「be」で展開した全5段広告シリーズ

親しみやすいテーマで技術面にフォーカス

枦山 智氏 枦山 智氏

 いま、家電業界では、環境意識の高まりや物価高騰による節約意識の高まりを受け、省エネ商品が注目されている。こうした中、東芝は「平成19年度省エネ大賞・資源エネルギー庁長官賞」を受賞したエアコン「大清快」の広告キャンペーンを朝日新聞の週末別刷り「be」で打ち出した。

 「そもそもは、エアコン=電気を消耗する、というイメージを払拭(ふっしょく)し、市場全体を押し上げたいとの思いから始まったキャンペーンです。エアコンの特性を理解してもらうには、じっくり目を通してもらえる媒体、中でも日曜の朝にゆったりとした気分で読める『be』がふさわしいのではないかと考えました。以前シリーズ広告をbeで展開し、反響が良かったため今年も出稿しました」と話すのは、東芝キヤリア マーケティング戦略本部 販売促進部 メディア担当参事 枦山 智(はぜやま さと)氏。

日曜日の朝にさわやかな広告を

 今年は新生活シーズンを控えた春先と猛暑期を控えた初夏に全5段広告シリーズを展開。インバーターやヒートポンプなど技術面にフォーカスし、省エネ性の高さを強調した。各回に共通しているのは、一般の生活者が親しみやすいテーマと関連づけて技術力を印象づけていることだ。

 「『be』の読者は女性や主婦層も多く、技術用語を羅列しても共感は得にくいと考えました。まずは読み物として楽しんでいただき、読み終わった時に自然と商品特性が理解できるような作りにしたかったのです」

 取り上げたテーマは、ラッコ、流れ星、トマト、熱気球、ハチドリ、ヨット。例えばラッコの回は、ラッコの体温調節のしくみと、室温を自在に調整するインバーター技術を関連づけて紹介した。ハチドリの回では、ハチドリのエネルギーの摂取法と、少ない電力でエネルギーを生み出すヒートポンプ技術とを関連づけた。「テーマ決めが一番大変でしたね。ビジュアル、コピーともに日曜の朝、さわやかな気持ちになれるように、という点がポイントとなりました」

 どのテーマも文献に頼るだけでなく専門家に取材を行い、“本物の声”を反映させた。

 「例えば、熱気球の回の『風を読み、熱気球を風に乗せる』というコピーは、熱気球運営機構会長の言葉をそのまま採用させていただきました」

 キャンペーンの概要は事前に社員全員に告知し、商談の話題作りにと促した。ちなみに一連の広告表現はすべて社長まで承認を得たという。

 「それほど気合が入ったキャンペーンでした。多くの人の目に触れる影響力の強い媒体なので」

アスパラアンケートに反響が続々

 省エネ大賞のマークは各回に入れた。このマークは店頭のPOP広告とも連動している。

 「『大清快』は、洞爺湖サミットの会場に設置された“ゼロエミッションハウス”のリビングルームに展示されたんです。それも大きな売りでしたので、『サミット会場で展示』という内容のPOPも掲げました」と枦山氏。

 なお、最終回の掲載はサミット終了直後で、締めくくりには格好のタイミングとなった。

 読者の反響は大きく、紙面で商品の詳細なスペックを紹介していないにもかかわらず、「広告に載っていたエアコンについて聞きたい」との問い合わせもあったという。

 同キャンペーンについては、朝日新聞の会員サービス「アスパラクラブ」でもアンケートを実施。毎回約3,000通を超える反響があり、7割が「コピーを読んだ」と回答。「広告という意識はなく、記事として読めた」「見て、読んで、さわやかな気持ちになった」「インバーターのしくみがわかった、ヒートポンプのしくみがわかった」「さすが東芝、企業姿勢に共感」といった意見が多く、「伝えたいことがちゃんと伝わった」と枦山氏は振り返る。

 エアコン市場の「省エネ競争」はこれからも続くと予想される。コミュニケーションの課題をどこに据えているのだろうか。

 「今後大事なのは、ターゲットを明確化し、そのニーズに合ったメッセージを発信することだと思います。どこの誰にメッセージを発信しているのかわからないような広告は見向きもされない。そう肝に銘じてニーズの把握に努め、次に生かしていきたいと考えています」

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