二連版30段とパノラマ6で伝えた「ALMA」プロジェクト

技術力とワールドワイドな事業のスケール感を伝える

 現在、チリ・アタカマ、標高約5000mの高地に広がる砂漠では、日・米・欧が共同で取り組む国際的な天文観測プロジェクト「ALMA」が進められている。合計80台の高精度アンテナを連携させ、巨大な電波望遠鏡として機能させるという試みだ。その解像度は、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡の約10倍といわれ、宇宙の物質がどのように進化してきたかをひも解き、生命誕生に関する新たな発見を得る可能性を秘めているという。日本が担当するのは直径12mのアンテナ4台、直径7mのアンテナ12台からなる「ACA(アタカマ・コンパクト・アレイ)」と呼ばれる16台の高精度アンテナ群の干渉計システムだ。このアンテナを開発・製造している三菱電機が、「ALMA」プロジェクトの意義と同社の技術力を伝える二連版30段広告とパノラマ6のエリア広告特集を展開した。

企業の実態を広告で鮮明化

丸山 亨氏 丸山 亨氏
広告出稿の背景について、宣伝部・コーポレートコミュニケーショングループ・専任の阿部知行氏は、「当社の事業は、家電からさまざまな社会インフラ、宇宙開発まで多岐にわたりますが、一般生活者には活動の実態が見えにくく、企業イメージが希薄化している現状がありました。そこで、2004年から、技術力に焦点をあてた企業広告を新聞紙上で展開しています。今回もその一環でしたが、とりわけビッグプロジェクトということで、大から『撮り下ろしたほうがインパクトが強い。取材班を送ります』との申し出をいただき、お願いしました。その決断の後、取材班は1週間を待たずに現地に出発しました。アンテナの調整に追われる現場が、取材に対応できる日が数日後にしかなかったためです。飛行機と車を乗り継ぎ40時間、さらに寒さと強風、空気の薄い高地での撮影で、かなり過酷な取材となりましたが、世界レベルのプロジェクトが持つ壮大さが伝わるビジュアルとなり、よかったと思います」

新聞メディアの視点を印象づける

阿部知行氏 阿部知行氏

クリエーティブ上の工夫点は、企業ロゴを小さめに配し、メディアの客観的な視点を印象づけたことだ。紙面は広告局が作成、写真の下に「2008年8月12日、チリ・アタカマにて朝日新聞社撮影」との情報も掲載した。朝日新聞社が深く制作にかかわった企画について、同部・同グループ・マネージャー兼メディア・ドキュメントグループマネージャーの丸山亨氏は、「新聞社とのコラボレーションは、通常の広告を超えた説得力を持つと実感しました。ビジネスの数字に跳ね返るというたぐいの告知ではありませんが、ボディーブローのように効いてくれることを期待しています」と話す。

 掲載後、朝日新聞社のアスパラクラブ会員アンケートには、「世界の先端技術の分野で日本の技術がこんなに役立っているのはすごい」などの意見が寄せられた。「社員や社員の家族からも大変好評で、家電部門など、プロジェクトと直接関係ない事業所も、『こういう技術を持った会社の商品です』と自信を持ってセールスできると喜んでいます。『ALMA』を推進する国立天文台の台長を始め各先生方からも評価をいただいています」

 また、9月の出稿は、10月から就職活動を開始する大学生に訴求する狙いもあり、その効果にも期待しているという。

 最後に、今後の抱負をたずねた。「『ALMA』は息の長いプロジェクトなので、一過性の情報発信で終わらせず、折に触れて新しいトピックをお伝えしていきたいですね」(阿部氏)

 「当社が提供する技術には、水処理などの生活インフラ、電車や車のシステム、セキュリティーシステムなど、表からは見えないけれど人々の生活に貢献しているものがたくさんあります。それをわかりきなスペースを割いてアピールしました」と話す。

 30段、パノラマ、ともに圧巻なのは、スケール感のあるビジュアルだ。薄暮の砂漠を背景に、巨大なアンテナが天空に顔を向けて並んでいる。

 「最初は借り写真を使うつもりでしたが、朝日新聞社やすく伝えるために、積極的にコミュニケーションを展開していきたいと思っています」(丸山氏)

2008年9月8日付 エリア広告 パノラマ6

2008年9月5日付 朝刊