日本の世界遺産を舞台としたイベントに協賛

 日本各地の世界遺産でコンサートなどを行い、文化遺産保護運動の普及と啓発を目指す「世界遺産劇場」は2006年、奈良・東大寺の大仏殿で第1幕がスタートし、今年10月に広島・宮島の厳島神社のコンサートで第12幕を迎えた。ここ3年間にわたって冠協賛してきたのが、楽天だ。協賛を始めた2007年は、同社にとって創立10周年を迎えた年だった。2002年に上場したNECフィールディングも、同イベントに協賛。両社にその狙いや目的としていることを聞いた。

創立10周年を機に、「日本発」の「楽天らしい」社会貢献を

楽天

堀内公博氏

 「当社の代表的な事業である『楽天市場』では、地方の中小小売店や卸売業者に新たなビジネスチャンスを提供しています。その事業を拡大していくこと自体が、地方の経済に対して貢献できる、と考えてきました。しかし創立から10年がたち、会社も大きく成長した今、何か社会貢献ができる活動を、という思いが強くなったのです」

 そう話すのは、同社グループマーケティング部部長の堀内公博氏。さらに続ける。 「国内の大手インターネット系企業の多くは米国発ですが、当社は三木谷浩史がゼロからオリジナルで立ち上げた会社です。楽天らしさを考えると『日本らしさのある』何かがいい、と。そんなときに世界遺産劇場の活動を知り、これはとても我々らしいのでは、という結論に至りました」

2009年4/26 朝刊 2009年4月26日 朝刊

 今年4月26日には、世界遺産劇場の記事下に広告を出稿した。「日本を、元気に。世界を、元気に。」とうたった企業広告だ。 

 「野球の球団運営で『楽天』の名は知られるようになりました。次のステップとして、どんな企業なのかを、特にインターネットや当社のサービスを利用していない人にも少し深く知ってもらう必要があると考えています」と堀内氏。「新聞広告は、ネット広告のような直接的な効果を把握することはできませんが、普段インターネットに触れない層にも、事業や思いを広く伝える力があると考えています」  

  協賛をきっかけに、堀内氏自身、イベント会場にたびたび足を運んでいるという。 

 「多くの会場が、コンサートのために地元の人が椅子を並べるなど、一から作っていく。手作り感があり、イベントの開催によって観客だけでなく、地元の方と交流できる点が、とてもいいなと感じています」 

 直接観客や地元の方の顔が見える点も、楽天が協賛する理由だ。「当社の事業の性格上、利用者の顔が見えにくいし、利用者からも会社の実態がわかりにくい。だからこそ、このように触れ合うことでコミュニケーションできる場は、とても貴重ですね」と、堀内氏は話した。  

「世界遺産劇場」の様子

2009年9月 鎌倉公演:ギターデュオのDEPAPEPEさん
2009年10月 厳島神社公演:島谷ひとみさん
(C)竹下光士

イベント協賛に加え、「世界遺産大學」開催にも尽力

NECフィールディング

佐川典正氏

 2002年に上場したNECフィールディングは、社名や企業活動の認知向上を目的に、広告を展開、イベントやスポーツ事業への協賛などに取り組んできた。 

 「サッカーJ1のチームへの協賛もしましたが、試合と連動した当社イベントを開催できるのは、ホームゲームに限定されていました。当社は全国でサービスを提供しているので、地方への広まりがあるような何かに協賛できたら、と考えていました」と話すのは、同社コーポレート・コミュニケーション部長の佐川典正氏。そんな折、「世界遺産劇場」の取り組みを知った。 「当社は、企業のITシステムをサポートするという事業を通じて『会社を守る会社』です。世界遺産を守り、活動を通じてその大切さを人々に伝える『世界遺産劇場』のコンセプトに通じるものがあると感じたのも、協賛を決めた一因でした」(佐川氏)

 コンサート会場には、同社のブースも出展、地元の社員を中心に参加している。 「イベントに参加することで、普段会わないような人たちと交流できることが、いい刺激になっているようです。世界遺産劇場への協賛に加え、当社イベントの開催により、社員のモチベーションアップにも貢献したいと考えています」と、佐川氏は手ごたえを語る。

2009年9/25 朝刊 2009年9月25日 朝刊

 今年9月25日には、世界遺産劇場の記事下に広告が掲載された。B to Bの業界紙や雑誌への出稿が多い同社にとって、一般紙である朝日新聞への出稿は、これまでほとんどなかった。

 「一般紙だと、ビジネス相手だけでなく、その家族や社員の家族、さらにその先にいる消費者にも訴求できる」と佐川氏。自身も家族から「広告が出てたね」と喜ばれたという。

 コンサートだけでなく、世界遺産に関連したテーマで学ぶイベント「世界遺産大學」にも協賛している。10月の奈良・飛鳥で万葉集をテーマにしたパネルディスカッションなどの催しには、200人余りが参加した。佐川氏は「世界遺産劇場は開催地が限られますが、世界遺産大學は地方でも東京でもできるのが魅力」と話す。次回は来年3月の予定だ。 「世界遺産劇場への協賛は単なる広告宣伝活動ではなく、社会や地域への貢献ととらえています。こうした取り組みは、継続することが重要だと考えています」と語った。

 コンサートにはできるだけ足を運ぶという佐川氏は、最後にこうまとめた。
「海ならば波の音、山ならば風の音が、音楽に溶け込んで新しい風景が現れる。感激し、日本の魅力を再認識する瞬間です」

2009年9月 神奈川県鎌倉市で開かれた「世界遺産劇場」の、NECフィールディングのイベントの様子