ものづくりへの熱い思いを伝える「技術」が主役の企業広告
「おじさん同士で、また来てしまった。」、「カメラは手に聞いて、つくれ。」一体何のことかと、思わず目にとまるキャッチコピーと、それと連動したインパクトのあるビジュアル。分量のある本文をしっかりと読ませる仕掛け作りにより、エンジニアたちの熱い思いを伝える。
ソニーマーケティングは昨年11月から、ソニーのデジタルイメージング関連商品群の主力ブランド“α”“サイバーショット”“ハンディカム”に関する技術開発力の訴求を図るシリーズ広告「Creator's DNA」を展開した。
技術を人格化し差異を明確に
「今回の展開のきっかけは、商品を開発しているソニーのデジタルイメージング(DI)事業本部。従来の商品広告ではなく、ものづくり企業・ソニーの技術にかける姿勢をメッセージしたいとの思いからスタートしました」。宣伝企画部DIグループの長島純氏は、「Creator's DNA」という言葉に込めた思いを語る。
メーカー各社の個性が一見希薄になったように見えるなか、「ソニーのエンジニアたちの、熱い魂は変わらない」ことを伝えるため、機能それぞれの長所を紹介するのではなく、機能のベースにある技術そのものを、広告の「主役」にした。「技術を語ることが、ソニー商品の人間的なぬくもりや逸品感をユーザーに再認識してもらうことにつながると思いました。ただ、技術をそのまま紹介しても、難しい内容になってしまい他社との差異点が伝えにくい。そこで考えたのが、ソニーの技術を人格化するというアイデアです」(長島氏)
技術者たちの生の声が素材
人格や個性を具体化するため、技術者たちに直接話を聞いた。新しい発想のきっかけは何か。開発過程でどんな苦心があったか。「仕事が終わって飲みに行く時も、酒場の暗がりでデジタルカメラの試し撮りをしている」という実話が、広告作りのヒントに。一方、デジタルイメージング商品群の技術広告である以上、そのすべてに搭載されている技術の訴求も必要。
長島氏は、「本文のストーリーを、技術のことから始めないことも約束事にした」と語る。例えば手ブレ補正技術を紹介するときは、「人がカメラを構える時、その腕はかならず動いています」と語り始める。メッセージは技術紹介に立ち止まらず、「あらゆる手ブレをなくす」。と、技術者の夢、ソニーの夢を堂々と語った。
媒体特性に応じ情報に深みを
本企画は、朝日新聞本紙の15段広告を中心に、be、アサヒカメラ、アエラ、アサヒ・コムといった朝日新聞のグループメディアを共通テーマの下に活用。
ソニーが伝えたいことと、その媒体の読者が読みたいことの接点を探し、それぞれ充実したコンテンツが完成している。雑誌媒体にはDI事業本部の石塚茂樹事業本部長が登場。クールなイメージで語られることの多いソニーを、人間の顔が見える熱い技術者集団として強く印象づけた。
「『Creator's DNA』という発信は、まだスタートしたばかり。読者との接点を有効な形で増やすことが必要でした。デジタル一眼の“α ”について、より詳しく知りたいカメラ愛好家の方にはアサヒカメラで。技術者の顔が見える、より読み応えのある記事を求める方にはアエラで。朝日新聞の様々な媒体を生かしたクロスメディア展開によって、情報にさまざまな深さと、幅が生まれたと思います」(長島氏)
長期的な展開を計画している「Creator's DNA」の大きな目標は、販売を伸ばすことだけでなく、ソニーの技術に対する信頼を根幹から再構築することだという
「例えば、記事を読んだ読者の方が、ソニーは『カメラも作っている会社』ではなくて、『カメラを作っている会社』なんだと思っていただけたら、我々の情熱が届いたということです」
デジタルイメージング事業に対するソニーの本気を伝えることを最大のミッションに、これからもしっかりとコミュニケーションを積み上げていきたいと長島氏は語った。
アサヒ・コム