消費者が燃費を重視してクルマを選ぶようになった今日、交換用タイヤの燃費性能にも、公的な等級制度の導入がスタートしている。東洋ゴム工業は、燃費に大きく影響する「転がり抵抗性能」で最高グレードを示すAAAの達成を日本で初めて発表したタイヤ「SUPER ECO WALKER」を7月1日に発売。翌日、朝日新聞の記事体広告企画「わかるわかる運動」のフォーマットを巧みに活用した新聞広告を掲載した。
身近なニュースとして伝えた「エコとタイヤ」の関係
タイヤの燃費性能については、2009年12月に日本自動車タイヤ協会が、グレーディングシステム(等級制度)に基づく表示を2010年1月から開始することを発表した(対象は交換用として販売されている乗用車用夏用タイヤ)。等級付けは、タイヤのエネルギーロスに関係する転がり抵抗性能(5段階)と、このロスを低減しても、ぬれた路面でのグリップ力が確保されているかを示す、ウエットグリップ性能(4段階)から行われ、消費者が一目で、かつ各製品を横並びで燃費性能を比較できる工夫がなされている。
「トーヨータイヤ」のブランド名でタイヤ事業を展開する東洋ゴム工業が、日本初の「転がり抵抗性能最高グレード:AAA」となる新商品「SUPER ECO WALKER」発売を発表したのは、4月16日のことだ。同社タイヤ営業本部タイヤマーケティング部消費財マーケティンググループ 課長代理の瀧俊幸氏は、「『SUPER ECO WALKER』の発表で業界内が再び活性化され、大きな話題を呼びました」と振り返る。「市場認知に向け、当社の技術力を広く社会に伝える広告活動が必要だと考えました」と、同氏は新聞広告を出稿した経緯を明かす。
通常、乗用車用タイヤの広告は自動車雑誌を中心に出稿。タイヤ性能が乗り心地や運動性能、燃費性能に関係していることをある程度認識しているコアユーザーに情報を発信している。しかし今回の「SUPER ECO WALKER」のキャンペーンでは、業界で統一された評価基準の誕生というニュース性を高める「社会的なインパクト」と、同社の技術力に裏打ちされた「企業PR的な効果」が期待された。「多くのお客様はエコカーには関心があっても、タイヤを交換すれば今乗っているクルマの燃費をもっと手軽に改善できることに気づいていません。そんな方々に、高い信頼性をもって情報を伝えられるメディアとして朝日新聞を選びました」(瀧氏)
記事として読み、納得が得られる「わかるわかる運動」
同社にとっては異例の全15段新聞広告ということで、クリエーティブはさまざまな方向性が検討され、最終的には朝日新聞のロングシリーズ企画として定着している「わかるわかる運動」の体裁を活用することとなった。「わかるわかる運動」は、製品やサービスの背景にある新しい技術や発想、誕生の背景などをやさしく説明する、記事体広告のよさを生かしたシリーズだ。「ぱっと見のインパクトも大事ですが、内容を詳しく伝えることが今回は重要でした。また、読者の方になじみのあるシリーズを使うことで、『自分はクルマに詳しくないから』『タイヤは当分交換する予定がない』といった方にも読み飛ばさずに注目してもらえるのではと期待しました」(瀧氏)
紙面はトーヨータイヤのコーポレートカラーであるブルーを背景にあしらい、タイヤそのものを大きくレイアウトしたシンプルかつ大胆なビジュアルで構成。商品名の先に、「日本初の転がり抵抗性能」「AAA」といったキーワードを示して読者の関心をひき、本文はなるべく簡潔な説明を心がけた。「お客様の視点に立てば、商品の話をする前に、まずはタイヤと燃費との関係やグレーディングの話を伝えたほうが親切なのではと思いました」と瀧氏は語る。タイヤの商品特長の説明となると構造図を入れるのが定番だそうだが、この紙面では難しそうな印象を与えることはなるべく控えている。
発売から日が浅い現時点でも、同社にはこれまでになかった方面からも反響が届き、「社内では驚いています」と瀧氏。同社があまり新聞広告を出していないことを知るタイヤ販売店などの関係者から「今回は力が入っていますね」と声をかけられたり、普段付き合いのない雑誌の記事で商品が紹介されていたり、突然テレビ局からタイヤ全般に関する質問を受けたりするなど、「新聞の影響の大きさと、新聞の文字はちゃんと読まれているんだということを改めて感じています」と瀧氏はいう。
「SUPER ECO WALKER」は同社の技術が結集された、低燃費タイヤのトップモデルだ。「次のステップは新聞広告で社会に伝えたトーヨータイヤの高い技術力というイメージを、スタンダードモデルの『ECO WALKER』へと広げていくことになると思います」と瀧氏は語る。「時間はかかると思いますが、節約志向や環境志向の高まりは、タイヤに対する人々の意識を高めると期待しています。従来のブランドイメージにとらわれることなく、性能勝負でタイヤを選ぶ消費者が増えることは私たちにとって大きなチャンス。クルマ離れが叫ばれている今だからこそ、新しい切り口でタイヤの重要性を伝える広告活動を今後も模索したいと思います」(瀧氏)