エスティ ローダーは同社の主力商品のサンプルを添付したカラー4ページのエリア広告特集を5月13日、9月2日の2回にわたり発行。新聞の販売所単位で細かく地域を選択しての配布と、朝日新聞社のフリーメディア『ジェイヌード』制作による、クオリティーの高いクリエーティブで、店舗への集客を成功させた。
細やかなターゲティングと紙面クオリティーの高さ
従来、エスティ ローダーの広告は、雑誌等の印刷媒体をメーンに、純広とタイアップの2本柱で展開。同時に商品サンプルをターゲットユーザーに配布し、販促につなげるマーケティング手法を積極的にとってきた。一方、エリア広告特集は、朝日新聞の販売所単位で配布エリアを選択できる別刷り広告特集。エスティ ローダー事業部マーケティング本部 ディレクターの松野潤子氏は、「配布エリアを絞り込めることと、サンプルをダイレクトに届けられることに大きな魅力を感じました」と語る。
「エスティ ローダーの主力商品の中でもファンデーションの『ダブル ウェア』はアイコン的商品で、サンプルをトライアルしたお客様の戻りが高いという実績がありました。試していただければある程度継続して使っていだたけるという予測があり、これまで到達できていなかったお客様層に商品を知ってもらえるキャンペーンを模索する中、ご提案いただいたエリア広告特集は、私たちの課題に合致したメディアでした。しかも弊社の顧客調査で、最も購読率が高い新聞は朝日新聞だというデータがあり、お客様に届く確信をもっていました」
エリア広告特集の活用は同社にとって初めての試みであり、「新聞社とのタイアップ自体の経験も少なく、不安もあった」と松野氏は振り返るが、「これまでの広告のあり方の固定観念を破る必要を感じていた」ともいう。
「広告により具体的な効果が求められるようになってきている中で、エスティ ローダーは本当に効果があるもの、手応えのあるものを念頭にメディアプランニングを行っています。『効果がある』というのは、私たちが全国の百貨店に出店している約130店舗にお客様が来てくださるという流れができ、それに伴ってセールスが伸びるということ。私たちはそのことを指標に取り組んでいますし、そのひとつのチャレンジがエリア広告特集でした」
制作された第1回の紙面について、松野氏が「予想を超えていた」というのは、クリエーティブのクオリティーの高さだ。「『ジェイヌード』編集部や広告局との話し合いを経て、モデルの見せ方、全体ビジュアルの制作まで非常にクオリティーの高い仕事をしてくださり、満足のいくものに仕上がりました。一番喜んだのは弊社のアメリカ人の社長で、本国のクリエーティブを数多く見てきた彼の目からも高い評価を得ています」
また、世代や世帯年収などでエリアを細かく分けて選択して届けられることも、「新聞の既成概念を超えるものでした」と振り返る。特に同社が出店する百貨店は鉄道の主要駅周辺に集中しており、その沿線エリアということでも配布先を絞り込めた点を評価する。「これが本当のターゲットセグメントではないかと思いました」
反響に関しても予想以上のものが得られた。1回目の紙面は神奈川・東京エリアの29店舗への集客を目的とし、配布エリアの最寄りの店名をそれぞれ記載。それ以外の店舗の全国平均と同時期の売り上げを比較すると、配布エリアでは全国平均よりも30%アップした。また、新規顧客も全国平均よりも20%多く獲得することができたという。「これはこの業界では本当に難しいことです。まさにアプローチしたい方たちにアプローチができ、実際に店舗誘引ができた結果だと評価しています」
2010年5月13日 エリア広告
新規客をつかみにくい郊外店で売り上げが向上
9月2日の2回目の出稿は、1回目の成功によって実現したものだ。1回目の反響の特徴として、たまプラーザや立川といった郊外店の売り上げが伸びたことがあった。固定客の多い郊外店ではマスのキャンペーンに対して目に見えて売り上げが上がるということはまれだという。「そういったピンポイントでの働きかけに効いた結果を踏まえて、2回目では千葉・埼玉と東京の東エリアをターゲットに展開することにしました」
2回目の紙面のサンプルには「ダブル ウェア」(ステイ イン プレス メークアップ)と、同様にベストセラー商品である美容液「アドバンス ナイト リペア」の2つのサンプルを添付。一度に2つのサンプルを添付したのは、朝日新聞のエリア広告特集では初めてのことだ。「エスティ ローダーと朝日新聞のコラボレーション企画」と冠するにふさわしい紙面になり、販促だけでなく強力なブランディングができたと思っています」
2010年9月2日 エリア広告
「ただしエリア広告特集は配布エリアをきめ細かく取捨選択できるだけに、配布エリアのマッピングを見誤ってしまうと期待した効果が得られません。1回目が成功したのは、属性をデータ的に見るだけでなく、世田谷・横浜など各エリアの世帯のライフスタイルや志向の微妙な違いを、街ごとに私たちが把握できていたからだと思います。今後このシリーズを大阪、名古屋など全国各エリアへと展開させていくとするなら、対象エリアに対するリアルな肌感覚をどうやって研ぎ澄ませていくかが重要になると思っています」
2回にわたりエリア広告特集を活用してみて、松野氏は「究極のマスメディアといわれる新聞が、実は雑誌以上にきめ細かくセグメントし、ターゲティングできるメディアとしても活用できるいうことが分かりました。宅配というシステムの可能性を改めて感じたというのが正直なところです」と語った。また、百貨店の販売現場のスタッフからは「広告のモデルのメークが素敵だったので、どんなアイテムを使っているか、詳しく知りたいとお客様から言われた」という声も上がってきているという。「ビジュアルの美しさ」というのも紙面の出来がよかったからこその声であり、また、「製品の機能や特徴もしっかり伝えられるちょうどよいスペースだった」と、タブロイド判4ページというボリュームが、雑誌とも新聞本紙の広告とも異なるアピール力を持っていたことを指摘した。
「お客様からの反響が、紙面を掲載したその日1日だけではなく、1週間、10日と比較的長く続いたことも、効果的だった点だと思います。新聞の束から取り出して、取っておきたいと思っていただける、バリューを感じさせるメディアだったということでしょう」