介護付高齢者住宅「ヒルデモア」が新コンセプトの物件を開設

読者に訴えかけるコピーで新しい老いの迎え方を提案

 首都圏を中心に10カ所で介護付高齢者住宅「ヒルデモア」「ヒュッテ」を立ち上げてきた東京海上日動サミュエルが、新たなコンセプトを持ったシニア住宅「ヒルデモア岡本」「ヒルデモアたまプラーザ・ビレッジⅢ」を今年2月、3月にオープンさせる。昨年11月22日と12月5日に、朝日新聞朝刊で全15段の広告を掲載した。

 碓田茂氏 碓田茂氏

 どちらも、紙面スペースのほとんどを落ち着いた配色のコピーが占め、物件情報は下部に小さくまとめるにとどめている構成が特徴的だ。経緯とねらいについて、同社取締役社長の碓田茂氏は次のように語る。

 「新聞広告の目的は、社会にむけてメッセージを発信し、企業イメージを打ち出すことにあると考えています。2004年に新聞でシリーズ広告を掲載したときも、『人生は、冬ではなく、春で終わりたい。』などのコピーを中心としたビジュアルでした。そのときから広告全体のディレクションをお願いしているコピーライターの岩崎俊一さんと一緒に、我々の思いや物件の特徴をどう伝えるかを練った結果、わかりやすいコピーと文章を中心にした構成になりました」

安心ある家への「早めの引っ越し」

 これまで同社は、デンマークの介護住宅を参考に、自立と個性を尊重した介護を主体にした高齢者住宅を展開してきた。入居者の平均年齢は82~83歳だという。しかし新しい物件は、“前期高齢者”を初めてターゲットにしている。コピーに「60歳を過ぎたら」とあるのはそのためだ。

 「健康な人が病気になったり突然倒れたりすると、人生の活断層に出合ったように感じ、どうしていいかわからなくなりがちです。自分で何でもできる元気なときこそ、そうでなくなったときのことを考えておきましょうという、これまでになかった積極的な老いの迎え方の提案、新たな住宅の形を具現化しました」と碓田氏は説明する。

 一般的な前期高齢者にむけた住宅はホテルのようなサービスや豪華なしつらえを提供するところが多いが、「ヒルデモア」の新2物件では、不自由のないときから入居し快適に暮らせる一方で、万一の場合もそのまま生活を大きく変えず安心して住まうことができるよう、介護のある暮らしをあらかじめ考えた間取りを重視している。

 「居室は約50平米。いわゆる健常型の物件と比較すると若干狭く感じられるかもしれませんが、北欧でも近年は、介護が必要となった場合は45~50平米が一番適しているとされています。そのほか、要介護となってもスムーズに介助できるような工夫、車いすでも動きやすいような配慮を施した間取りとなっています。個室空間が充実していながらも、一歩部屋を出るとパブリックスペースで隣人や世間ともつながれるような構造にしました。安心できる、日本のぬくもりを思い出す家を目指しています」(同氏)

まずは読者に物件を知ってほしい

 広告紙面では、こうした新物件のコンセプトをいろいろな角度からわかりやすく伝えることに苦心したという。結果的に、読者が読み進めるごとに納得するようなコピーで訴求した。

 掲載当日から問い合わせの電話が寄せられ、ホームページのアクセス数もアップするなど、期待通りの反響があった。ただ、「気軽にはできない大きな買い物ですから、新聞広告が必ずしもすぐに販売につながらなくてもいい。まずは読者に存在を知ってもらって、家族が集まったときに話題にのぼるきっかけになればと思っています」と碓田氏は今後への期待を語る。

 一方で、こうした高齢者のための住まいにかかる費用は大きいもの。一部の人だけしか手に入れられないものと思われがちだが、碓田氏は、生命保険を利用した新しい方式を考案し、その実現に奔走している。

 「現在の会社の前身であるサミュエルを立ち上げたときにも、自己責任で完結できる暮らし、国や政府に頼るのではなく個人個人が責任をもって行動することが幸せにつながっていくライフスタイルの提案をしたいと思っていました。高齢者住宅も、生命保険と結びつけることで、いま以上に広い層にとって身近なものになります。これからは、大手保険会社のグループであることをいかして、生命保険加入者のベネフィットのひとつとしてこのヒルデモアに入居するという選択肢をつくっていきたいです」と碓田氏は結んだ。

 2007年11月22日付 朝刊
 2007年12月5日付 朝刊