キンキンに冷えた白ワインや、グラスに注がれる赤ワイン、雄大なブドウ畑の写真を背景にしたワインボトル・・・・・・シズル感あふれるワインの全5段広告が、朝日新聞北海道支社版朝刊に毎月掲載されている。同広告をシリーズ展開しているのは、北海道を地盤とするコンビニエンスストアチェーンのセイコーマート。多品種を扱うコンビニであるにもかかわらず、ワインに特化して広告展開するのはなぜだろうか?
ワインは、企業のアイデンティティー
「それは、当社が酒の卸を出身母体とする企業で、ワインはいわば、我々のアイデンティティーとも言えるからです」と話すのは、セイコーマート 商品統轄本部 マーケティング企画部 部長の佐々木威知氏。「セイコーマート1号店が誕生したのは1971年。当社は、取引先である酒販店の集まりの中から生まれたという歴史があります」 “ワインのセイコーマート”として、道内の同店各店舗では、豊富な種類のワインを大きなスペースを使って配置している。広告展開を始めた理由について、同社 商品統轄本部 マーケティング企画部 広告企画課 課長代理の吉口緑氏はこう話す。
「ワインの広告を始めたのは、2008年の秋からです。そのころ、世の中の『赤ワインブーム』が去り、ワインの消費が減っていたので、当社としては改めてきっちりと訴求し、そのよさを知っていただきたい、という思いがありました」
まずはテレビCMを開始した。また、同社が力を入れて販売し始めた「100円惣菜」と合わせ、他紙で「100円惣菜とワイン」という内容の新聞広告シリーズも掲載したという。「しかし、100円惣菜は和風のものが多いためにワインにつながりにくかったのです。ワインが持つ魅力や世界観を十分に伝えきることができませんでした」
そこで始めたのが、朝日新聞でのシリーズ広告だ。夏にぴったりな白ワイン、11月のボージョレヌーボー解禁、クリスマスのスパークリングワイン、春に合うフレッシュでフルーティーなワインなど季節を感じさせる内容で、質の高いビジュアルイメージに、『その1杯を愉しむまで』と題した、ちょっとしたワインの知識が得られるコラムを添えている。「こういった内容の広告は、朝日新聞に合致していると思いました」と吉口氏。
広告の効果は、確実に表れているという。道内ワインマーケットにおけるシェアは、2008年に12.0%だったのが2010年には20.6%に上昇(同社調べ)。「通常、ワインの消費は夏に落ちるのですが、特に今年に関しては大きく伸びたことが印象的ですね」(吉口氏)
広告ビジュアルは質の高いものに仕上げているが、掲載しているワインのフルボトルの価格は400円から500円が中心で、高額のものでも1,000円程度。「よい商品を手頃な価格で提供していることが伝わればと思います」と、吉口氏。
「日本では、『ワインは特別なときに飲むもの』というイメージを持っている方が、まだ大勢いらっしゃいます。しかし私たちは、ワインを『普段から飲むお酒』として定着させていきたいのです。お客様に、もっと気軽にワインを買いに足を運んで下されば」と、佐々木氏も語る。「北海道は、わりと気候がヨーロッパに近いからか、現状でも北海道のワインの消費量は、他の地域に比べても多いのが特徴です。それをもっと増やすのが、私たちの目標。おおげさな言い方かもしれませんが、ワインを飲むことを『北海道の文化』として定着させていければと思います。そのためにはじっくりと訴求していく必要がありますね」
地元の暮らしに密着したユニークなコンビニ 豊富なPB展開、生鮮食品や店内調理も
セイコーマートのユニークさは、豊富なワインの展開だけに限らない。PB(プライベートブランド)の商品数は約1千点にものぼり、扱い商品数全体の半分近くを占めているのも特徴的だ。
「PBの中でも代表的な商品は、当社のグループ会社が北海道豊富町で生産している1リットルパックの牛乳です。家庭で必ずといっていいほど飲まれている牛乳は、なくなればまたすぐに買いに行くもの。牛乳をおいしいと認知していただき、来店の動機の一つにしてもらうべく取り組んでいます。それに、日常的な食品でお客様の信頼を得られれば、他商品の購入にもつながると思います」(佐々木氏)
セイコーマートでは、PBの牛乳パックを店頭で回収、リサイクルし、トイレットペーパーやボックスティッシュへと加工している。PBの牛乳1リットルの空きパックを20枚を持って来店すると、特製のボックスティッシュをプレゼントするという顧客向けのサービスを実施。こうした活動は支持を集め、回収率は66%にものぼるという。商品の品ぞろえにも特徴があり、生鮮食品や店内調理にも力を入れているのも、ほかのコンビニにはあまり見かけない点だ。
「地元のお客さまのニーズに一つひとつ応えようとしてきた結果、こうした今のセイコーマートの形があるのです」と佐々木氏。 地元の人々の生活に欠かせない店を運営する、また「ワインを飲む」という文化の定着を図る同社の活動から、今後も目が離せない。