「アトレ」のイメージ広告を展開

夕刊1面を活用しブランドの認知を高める

藤本沢子氏 藤本沢子氏

 8月4日付朝日新聞夕刊1面に、一足早く秋の装いのファッション写真が掲載された。首都圏の主要駅にショッピングセンターを展開するアトレの広告だ。

 「1面での広告展開は昨年から続けています。今年は春夏秋冬の立ち上がりとセール前、クリスマスと計7回にわたって季節を先取りしたメッセージをお届けするプランです。ちなみに8月に掲載した広告は、『A True Lady』というキャッチの通り、女性らしいエレガントなスタイルを意識したビジュアルで、店頭に並ぶ秋物ファッションへの期待感を誘いました」と話すのは、営業部 販促・マーケティンググループ マネージャーの藤本沢子氏。

 広告のビジュアルは、店舗で展開するポスターのイメージと統一している。

 「アトレは立地にあわせて開発しているので、例えばアトレ恵比寿と隣駅のアトレ目黒でも微妙にコンセプトが違っているのですが、『半歩先行く上質なライフスタイル提案』という広告イメージは全館で統一し、シーズンのトレンドを織り交ぜつつ展開しています」

朝日新聞読者とターゲットが合致

2008年8月4日付 夕刊

 新聞広告、交通広告を展開するほか、店舗でパンフレットを配布、今年4月から東京FMのラジオ番組「アトレ ライフソムリエ」を提供している。メディアの使い分けの中で、新聞に期待する役割について藤本氏はこう話す。

 「ブランド調査を実施したところ、アトレの認知度は7割程度、利用率は4割足らずという結果で、もっと存在を知らしめていく必要性を感じました。そこで発行部数が多い新聞、さらにターゲットが集中する首都圏での掲載が効率的だと考えました」

 中でも朝日新聞の夕刊に注目した理由について藤本氏はこう続ける。

 「朝日新聞の夕刊読者は、いろんなことに興味を持ちアクティブなライフスタイルを送る女性が多いというお話をうかがっています。それが、20~30代の女性を中心とするアトレの客層と合致すると思いました」

 同社は一昨年まで、夕刊マリオン面で同様の広告を展開していた。1面に移したのは、「海外の一流ファッションブランドが1面に広告を出稿されていて、すごく目を引いたんです。イメージ広告として強いインパクトを打ち出せる面だと感じ、また、商業施設で1面を使っている企業は他になかったので、出稿を決めました」と藤本氏。

 一読者としてそう感じたという藤本氏は、もともと朝日新聞夕刊の愛読者だという。

 「買い物、グルメ、映画、タウンなど生活に密着した情報が満載で、しかも読み物としてのレベルが高いですよね。そういうところが、知的好奇心の強い高感度な女性たちを惹ひき付けているのではないかと思います。特にファッションページの記事は中身が濃くて読みごたえがあり、それに呼応してか、ファッションブランドの広告も多い。全体的にファッション性が高いと感じています」

 広告の反響としては、「セールに行ってみたい」「センスがいい」といった意見の他、「何の広告?」という声もあった。「アトレの存在を知らない人にとっては確かにわかりにくい広告で、もう少し具体的な情報を組み込んでいくことなどが今後の課題です」と藤本氏。

全スタッフとブランド価値を共有

 広告は、認知度アップとブランドイメージアップに加え、テナントのモチベーションアップも大きな狙いだった。

 「当社はディベロッパーなので、直接のお客様はテナント。おかげさまで好意的に受け止めていただいています。また、他の商業施設の方からの反応が結構大きいんです。1面での展開というのが珍しかったみたいで、『うちもやってみたい』なんて話もちらほら聞いています」

 なお、同社は昨年から一年がかりでブランドステートメントやビジョンをまとめ、これをもとにさらなるブランド力の向上に努めている。多店舗展開を進める中で、企業の存在意義を明文化し、すべてのスタッフと共有するためだ。

 「一から新しいものを……ということではなく、既存の価値を再確認しようという試みで、今は内部浸透を進めている段階です。業績好調を受けてここ数年店舗数が増え、それぞれエリアに合った個性を打ち出しているだけに、意識的にイメージの一貫性をはかっていかなければならないと考えています」

 現在社員約4百人、テナントで働いているスタッフを含めると約1万人、さらにそのオーナー会社も含めてインナーととらえ、情報発信を積極的に行っているという。

 「インナー対策が一段落したら、今度は外部への情報発信を進めていく予定です。従来はイメージ広告がメーンでしたが、ブランドのアイデンティティーや方向性を示すような企業広告的なメッセージを発信していけたらと思っています」

 2008年4月25日付 夕刊
 2008年7月1日付 夕刊