北海道・小樽の魅力を、お菓子を通じて全国へ発信

 ふんわりとろけるようなチーズケーキの写真に、「北海道・小樽から」というキャッチコピーを添えた全15段広告が、5月、朝日新聞全国版朝刊に掲載された。小樽市に本店を置く、洋菓子ブランド「ルタオ」の広告だ。7月には、記事でじっくりとブランドストーリーを伝える広告を展開した。

河越晴皓氏 河越晴皓氏

 ルタオは、全国各地に根ざしたお菓子を展開する寿スピリッツのグループ企業、ケイシイシイの主力ブランドで、誕生から10年になる。寿スピリッツおよびケイシイシイの代表取締役社長である河越晴皓氏は、次のように語る。

 「私たちは、”Northern Sweets Manner”をキャッチフレーズに、『北海道・小樽のすばらしさを、お菓子を通じて全国に伝えたい』という理念のもと当初から取り組んできました。
 そのためには、北海道の良質な素材に徹底してこだわる必要があると考えました。チーズケーキ『ドゥーブルフロマージュ』には、肥料にこだわった卵や、小樽産の生クリームを使用。また、北海道の素材を引き立てるように、オーストラリア産クリームチーズやイタリア産マスカルポーネチーズを使っています」

 北海道のすばらしさを伝えるお菓子にするために、まずは地元である小樽の方々から支持を得るための努力を続けたという。

 「たとえば小樽市内では、シュークリーム1個からの無料配達を行っています。坂が多い小樽では、足の悪い方やお年寄りが冬に外出できなかったりするからです。さらに、紅茶教室やお父さんのお菓子教室など、多いときには月に100件近いイベントを開き、地域への浸透を図ってきました」

 こうしたお菓子作りの姿勢や、地元との交流からじわじわと人気が高まり、週刊誌、テレビ、ラジオ、ブログなどで話題になって、ルタオの認知は全国区に拡大してきたと河越氏は話す。

 「ドゥーブルフロマージュ」は通信販売で、1個1,575円、三つ以上購入すると送料が無料になる。三つ以上まとめて購入するとなると、お菓子としてはけっして少額とは言えない。

 「もっと安くすれば、お客様の層はどんどん広がるのかもしれません。しかし、私たちはそのやり方が正しいとは思いません。安くすることよりも、良質のものを作り続けることに力を注ぐことが、長年お付き合いいただけるお客様の獲得につながるのです。『おいしい』と思っていただけたお客様が、次に召し上がるときの期待値は、前よりも高くなります。私は社員にむけて、昨日よりも今日のほうがおいしく作れているか、常に自らに問い続けるように言っています」

2009年5月22日付 朝刊
2009年7月27日付 朝刊

ブランドストーリーを理解し、リピーターになってもらえるのは新聞読者

 新聞を使った広告展開は、今回が初めてだという。新聞広告についての考えを、河越氏はこう話す。

 「私たちの商品は、ブランドの背景にある物語を知り、納得したうえでご購入いただくものだと考えています。そのためには、新聞は適した媒体です。一度購入されたお客様にはカタログを送付していますが、新規顧客となる方々にしっかりと説明できるのは、新聞ならではだと思います。新聞の読者は、ブランドストーリーをちゃんと理解し、くり返しご購入いただける可能性が高いととらえています」

 現在、「ルタオ」の商品販売は、通販以外では、北海道の店舗(小樽、札幌、千歳、函館)と、全国百貨店の催事のみ。通販、百貨店の催事、北海道の店舗は、それぞれ不可欠なものだと河越氏は話す。

 「お客様に実際に店舗で商品に接していただくことによって、通販が生きてきます。新聞広告の切り抜きを持って、『これを下さい』と来店される北海道旅行のお客様もいらっしゃいます。そうした方に、後に通販で買っていただけるのではないかと思います」

 最後に、今後の抱負を河越氏に聞いた。「小樽のルタオ本店には、100種類以上のケーキやチョコレートが並んでいます。喫茶室のほか、海の見える展望タワーや、美しい音色を奏でるカリヨン(鐘)もあります。いつからか、カリヨンを聞きながらドゥーブルフロマージュを食べると、二人の仲は永遠のものになるといううわさが広がり、全国からカップルが訪れています。そんな逸話も大切にしながら、私たちはこれからもおいしいお菓子を作り続けて、北海道・小樽のすばらしさを全国へ発信していきたいですね。

 また、ルタオで培ったノウハウをグループ全体で生かし、各地から全国へ発信できるお菓子ブランドを作っていけたらと考えています」