エコと商品を連動させたインパクトの強いクリエーティブ
東芝は2008年11月22日朝刊で8ページ連続の全15段カラー広告を掲載し、コミュニケーションコンセプト「エコスタイル」の訴求と商品紹介を展開した。一企業が8ページにもわたる広告を掲載するという非常にインパクトのある試みの背景について、広告部国内広告担当部長代理の関根優一氏に聞いた。
エコロジーとエコノミーで訴求
同社は2007年10月から冷蔵庫やランドリーなどの白物家電の分野で、環境を切り口にした「エコスタイル」というコンセプトで消費者とのコミュニケーションをはかっている。「エコスタイルとは東芝が、地球内企業というキーワードで環境に積 極的に取り組むことを提唱した取り組みのひとつです。最近、企業の努力の結果、工場などから排出されるCO2はかなり削減できています。しかし、一般家庭から排出されるCO2は逆に増えているという現状があります。そこで、東芝ではエコスタイルというキーワードを用い、白物家電においてエコという切り口で商品作りをして、消費者とのコミュニケーションに取り組んでいます」と関根氏は語る。
2007年から一年近く展開したエコスタイルをバージョンアップしていくため、年末商戦をターゲットとして立ち上げたのが今回の広告キャンペーンだったという。年末商戦のスタートと位置づけた11月22日に掲載した。
「冷蔵庫、ランドリー、エアコンなど8商品を紹介しています。いくらエコスタイルをアピールしても、それが商品と連動していないと消費者には実感がわきません。8ページ使うことによって、商品一つひとつをじっくり見せることができました。紙上カタログという体裁で、そのまま抜き出して商品カタログとして使えるようになっています。また、数字を使って訴えた点も今回の広告の特徴です。エコといわれてピンと来ない人でも、電気代や家計に優しいというと理解してもらえる。『エコエコマーク』と名付けたロゴマークを使用し、例えば『エアコン・大清快は年間でCO2を約214kg削減し、電気代は13,600円節約』というように、数字でどれくらい家計に優しいのかを広告に盛り込むことでエコロジー&エコノミーをアピールしました」
クロスメディア展開で接触を増やす
17面(フロント面)
キャンペーンは新聞を含むクロスメディアで大きく展開された。新聞からテレビ、ラジオ、OOH、店頭まで広告クリエーティブを統一させたという。新聞広告の内容をそのまま縮小したパンフレットも店頭で5万部ほど配布した。また、山手線ラッピング広告や駅張り広告も併用し、自宅から移動中、店頭に至るまで消費者がエコスタイルのキャンペーンに接触するように展開している。
新聞広告の役割について、関根氏は次のように話す。「エコ、環境という訴求のターゲットとなるのは主婦層です。主婦層をカバーする30~60代の年齢層にリーチするには新聞が有効だと考えています。また、15秒のテレビCMでは商品の訴求ポイントを伝えきれません。新聞はじっくり読んでいただくことができ、内容の理解を醸成できるメディアだと思います。スペースも大きく、テレビで訴えきれない部分を伝えるメディアとして重要視しています」
広告出稿後、営業現場から大きな反響があったという。量販店など流通業者の中には、自主的に東芝商品の展示スペースを用意してくれる店舗もあった。また、新聞広告を見て、商品を買いに来店したお客さまもいたとのことで、社内外で話題を呼んだキャンペーンとなった。
今後の広告展開について聞くと、「今、どのメーカーもエコを訴求ポイントにしています。消費者の視点からみるとそれぞれの違いや特色がわかりにくくなっているかもしれません。今後はもっとオリジナリティーを出していきたいと思います。例えばエアコンでいえば、『よく冷える』『すぐに温かくなる』というような基本性能の訴求が一番消費者に理解されるのです。そのような他社との差別化ポイントも鮮明に打ち出していきたいですね」と関根氏は結んだ。
(辻)