デフレ時代の象徴とされる100円ショップ業界において、快走を続けているセリア。「Color the days(日常を彩る。)」というブランドプロミスを掲げ、ブランディングの強化を図っている。2万点を超える多彩な商品をアピールする広告戦略として手がけたのは、名古屋本社版夕刊1面の突き出しシリーズ広告。2009年10月から2010年3月にわたって130回、アイテムを日替わりで紹介するという手法で展開した。
大切にしたのは、想像力を刺激するストーリー性
「新聞は、1日たりとも同じ紙面はありません。それは時代のニーズをとらえて新商品を次々と提供していく、当社の企業姿勢と重なるものといえます」と語るのは、常務取締役経営企画室長の河合映治氏。セリアが取り組んだシリーズ広告は、継続的に目に触れることで、読者の心理にボディーブローのようにじわじわと響いていくものとなっている。
「新聞の紙面構成は毎日ほぼ変わらないため、定位置で日めくりカレンダーのように異なる情報を発信することで注目度が高まります。しかも小さいスペースながら目に留まりやすい1面での展開ですから、読者の潜在意識に訴求できると考えました」
目指したのは、商品を使う自分の姿をイメージできるような、想像力をかきたてる広告。新聞でのシリーズ広告は同社としても初めての試みながら、「社会人がほっと一息つく頃の夕刊掲載というのも功を奏したのでしょう。仕事場で目を通していたという声も多く、反響には広がりがありました」と手応えを見せる。
制作を担当したのは、営業部店舗運営課の種田珠子氏。「広告の基本デザインを統一することでお客様に安心感をもたらし、商品を毎日変更することで『明日は何だろう』と興味や好奇心を誘うのが狙いでした」と説明する。「商品は当社が導入している販売状況を即時に把握できるリアルタイムPOSシステムのデータをもとに、季節や読者の生活サイクルに合わせてピックアップ。ハロウィーンやクリスマス、バレンタインなどのイベントグッズに関しては、需要がピークを迎えるタイミングで掲載しました。商品コメントも単なる紹介文ではなく、それを使う場面やストーリーを感じさせるような文章を心がけました」
広告に使う色で季節を表現しようとしたのも、クリエーティブのポイントの一つ。「『日常を彩る100円グッズ』という見出しを引き立てる色は、コーポレートカラーのグリーンで始まり、秋冬は暖色、春先はピンク、最後はまたグリーンに戻しました。生命のつながり、再生を意図しました」
2009年10月1日~2010年3月31日 名古屋本社版 夕刊1面突き出しシリーズ広告
100円ショップの既存イメージを一新する試み
シリーズ広告の締めくくりは、3月31日の夕刊テレビ面10段広告。花見の季節直前に掲載した本広告は、100円玉の表側を表現した、桜の花を思い起こさせる目を引くクリエーティブ。その横に商品が並んでおり、100円ショップならではの選べる楽しさやワクワク感を表現している。
「シリーズ広告の最終回では、半年間で紹介した商品すべてを一挙に掲載しました。一つひとつをじっくり見ていくと、『この商品を広告で見たときは、あんなことがあったな』と記憶がよみがえるのでは。ビジュアルには、お客様それぞれの思い出を重ねてほしいという願いが込められています。また本社のある大垣市は『奥の細道』のむすびの地であり、記念館周辺は桜の名所でもあることから、春にちなんだ松尾芭蕉の俳句をコピーに据えました」と種田氏。
セリアが力を入れているのは、ハンドクラフトや編み物、ラッピング、スイーツといった手づくりコーナー。各種キットやカットクロス、フラワーパーツなどが豊富にラインアップされている。「手作り作品Photoコンテスト」も定期的に開催され、ホームページ上ではグランプリ作品や初心者向けのレシピなどが紹介されている。
「『手作りのセリア』としての認知度を高め、誘客に結びつけることも課題として掲げています。当社は時間をかけて取り組んできたブランディングによって、ようやく進むべき方向性とあるべき姿を確立できたところです。原点にあるのは、『100円ショップの既存イメージを変えたい』という思いです。雑多な陳列で商品の豊富さをアピールする従来の販売スタイルからは、着々と脱却を図っています。取りそろえているのは、ライフシーンをセンス良く演出するおしゃれアイテム。100円以上の価値を創造するショップとして、ゆったりとくつろぎながらお買い物をお楽しみいただけるよう、明るく心地よい店舗づくりを推進しています」と河合常務は総括する。
さらに今後の広告展開について、次のように語る。「新聞の特性である一覧性は、『情報を得る』という点において非常に効果的です。日常に溶け込んだツールであり、幅広い世代との親和性も高い。インターネットは知りたい情報をいつでも手軽に入手できる媒体として優れていますが、新聞は無意識のうちに情報を取得できる強みがあります。新聞ならではの特性を生かしながら、他の媒体と補完し合って当社のメッセージを伝えていきたいと考えています」