「カメラ専門店」への戦略転換とともに新聞広告に回帰

 関西では知名度抜群の「カメラのナニワ」こと、ナニワ商会。カメラだけではない「安売りの店」というイメージを持っている人も、まだいるだろう。しかし実際はこの10年で、そうした量販店スタイルから「カメラの専門店」へと大きくかじを切った。今年10月、朝日新聞では約9年ぶりとなる全面広告を掲載したのも、「原点回帰」ともいえる戦略転換が背景にある。 

中古市場にも参入、独自の広告展開に手応え

西崎泰弘氏

 1947年創業のナニワ商会は、1980年代からAV機器、家電品、時計、ブランド品なども扱う量販形態に移行し、ディスカウントで人気を集めた。転機となったのは2000年、ヨドバシカメラなど東京からの大規模量販店の進出だ。「店舗が大きく、品ぞろえが多いところが有利。同じ土俵での戦いでは価格勝負となってしまいます。それならば、当社が本来持っていた専門性を深め、原点に戻るという決断をしたんです」と語るのは、店舗開発室/広告宣伝室の運営統括を担う西崎泰弘氏。2年前には拠点である心斎橋本店を、シックで洗練された内外装に全面リニューアルし、専門店としての姿勢をさらに強く打ち出した。

 しかし、専門店だからといって、専門性の高さをアピールするだけで商品が高く売れるわけではない。そこで同社がとった戦略が、中古カメラ市場への本格参入で、これが好調に推移している。「中古売り場としては西日本で最大クラスでしょう。どれだけ豊富に品ぞろえができるかが勝負どころです。」つまり、いかに買い取り・下取りを増やせるか。量販時代は新聞広告も頻繁に行っていたが、専門店に軸足を移してからは、カメラ愛好家にDMを送っていた。しかし最近は再び、広く一般へと届く告知ツールとしての新聞の力を再認識するようになったという。

 「流通業には、春や夏といった売り出し時期があります。しかし、当社の場合、メーカーの新製品の発売時期が一番の商機と判断しています」。保有しているカメラを下取りに出した上で、新たな機種を購入するという購買スタイルが多いからだ。今回の広告では、キヤノンの新製品キャンペーンと時期を合わせ、中古カメラの取り扱いを大きく告知している。

 「広告の反響は予想以上。問い合わせも一過性ではなく、持続的にきています。カメラ愛好家には、年齢層の高い50~60代の方も多い。それは新聞で一番多い読者層と重なります。新聞の効果を見直しましたね」と西崎氏。

 同社は大阪の一大繁華街の一つである「ミナミ」エリアが地盤であり、大阪府下でも南部に強いが、一方で朝日新聞の購読層は北部が勝る。しかし、同社には、送料負担でカメラを買い取る「発送買い取り」システムがある。「この広告で北部と南部の境界は消えるのでは」との読みは当たり、エリアに関係なく問い合わせが増えた。  

中古はエコ――時代に対応した存在感をアピール

2009年10/2 朝刊 大阪本社版 2009年10月2日 朝刊 大阪本社版

 一方で、新聞広告のクリエーティブに関する課題も見えてきた。「要素を詰め込み過ぎ」などの反省も社内からあった。「従来通りの、商品と価格を並べるだけの広告なら、大手量販店が毎週のように折り込みチラシを配布しています。同じことを新聞広告でやるのは、やはり限界があると思いますね」。たとえば、同社はかねてから、撮影会や写真セミナーなどの手厚いサービスで、カメラ愛好家には知られている。そうした差別化された「専門店としての存在感」を、より広く、より深くアピールしていくための広告クリエーティブが必要との認識だ。

 また、注力している中古カメラに関しても、「カメラにあまりなじみのない方々は、カメラは売れるものであること自体をご存じないようですから、カメラを売ったり、中古カメラを買ったりという事を、車やピアノと同じように当たり前のこととして認識してもらえるよう、告知していく必要があると感じています」。

 ナニワ商会では、今の循環型の消費スタイルにも着目している。はじめに新品を購入し、それを中古として売却、新たに新品を買う――。売買される中古カメラも、どこかでまた再利用される。中古カメラの客層の主流は中高年だが、最近は若い女性層なども増えてきた。「初めて使うカメラはまず中古カメラから……なんていうのも素晴らしいですね。中古はエコだと思います」 

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