事業内容とともに理念を伝えるシリーズ広告

現場と一緒に作った広告で取り組みを訴求

福井博文氏 福井博文氏

 ベネッセは朝日新聞朝刊に3月28日から31日まで4日連続で、企業広告を出稿した。

 「1990年に『ベネッセ=よく生きる』を企業理念に導入して以来、教育、語学、生活、介護の四つの領域にわたって事業を展開しています。教育領域の『こどもちゃれんじ』や『進研ゼミ』は広く認知されていますが、ほかの事業については、これまで知らせる機会もなく、まだ世間に浸透しているとは言えません。年度の切り替えのこのタイミングで、改めてきちんとした形でメッセージを発信できたらと考えました」

 マーケティング・営業本部長室ブランド戦略セクションの福井博文氏は、出稿の経緯を説明する。

 「当社にはグループ会社を含め従業員が5万人ほどいますが、さまざまな事業を手がけているため、自分が関与していない領域が、具体的にどんな内容で、どのような考えをもっているのかわかりにくい、といった実情があります。そういう意味では、インナーコミュニケーションもねらいのひとつでした」

4領域の事業を4日連続で展開

2008年3月28日付 朝刊

 3月28日の語学を皮切りに、学習塾などの教育領域(29日)、食を中心とした生活領域(30日)、そして介護領域(31日)と、1日1領域ごとに紹介した。福井氏が特にこだわったのが、最終日の介護の広告だ。

 「介護付有料老人ホーム『くらら大泉学園』と、保育施設『ベネッセチャイルドケアセンター大泉学園』は、介護と保育が一体となった初の施設なので、どうしても告知したかった」と振り返る。

 「0歳から高齢者まで、あらゆる年代、ライフステージにおいて、人生を豊かにする『よく生きる』ための商品やサービスを提供したい。そんな当社にとって、介護は非常にシンボリックな取り組みで、当社の考え方をうまく表現できる存在ではないかと考えました」

 広く知られている「こどもちゃれんじ」と「進研ゼミ」についてはあえて触れなかったが、クリエーティブについては「あくまでも当社の原点は教育。教育に立脚点を置く企業がやっている語学教育であり、介護であり、生活への取り組みであることが伝わるよう心がけました」と福井氏。限られた時間の中で、「現場」と一緒に作った広告だという。ビジュアルもコピーも、各事業の担当者と相談しながら決めていった。

 「企業広告は企業価値にかかわります。社内の色々な人と意見を出し合いながら、自分たちが何を大事にしているかを改めて検討し、認識することが大切ではないか、と考えています」

理念が伝わった手ごたえを実感

 「こんな事業をやっているなんて知らなかった」という感想や、さらに、紹介した取り組みについても、「ベネッセだから信用できる」という、うれしい声も寄せられたという。

 「介護事業は10年以上前から展開していますが、ケアスタッフがなかなか集まらなかったり、ビジネスとして収益が上がらなかったりで、社内にも『なぜ、あえてやるのか?』という意見もあることは確かです。しかし今回、当社の介護に関する考え方をしっかりと表現できたことで、社内外に改めて理解してもらえたという手ごたえを感じています」

 一方で、特に介護に関しては「きれいごとではすまないだろう」といった厳しい意見もあった。「あらゆる意見に対し、どう受け止めるかを考え、次のコミュニケーションに生かしていくことが大切だととらえています」と、福井氏は語った。

理念や考え方を新聞で伝えたい

 同社は、ダイレクトメールを中心に、テレビ、新聞、折り込みチラシ、ウェブと、様々なメディアを使ってコミュニケーションを展開している。「費用対効果を厳密に見た上で媒体を決める」と福井氏。新聞については「ダイレクトなレスポンスがとりにくいため、効果を見るのは難しい側面もある」としながらも、「今回のように、セールスというよりも企業の理念や考え方をきちんと伝えたいという、いわばブランドコミュニケーションについては、新聞が有効だと考えます」と話す。新聞ならではの「信頼感」という特性も、選択のポイントとなったようだ。

 「事業と企業理念、いずれもがバランスよく発展することが企業価値を上げることにつながります。今後は、具体的には、CSR活動の発信などを進めていきたい」と福井氏。2010年のBenesse導入20周年をひとつの節目ととらえ、活動していく考えだ。

2008年3月29日付 朝刊
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