扶桑社とJTのタイアップ書籍『現代つぶやき辞典』
昨年10月から11月にかけて朝刊1面3段8割で「ルーツ飲んでゴー!」というコピーを目にした人も多いのではないか。日本たばこ産業(以下JT)の缶コーヒー「ルーツ」のキャッチフレーズだが、なぜ書籍広告の「サンヤツ」スペースにあるのか。よく見ると毎回違うコピーと『現代つぶやき辞典』という書籍名が入っている。この広告は、ルーツの数々のコピーを書籍化した、『現代つぶやき辞典』の発売キャンペーンの一環である。
発売の経緯について、扶桑社のコンテンツ第3グループ 江口裕人氏が語る。
「『ルーツ飲んでゴー!』のキャッチフレーズの認知度が高いという認識は以前からありました。そんな中、JTのホームページを見たところ、予想以上に多くのコピーの蓄積があることを知りました。もともと当社では、何かおもしろいネタがあれば積極的に本にしていこうという社風があり、これを書籍化できないか、と考えたのがきっかけです」
昨年の5月ごろからプロジェクトがスタートし、新たに書き下ろしたコピーやイラストを加え、9月27日の発売に至った。
サンヤツ展開の話題性と安心感
広告展開については、扶桑社とJTとの話の中で、認知を高めるための「いい露出」ついて考えた。
「新聞広告で継続的なコミュニケーションをはかることで、書籍を置いてもらう書店さんに面白いと感じてもらいつつ、安心感も抱いてもらえます。また歴史あるサンヤツを意外性のある使い方をすることで、より読者の注目や話題性を集められるのではないかと考えました。その結果、発売当初から書店には積極的に書籍を置いてもらうことができました」。と同社コンテンツ第3グループ(前広報宣伝チーム・マネージャー)槇保則氏。
クリエーティブも、余白を効果的に使うことで、コピーが際立っている。
ブックビジョン
「すべての情報を盛り込みたいという思いはありましたが、いかに目立ち、読者の意識に刷り込めるかということを第一に考えました。また、通勤という閲読シーンを考えた時、 1面の広告は、新聞の持ち主以外の目にも触れる可能性があるため、シンプルかつ、目立つレイアウトにしました。朝ならでは、休日ならではのコピーなど、シーンに合わせたコピーを何パターンも用意しました」(江口氏)
新聞広告以外の展開は、書店および交通広告が中心。書店に設置された映像広告メディアである「ブックビジョン」で、JTから提供を受けたCM素材を放映し、そのブックビジョンの前に書籍とルーツ現物を並べ、書店の場所にちなんだコピーを取り入れたPOPも設置した。
「ルーツの新商品発売のプロモーション時期と合わせたので、同時期にJT側でも交通広告などを展開させて、うまく連動できたと思います」(槇氏)
ブックストア談
浜松町店の平積みとPOP
新聞広告出稿後は各所からさまざまな反響があったという。
「同業他社からも驚きの声が多数ありました。読者からは、何の広告なのか、といった問い合わせもありましたが、関心を持ってもらうこと自体がよいことだととらえています」(江口氏)
実際、売れ行きも非常に好調。
「当初は20~30代のサラリーマンをターゲットとして想定していましたが、紀伊國屋書店の購入者のデータを見ると、想定ターゲットに加えて、女性や、想定より高い年齢層の方にも、予想以上にご購入いただいていることがわかりました」(江口氏)
書店だけでなく、ターゲット層が合致するコンビニエンスストアからも販売の打診があったそうだ。
チャレンジし続けていくことが大切
2008年10月30日付 朝刊
ルーツの新商品のプロモーション時期と合わせたことで、新聞広告や書店を始め、交通広告などでも「ルーツ飲んでゴー!」のコピーがあふれ、より多くの人の目に触れることとなった。いたるところでコピーを目にすることで、「立ち読み」のような効果も創出し、書籍の内容認知に大きく貢献した。
「この企画が成功したことで、まだまだおもしろいことができると感じました。新しいことをどんどん仕掛けていきたいですね」(江口氏)
「雑誌と商品やブランドとのタイアップは過去にもありましたが、書籍とのタイアップは珍しい事例でした。発売した後も読者とコミュニケーションをはかることができる、今回のようなチャレンジを続けていくことが大切だと思います」(槇氏)
(鈴木)