セラミックスからひろがる新技術をシリーズ広告で紹介

企業の現在の姿について認知向上を狙う

 1月13日から2月5日にかけて、朝日新聞の朝刊テレビ面に、ノリタケカンパニーリミテド(以下、ノリタケ)が4回にわたるシリーズ広告を掲載した。各回 共通するメーンコピーは、「これも、ノリタケ?」。食器で有名な同社が、それ以外の事業を展開していることを伝える企業広告である。
 「弊社は、これまで『食器のノリタケ』として広く一般に知られていましたが、認知度は年々下がってきており、特に学生など若年層で顕著です。そうしたことに危機感を持ち、このたび広告展開することになりまし た」と話すのは、同社広報室長の夫馬(ふま)裕子氏。

工業用製品の生産が事業の大部分

夫馬裕子氏 夫馬裕子氏

現在、食器事業はノリタケの事業構成全体の1割程度にとどまる。研削砥石(といし)やダイヤモンド工具で産業界を支える工業機材事業、セラミックスの原材料を 様々な製造業に供給するセラミック・マテリアル事業などを展開し、工業用製品が売り上げの9割を占めている。

 「弊社が扱うのは、一般の目には触れない工業用製品がほとんどです。そういった『ノリタケの現在の姿』を多くの人に訴求するとともに、ノリタケを知らない学生などの若年層に認知してもらうことを狙いました。食器にはあえて触れないことによって、意外性が引き出せると考えました」と夫馬氏は語る。

 今回のシリーズ広告は、若年層やその親、および周囲の人の目に留まるように、注目度の高いテレビ面で展開した。東京本社版エリアに掲載し、地元の名古屋地域にとどまらない認知の広がりを求めた。

 シリーズ1回目と4回目で取り上げた工業用製品は、「回転しないミキサー」。らせん状のメタルは、飲料や乳製品などを製造するパイプの中に固定され、 原料をなめらかに混ぜ合わせる役割を果たす。閉じたパイプの中で混ぜ合わせることができるので、安全で衛生的だという。

 2回目は、「電子回路をプリントする」。自動車や薄型テレビなど工業製品に使われる電子回路を印刷するインク(電子ペースト)を製造していることを伝えた。3回目は、「整列するダイヤモンド」。半導体の製造工程で使われる、ダイヤモンドの粒を用いた研磨工具を取り上げた。いずれの広告ビジュアルも、小さな製品を拡大して見せることによって「これは何だろう?」と読者の興味を引く。ノリタケのロゴマークの上にある、「セラミックスからひろがる新技術」という共通コピーは、セラミックスからさまざまな事業が派生していることを表している。広告の制作過程について、夫馬氏は次のように話す。

 「たくさんの製品群の中から、広告制作者に『面白い』と感じるものを選定してもらい、その後技術者から詳しい説明を聞き、エッセンスをしぼり出して、シンプルなコピーに仕上げました。我々の取り組みについて、事実を一つひとつ丁寧に伝えることを目標にしましたが、いかに事実を曲げず、『専門的だけど面白い』と感じてもらえるコピーにするかに心を砕きました」

原点の食器を大切に歩みを回顧する

1/31 朝刊 大阪本社版 2009年1月31日付 朝刊 大阪本社版

日本の洋食器の礎を築いた創業からのノリタケの歩みを紹介する展覧会「ノリタケデザイン100年の歴史」が、2年前から開かれている(主催:朝日新聞社)。横浜、宇都宮、長崎、静岡、京都を巡回し、締めくくりに4月からノリタケ本社の所在地である名古屋で開催される(名古屋ボストン美術館)。1876年の創業時から昭和初期までに生産された豪華な飾りつぼや花瓶、ディナーセットなどを展示している。

 京都での会期中に掲載した広告特集(1月31日付朝刊大阪本社版全15段)の中の純広告では、食器を一つ象徴的に載せ、「未来は、伝統の中に咲く。」というコ ピーを添えた。

 「このコピーに、私たちのブランドに対する思いをこめました。 ノリタケのアイデンティティーといえる食器は、大切に継承していかなければなりません。私たちの現在や未来はその上に積み重ねられているのですから」(夫馬氏)

 今後の広告展開について抱負を尋ねると、「私たちがどういう企業なのかを、社会に対してきちんと説明する責任はますます高まっています。これからも私たちの姿を世間に認知してもらうための取り組みを続けていきたいですね」と夫馬氏は結んだ。

(辻川)

1/27 朝刊、1/20 朝刊、1/13、2/5 朝刊

2009年1月27日付 朝刊、2009年1月20日付 朝刊、2009年1月13日付 朝刊、2009年2月5日付 朝刊