二連版30段で3カ年計画の環境キャンペーンをスタート

グループ挙げての地球保全活動を伝えた“決意編”

大居弘明氏 大居弘明氏

 昨年6月にドイツ・ハイリゲンダムで開かれた主要国首脳会議において「2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を半減する」との目標が掲げられた。日立製作所は、この目標を達成するための着実な取り組みとして2025年までの行動計画「環境ビジョン2025」を発表。具体的には、同年度時点で年間1億トンの二酸化炭素の排出量抑制を目指し、グループを挙げて地球環境保全への取り組みを強化するものだ。

 「当社は昔から個々の事業では環境対応に取り組んできましたが、グループを横断した形でメッセージを発信したことがありませんでした。地球環境に対する関心が高まる中、ビジョンの策定を好機ととらえ、2010年までの3カ年をかけてじっくり訴求していくつもりです」と語るのは、コーポレート・コミュニケーション本部・宣伝部・国内企業宣伝グループ兼媒体グループ部長代理の大居弘明氏。

取り組みのスケール感を表現

 その最初の意思表明として今年6月、二連版30段広告を展開した。まず目を引くのは、「日立はすべてを、地球のために。」というキャッチ。続くボディーコピーでは、すべての事業で環境のために技術を注ぐ、という強い意思を伝えている。「家庭やオフィスの電気製品から社会インフラまで、幅広い領域を有する日立グループの環境保全への取り組みのスケール感、ポテンシャルの大きさを、青い地球のビジュアルと重ねて表現しました」

 深刻な環境破壊の現状を突きつけて危機感をあおるような表現とは一線を画し、紙面の印象はいたって未来志向で、清涼な空気感が漂う。

 「最初の数行で温暖化の現実に触れていますが、全体としてはこれからどう行動していくかというポジティブな姿勢を大事にしました」

 同社は、2005年からグループの総合力を「つくろう。」というキャッチで訴求する企業広告を展開しているが、コピーの後半にはその思いも込めた。

 「モノづくりを通して社会に貢献するという企業理念は、 “地球をつくる”という精神に通じると考えています。この後段のメッセージは主に社員に届ける狙いがありました」

 コピーの締めくくりには“この木なんの木”のフレーズで有名なシンボルマークを置いた。

 「従来はこのマークこそが環境イメージを担ってきたと言えると思います。グループにとっても大きな資産だと思いますので、環境広告においても大事に使っていくつもりです」

 イメージキャラクターには佐藤浩市、宮沢りえを起用した。二人の視線の先には明るい地球の未来がある、そんな希望を感じさせるビジュアルだ。

 「佐藤さんは誠実さ、意志の強さを感じさせる方。宮沢さんは自分の考えをしっかり持ち、自身の行動が見る人に強い影響を与える方。企業理念を伝えるのに最適なお二人だと考えました。佐藤さんには当社の代弁者として理念を伝えていただき、宮沢さんには生活者の視点から環境問題を考え、環境保全行動の必要性を伝えていただこうと思っています」

新聞メディアで登場感を狙う

 新聞二連版30段でマスに訴えた理由については、「キャンペーンのスタートを飾る “決意編”でしたので、まずは登場感、そして企業の意気込みを誠実に伝えたいと考えました」と大居氏。社内の反響も大きく、掲載直後から「新聞で使ったビジュアルのポスター版があれば職場に張り出したい」という問い合わせがあった。「ちょうど新聞広告のフレームを使って社内ポスターを制作していたんです。うれしい反響でした」という。

 一般読者からも「有意義な宣言をしてくれてうれしい」「コピーに書いてあったことを本当に実現してください。応援しています」といった感想や激励の声が寄せられたという。

 今後の課題について聞くと、年間1億トンのCO2排出抑制のための具体的なアクションをいかに見せていくかだと大居氏は気を引き締める。「数値を掲げただけでは説明不足で不親切。生活者の視点に立ってわかりやすく伝えていく必要があります。そこで、グループ全体をくくる環境広告の他に、白物家電、デジタル家電、情報通信など、事業ごとに環境広告を展開し、さらに製品広告でも具体的な環境コミュニケーションを展開していきます。もっとも、白物家電など、先行して環境訴求しているものもありましたが、今回新しい旗頭を掲げたことで、より一貫したイメージが浸透していくと期待しています」

 ちなみに同社は、企業としての一体感を保つため、事業グループとの間で月に2回、情報交換の場を持ち、新聞やテレビで展開する広告のトーン&マナーを共有しているという。

 「『環境ビジョン2025』の実行にあたって、各事業を広告宣伝という側面から強力にサポートしていきたいですね」

 満を持してグループを貫く環境広告を展開した同社。次のメッセージが楽しみだ。

2008年6月17日付 朝刊