たまプラーザ駅と一体化したオープンモール「たまプラーザ テラス」、永田町の高層複合ビル「東急キャピトルタワー」、二子玉川東地区の再開発で誕生した街「二子玉川ライズ」、渋谷駅直結の複合施設「渋谷ヒカリエ」。この4つのプロジェクトに取り組んでいる東急グループが、「街づくり」という視点から東急ブランドを総合的にアピールするシリーズ広告を掲載した。
新しい生活拠点・ビジネス拠点への期待感の醸成をはかる
半世紀以上にわたり、多摩田園都市を中心に街づくりを進めてきた東急グループ。ここ数年は「4大拠点開発事業」として、前述のプロジェクトに大規模な設備投資を行っている。「たまプラーザ テラス」「東急キャピトルタワー」は2010年10月開業、「二子玉川ライズ」は2011年3月、「渋谷ヒカリエ」は2012年春に誕生予定だ。
「東急グループは、より便利で快適な生活の実現のため、街を訪れる人、街で暮らす人の視点で、“街を育む”というスタンスを何より大事にしています。そして、この4つのプロジェクトは持続的成長の基盤と位置づけているものです。開業のタイミングをとらえて情報を発信することで、新しい生活拠点、ビジネス拠点への期待感の醸成を図るとともに、街づくりに取り組む企業グループとしてのブランド価値向上を目指しました」と語るのは、社長室広報部ブランドマネジメント課課長の竹内智子氏。
街の個性はさまざまだ。たまプラーザは若い家族に人気のベッドタウン。二子玉川は住宅地でありながら商業も栄え、生活のゆとりを楽しむ主婦層がよく行き交う。永田町エリアを行き交うのは、圧倒的にビジネスパーソンだ。渋谷はあらゆる情報の発信地で、トレンドに敏感な若者が多い。したがって4つのプロジェクトのコンセプトや訴求先はそれぞれ異なり、プロジェクトごとにPR活動を行っている。しかし今回は、同ブランドマネジメント課が関係部署と協議しながら、統合的なキャンペーン展開を検討した。活用メディアは、交通広告、ウェブサイト、新聞広告の3つを連動させることにした。
「例えば『たまプラーザ テラス』の訴求は女性誌の活用も有効だと思います。しかし、個々のプロジェクト広告ではなく、4つの街づくりが進捗していることをインパクトのある方法で発信したかったので、読者層の幅が広い新聞広告を出稿したいと考えました。当初は各プロジェクトを関係者へのインタビューやリポートで紹介する案などもありました。『東急線沿線が“選ばれる沿線”であり続ける』というビジョン実現のためには、街の印象に共感してもらい、『訪れたい』『住んでみたい』と関心を持っていただけることをねらった企画がいいのではないかということになりました」
著名作家・文化人が企画のために書き下ろし
朝日新聞社広告局の企画制作による今回の広告特集は、4つのストーリーから成るシリーズ。各界で活躍する著名人が、街や暮らしのなかで大切に感じているものやこだわりについてつづるエッセーを連載した。第1回は作家のあさのあつこ氏が「家族の絆」(=たまプラーザ)、第2回は映画字幕翻訳者の戸田奈津子氏が「外国人から見た日本の良さ」(=永田町)、第3回は作家の平野啓一郎氏が「街と文化の関係」(=渋谷)、第4回は音楽プロデューサーの松任谷正隆氏が「川のある風景」(=二子玉川)をテーマとしている。
文章の内容については作家の持ち味を尊重し、具体的なリクエストはしなかった。代わりに伝えたいメッセージについて社内でディスカッションを重ね、街のイメージやプロジェクトのキーワードをそれぞれ10点前後挙げ、執筆のヒントにしてもらったという。
「第一線で活躍する著名な方々にお引き受けいただき、大変うれしく思っています。また、みなさんがキーワードを大事にしてくださり、それぞれ魅力的なストーリーを書いてくださいました。当社の『お客様センター』に感想文を寄せていただいた方もいらっしゃり、このシリーズに関してはお客さまにしっかり届いたものがあるという実感があります。社内では、電車にまつわる思い出をつづってくださった松任谷さんのエッセーに共感する社員も多くいました」
エッセー下には4つのプロジェクトを紹介する全5段広告を掲載。プロジェクトごとに、4人のイラストレーターが「街に集まる多くの人」を描き、さりげなく調和させたグラフィックになっている。
広告特集「街から生まれた4つのストーリー」
ウェブサイトでは、過去、現在、未来へと街の変化を写真で見ることができる。さらに、話題性を高めるために、ツイッター上で「街への想(おも)い」をつぶやいた人を対象とするプレゼント企画も行っている。人々の反応が目に見えて分かるこうした取り組みも社内で好評だ。
「クリエーティブに凝ったウェブが評判で、閲覧時間が比較的長いという調査結果も出ていますし、プレゼント目当てでないつぶやきが意外と多く、興味・関心が広がったのだと感じます。新聞広告、交通広告、ウェブ、ソーシャルメディアが響き合い、いい相乗効果が生まれました。部署を横断した取り組みに大きな手ごたえを感じています」
今後は「渋谷ヒカリエ」と、渋谷の街の盛り上げにつながるプロモーションに注力していく。「東急グループの拠点である渋谷は、『渋谷ヒカリエ』の誕生を皮切りに駅周辺の再開発が進みます。将来を見据えて街と『東急』のブランド価値を高めるコミュニケーションを続けていきます」