ファンキーモンキーベイビーズとコラボレートしたブランド訴求

 資格を取りたい、自分磨きをしたいと考える人に通信講座を提供するユーキャンは、タレントを起用したドラマ形式のウェブムービーを作成し、その中の場面のいくつかを切り出したCMキャンペーンを展開している。今年は年明けから、蒼井優さん、佐藤隆太さん、お笑い芸人のはんにゃの2人、貫地谷しほりさん、富田靖子さんが登場、何かしらの悩みや問題を抱えながら、学びや資格取得で前向きに変わろうとしている人たちの姿を描いている。

学ぶ人を応援するウェブムービーと楽曲で情緒訴求型のプロモーションを展開

冨山俊夫氏 冨山俊夫氏

 CMには、提供する商品やサービスの魅力を伝える価値訴求型と、消費者の気持ちに訴える情緒訴求型がある。ユーキャンでは長年、同社が提供する通信教育講座というコンテンツのラインアップとその優位点を提示する価値訴求型のプロモーションを手がけてきた。「しかし、ある時期から限界を感じるようになりました」と、ユーキャン 執行役員 教育事業・営業本部本部長の冨山俊夫氏。「毎年、新しい講座を平均5、6講座開発し、ラインに加えています。しかし、講座全体を提示し優位点を訴求する方法だけでは、消費者にはあまり変化がないと思われたのか、資料請求の数が増えなくなってきたのです」

 そこで同社は2008年、大きく方向転換をした。俳優の玉木宏さん、女優の菅野美穂さんが「日常の中で学ぶ姿」を演じる、情緒訴求型のプロモーションに切り替えたのだ。さらにCMに華を添えたのが、スキマスイッチの大橋卓弥さんが書き下ろした楽曲だった。

 昨年は、同じ出演者でウェブムービーを作成し、その中から切り出した映像をCMとして放映した。人気グループGReeeeNの楽曲を採用、大きなヒットとなった。「資料請求の数も増え、プロモーションとして手ごたえのある結果を出せました」と冨山氏。今年はさらに様々なターゲット層に共感してもらおうと5組のタレントを新たに起用、「フミダス」(=踏み出す)をテーマにしたキャンペーンを展開している。

ウェブムービーとテレビCM

 楽曲を担当したのは、ファンキーモンキーベイビーズ、通称「ファンモン」だ。多くの人を勇気づけてきた応援歌が支持され、昨年は「ふるさと」という曲がNHK「みんなのうた」に採用されたり、紅白歌合戦への出場を果たしたりするなど、ブレークした。そのファンモンが書き下ろした「涙/夢」が、ウェブムービーやCMの世界観を盛り上げている。「ウェブムービーと楽曲は、新しい学びを始める人を応援したい、というユーキャンの『ブランド体験装置』と位置付けています」と冨山氏は話す。

 ファンモンのCDジャケットは、これまでも著名人の顔写真を使うことが話題だったが、今回の「涙/夢」の初回リリース版は、ウェブムービーに出演する5組のタレントを起用した。さらに2月27日にユーキャンとのコラボコンサート「フミダスライブ」を開催。専用の「フミダスサイト」から、新しい一歩を踏み出す決意を込めた顔写真と言葉を投稿することで、コンサートチケットの抽選権を手に入れることができた。

 そのライブの告知と投稿方法を、1月26日から5日間、朝日新聞朝刊に掲載した。クリエーティブは、前向きに一歩を踏み出した人たちに向け、歌も資格も力になるというメッセージを込めたコピーを、写真に添えたものになっている。「この広告では、通信講座の資料請求数を増やす、受講生を獲得するといった、いわゆる営業的なねらいはなく、ユーキャンというブランドに対する信頼を寄せてもらいたいという思いがありました」と冨山氏。さらにライブの告知についても、「おそらくファンモンのコアなファンは、新聞広告を見る前に情報はキャッチしている。新聞ではむしろ、ファンモンを知らない、興味がないというような人にも、ユーキャンとファンモンが一緒にこんなことをしている、と知ってもらう目的がありました」と話す。

※画像は拡大します。

2010年1月26日付 朝刊
2010年1月27日付 朝刊
2010年1月28日付 朝刊
2010年1月29日付 朝刊
2010年1月30日付 朝刊

1月に「投資」した広告で印象を残しウェブにいかに誘導するかが課題

 新聞をはじめ様々なメディアで告知した結果、「フミダスサイト」のユニークユーザーは約11万、そのうち8万7千件が「フミダスメッセージ」の投稿だった。新聞広告の効果だけを把握するのは難しいが、「PCからと携帯電話からの投稿は大体2:1の割合なのですが、新聞広告を掲載した直後は携帯電話からの投稿が増えました。QRコードを載せたからだと見ていますが、新聞という比較的『大人のメディア』でPCよりもモバイルが増える、というのはなかなかおもしろい現象だと感じました」と冨山氏は振り返る。

 コラボライブは、抽選でチケットを手に入れたペア750組1,500人が熱狂、成功を収めた。また楽曲も大ヒットを記録、冨山氏は「『ユーキャンとコラボすると曲が売れる』と、業界では評判になりつつあります。資料請求や受講をする人たちだけでなく、アーティストの皆さんにも喜んでもらえるプロモーションにしていきたい」と話す。

 多くの人が「新しいことを始めたい」と感じる年明けの1月、同社では最も広告量を増やしている。「1月に投資した資産を、1年を通じてどれだけ有効化するかが課題。特に、いかにウェブにつなげるかを考えています」と冨山氏。資料請求の数は1月に圧倒的に多く、それからなだらかに下がっていくが、1~2月にたくさんの広告を出すことで印象が残れば、その後、たとえば通信講座を始めようとか資格を取りたいと思ったとき、ウェブにアクセスするという流れがある、という。冨山氏はこの流れを「広告効果のロングテール化」と解説。「心に残る広告こそが、広告効果のロングテール化につながると考えます。ウェブムービーや楽曲による共感型のキャンペーンで、ユーキャンをより身近な存在と感じてもらうプロモーションを大事にしていきたい」と言葉を結んだ。

ファンモン「涙/夢」初回リリース版のCDジャケット