アジア・国内の富裕層に向け、文字や映像の力で高級物件を訴求

 三井不動産レジデンシャルは、国内の販路開拓とアジアの富裕層への訴求を目的に、新たな試みとして、
1)朝日新聞本紙に折り込んで配布するエリア広告特集
2)朝日ニュースター
3)医療総合専門誌『メディカル朝日』
4)ヘラルド朝日(インターナショナル・ヘラルドトリビューンと朝日新聞が提携して発行する英字新聞)
5)アサヒ・コムなど、
朝日グループの持つ媒体を多角的に活用したコミュニケーション活動を展開した。エリア広告特集の英語版や、番組の英語・中国語字幕付きDVDは、アジア4地域で、同社の営業ツールとして活用されている。

まずは東京に住む価値をイメージしてもらう 

斎藤裕氏 斎藤裕氏

 三井不動産レジデンシャルが分譲する物件は、都心の再開発エリアで展開する高品質な中高層マンションが中心。高価格帯物件を販売する同社にとって、今日の日本経済の回復ペースの遅れは、戦略の練り直しを迫るものだ。一方で、中国、香港、シンガポールといった急速な経済躍進を遂げているアジアの富裕層からの引き合いが昨年あたりから増えている。同社開発事業本部都市開発二部営業室長の斎藤裕氏は、「アジア市場への有効なアプローチを模索していたところ、今回の企画を展開することとなった」と話す。

 「アジアのお客様には、現地を見ていただくのが一番ですが、その前にまず、東京に住むことや当社が提供する住空間での生活をイメージし、興味を持っていただくことが必要でした。その解決策の一つがテレビ番組の活用です。それも、当社のプロモーション映像ではなく、お客様に信頼していただける、第三者の視点によるコンテンツであることがポイントだと考えました」

 そこで、城南・城西エリア6物件の外観や室内、眺望、周辺環境などを紹介する番組を、朝日ニュースター(CS放送)で放送。番組コンテンツに英語と中国語の字幕を付けたDVDと、東京に暮らす価値や該当物件が立地する街の魅力を紹介するタブロイド(エリア広告特集と同体裁の英語版)も制作した。 これら2つのツールは、同社が北京、上海、香港、マレーシアの各エリアで契約を結ぶ仲介業者者が営業に活用。アジアでも日本有数のニュースメディアとして知られる朝日新聞の信用力を生かした。

英語版タブロイド(全16ページ)三井不動産レジデンシャル 英語版タブロイド
(全16ページ)
朝日ニュースターの番組「THE BEST」/三井不動産レジデンシャル 朝日ニュースターの番組「THE BEST」

 「アジアのお客様には、東京のことや当社のことを、詳しくご存じでない方もいらっしゃいます。そこでタブロイドでは、都市機能や当社の事業理念などを詳しく紹介しました。結果として、国内のお客様にも三井不動産レジデンシャルという企業やその住まいの魅力を新しい角度からお伝えできる内容になったと思います。また、都心で働く外国人エグゼクティブ層にも同タブロイドを配布。一方、エリア広告特集は、物件周辺地域で、朝日新聞本紙に折り込んで配布しました」

再開発エリアの資産としての将来性をアピール

2010年10月15日付 エリア広告特集(タブロイド判全16ページ)フロント面 2010年10月15日付 エリア広告特集
(タブロイド判全16ページ)フロント面

 全16ページにわたるエリア広告特集では、表紙の全面写真をはじめ、随所に東京の空撮写真が使われている。これらは朝日新聞社のヘリコプターから撮影されたものだ。各物件は見開き構成で紹介され、右面に街の魅力、左面に物件の概要が紹介されている。ゆったりとしたレイアウトや、プレミアムな質感を伝える室内写真の大きなあつかいなど、従来の不動産広告とは異なるデザインが特徴だ。

 「日本の不動産に対し、アジアの方々は資産としての成長性をシビアにご覧になっています。今回掲載した6物件は、東京に住む醍醐味(だいごみ)が味わえる山の手地区に、大規模再開発によって生まれたマンションです。当社にとってこれらの物件は、単なる“ハード”ではありません。公園や商業施設、文化施設、あるいは福祉や治安など、ソフト面も含めた総合的な住環境として考え、価値を永続的に高めていく努力をしていきます。そのような三井不動産レジデンシャルの理念を、国内外の方たちに伝えることが大きなコンセプトでした」

2010年10月15日付 エリア広告特集(タブロイド版全16ページ)三井不動産レジデンシャル

2-3面

2010年10月15日付 エリア広告特集(タブロイド版全16ページ)三井不動産レジデンシャル

4-5面

 斎藤氏によれば、東京が大都市であるために「大都市だから人が密集しているのでは」「先進国だから治安が悪いのでは」と誤解している人も、アジア各国では少なくないそうだ。そこに自分がいるかのような映像や、読み物としての楽しさを持つ豊富な文字情報は、「誤解を払拭するひとつの手助けになったのでは」と、斎藤氏は語る。

 そのほか国内では、『メディカル朝日』読者へのタブロイド配布、ヘラルド朝日での全面広告、アサヒ・コムでの物件情報掲載など、クロスメディア展開を図った。今回の物件の中心顧客層は、城南・城西地区居住者、医者・弁護士といった資格保有者、外資系企業等の外国人エグゼクティブなどだ。「いかに効率的にターゲットに情報を届けるか。朝日新聞の幅広いメディアの中から、戦略を立てました」

 不動産業界に限らず、今日の日本の経済環境はけっして楽観できないが、「そういった時代だからこそ、今回のような前例のないャンペーンをやってみることができます」と斎藤氏はいう。資金はあっても、物件情報だけでは動かない富裕層の心をとらえることとは何か。従来的な広告手法だけには頼れない今日、チャレンジが必要だ。

 「きれいで美しい街、安心して住める街、そしてこれからも成長を続ける街。それが東京だと私たちは思っています。そのことを国内外のお客様に伝えると同時に、品質と実績に裏打ちされた三井ブランドの安心感を知っていただいたい。そのためにできることは、これからも積極的に取り組んでいきます」