部分日食を全国各地で見ることができる。日本では25年ぶり、次に観測できるのは2030年で、しかも北海道限定ということから、見逃せない天体ショーなのだ。

 太陽の手前に月が重なって、太陽が欠けて見える「日食」。太陽全体が月に隠れてしまう「皆既日食」に対し、月の見かけの大きさが小さいために太陽が完全に隠れず、リング状に輝くのが「金環日食」だ。2009年に鹿児島県の島々で見られた皆既日食は、観測ツアーが組まれるなど、社会的ブームとなったので記憶に新しいところだろう。

1年後の天体ショーに向けたキックオフ 観測情報、注意点などを盛り込む

都築泰久氏 都築泰久氏

 この金環日食まであと1年と1日に迫った今年5月20日。朝日新聞朝刊を、天体望遠鏡、顕微鏡、フィールドスコープなどを扱う総合光学機器メーカー、ビクセンの広告が飾った。太陽観測衛星「ひので」が搭載するX線望遠鏡で撮影された神秘的な金環日食の写真がまず目を引くクリエーティブだ。

 「金環日食にまつわる様々な情報を、天文業界や天文ファン以外の、一般の方々に伝えたいという強い思いがありました」と、ビクセン 企画部部長の都築泰久氏は広告のねらいについて語る。また、「来春の金環日食が近づくにつれて、09年の皆既日食のときのような盛り上がりが予想されますが、メディアで大きな話題になるのは大抵直前になってから。メーカーとしては、直前に需要が高まってもすぐには製造を増やすことができない。日食グラスという専用メガネがあることを早い時期から知っておいてもらいたかった」と、この時期の出稿について説明した。

 広告には、日食グラスのメーカーとして伝えなければならない重要な情報も盛り込まれていた。「安全に日食を見るために知っておくべきこと」だ。

 「太陽の光は人間の目に有害で、肉眼はもちろん、下敷きやCD、サングラスなどで太陽を見てしまうと、紫外線や赤外線で目を傷め、最悪の場合は失明の恐れもあるため、専用の太陽観察用メガネを使用するなど、細心の注意が必要になるのです」(都築氏)紙面では日食を安全に見るための正しい情報を解説。併せて眼科専門医のアドバイスのもと、遮光性能、形状ともに目の安全を守る、同社の日食グラスの性能について紹介した。

各界のクリエーターが手掛けるオリジナル日食グラスをプレゼント

2011年5月20日付 朝刊 2011年5月20日付 朝刊

 ビクセンの日食グラスは、表面に自由にデザインできるので、企業のノベルティーや販促用グッズとして活用できるのも売りだ。今回の広告ではここをアピールするため、朝日新聞の会員制サービス「アスパラクラブ」を通じ、朝日新聞オリジナル日食グラスのプレゼントキャンペーンを実施した。デザインは、アーティストの日比野克彦さん、コミュニケーションディレクターでアートディレクターの森本千絵さん、タレントで歌手の篠原ともえさん、人気コミック『宇宙兄弟』の漫画家、小山宙哉さんと、各界で活躍する4人が手がけたオリジナルだ。

 応募は全部で23,705件に上った。広告掲載の翌日にはツイッターなどで「来年の明日、 金環日食があるらしい」「知らなかった!」と続々と話題に上り、「広告として注目してもらえたのはもちろん、情報もしっかりと届いた、と手ごたえを感じています」と都築氏は確信を見せる。また、オリジナル日食グラスを制作したい、という企業からの問い合わせも増えたという。

 様々なメディアがある中、新聞を活用したねらいを聞いた。「金環日食という天体現象は『ニュース』ですから、信頼感があり、かつ説得力のある媒体である新聞がもっともふさわしいと考えました」と都築氏。「今回の広告には、日本の各都市で何時何分ごろに日食が見られるか、という情報も載せています。紙の新聞は保存できるので、手もとに残してもらえば、観察のときにも使っていただけるのでは、と期待しました」

 今回の出稿は、来年に向けたまさにキックオフ。ビクセンではこれから1年間、天文業界や学術団体などとともに情報発信に取り組み、四半世紀ぶりの一大天体ショー盛り上げていく考えだ。

 最後に都築氏は今後の目標をこう語った。「金環日食は一日だけの出来事です。しかし、そのあとも宇宙や天体への興味をたくさんの人に持ち続けてもらえたら。空、星、そして宇宙の、映像では決して伝わらない、自分の目で見るからこその感動体験を提供していきたいですね」