「機能性表示食品」 制度を活用して差異化を打ち出す
雪印メグミルクの「恵 megumi ガセリ菌SP株ヨーグルト」は、同社が保有する独自の乳酸菌「ガセリ菌SP株」が入ったヨーグルト。2015年8月に機能性表示食品としてパッケージのリニューアルを図り、「内臓脂肪を減らす」機能をうたっている。売れ行きは好調で、機能性ヨーグルト市場を先導する商品として注目を集めている。
同社では「ガセリ菌SP株」には内臓脂肪の低減機能があることを以前から科学的に確認していた。だが、「機能性表示食品」制度が始まるまでは、薬機法などのルールによりパッケージや広告などで「内臓脂肪を減らす」という文言は使用できなかったため、商品の差異化ポイントを明確に伝えることができず、売り上げは低迷していたという。
「機能性表示食品」制度は、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠をそろえて消費者庁に届け出て、事業者の責任で機能性を表示できる新制度。特定保健用食品のような行政による事前審査がなく、届け出が受理されれば販売できる。
雪印メグミルクでは、「機能性表示食品」制度が始まると、「恵 megumi ガセリ菌SP株」シリーズの届け出を完了し、パッケージデザインを刷新。「内臓脂肪を減らす」という文言をパッケージや広告に表示できるようになり、15年8月末から順次リニューアルして発売したところ、瞬く間に売り上げが伸びたという。
「ドリンクタイプは、リニューアル前の15年7月と現在を比べると出荷数量は約8倍。右肩上がりで伸び続けています」と話すのは、雪印メグミルク市乳事業部発酵乳・デザートグループの相沢利規氏。リニューアル前との比較では、ガセリ菌SP株の含有量も10億のまま変えておらず、機能も価格も同じ。変えたことは、コミュニケーションの方法だという。パッケージをはじめ、テレビCMや新聞広告などでも「内臓脂肪を減らす」という機能をダイレクトに伝えられるようになったことが奏功した。
雪印メグミルクは、約3千種類の乳酸菌を保有している。その中で日本人のおなかから発見されたヒト由来の二つの乳酸菌を選んでいるという。それが、ガセリ菌SP株とビフィズス菌SP株だ。同社では、ガセリ菌SP株とビフィズス菌SP株のどちらか、または両方入っているヨーグルトを「恵 megumiブランド」と定義しており、最初に発売したのは、ガセリ菌SP株とビフィズス菌SP株の両方が入ったヨーグルト「ナチュレ恵 megumi」シリーズ。400グラム入りのプレーンヨーグルトは、特定保健用食品で腸内環境の改善が認められている。その後、ガセリ菌SP株に特化した「恵 megumi ガセリ菌SP株」シリーズを発売。同シリーズは、ハードタイプとドリンクタイプのほか、アロエ入りと豆乳仕立ての4種類ある。また、宅配専用の「恵 megumi ガセリ菌SP株ヨーグルト」も機能性表示食品として届け出が完了すると、カップ入りとドリンクタイプの2種類を16年8月から販売を開始した。「味のバリエーションについては、流通の現場やお客様からの要望が多い。今後、増やしていくことも検討していきます」
ターゲットも販売チャネルも拡大 機能性ヨーグルト市場を先導
「内臓脂肪を減らす」という機能を実感するためには、一定期間、毎日継続して食べる必要があるという。そのためにも、いつでもどこでも買えるように販売チャネルも拡大している。スーパーだけでなく、CVSやドラッグストア、生協など「オールチャネルで展開しており、どこも平均的に売れています。宅配専用の商品の売り上げも伸びており、まとめ買いができるネット通販でも今後拡大していくとみています」と相沢氏。特にコンビニでの販売が定着してから、男性ユーザーが増えてきた実感があるという。「ヨーグルトを最も購入している層は、中高年の女性というのが定説です。ただ、機能性表示食品となってからは、30代から40代の男性サラリーマンや40代以下の女性などにも支持されるようになり、オールターゲットになりつつある」
購買層の広がりは「内臓脂肪を減らす」というメッセージの捉え方が、人それぞれ異なるからではないか、と指摘する。「内臓脂肪を減らしたい理由は、生活習慣病の予防や体形維持、ダイエットなど人によって違うはずです。もともと健康食としてのイメージが強いヨーグルトで内臓脂肪を減らすという機能は、一見すると一致しない。だからこそ興味関心を引くことができるのだと思います」。ヨーグルトは食品なので安心感もある。継続して摂取することで違いを実感する人が多いことも支持される理由のようだ。
広告にも力をいれている。テレビCMには「恵 megumiブランド」のキャラクターを務める、俳優の向井 理氏を起用し「内臓脂肪を減らす」というメッセージを発信。新聞広告も期間を決めて継続して出稿している。朝日新聞朝刊には、天声人語横のスペースに小型広告で展開。16年10~11月、17年1月に毎週1回というペースで掲載した。
「毎日、必ず目を通す場所なので、広告効果は高いと判断しています。1月や3月など気持ちが切り替わる時期は、特に健康への関心が高まる傾向があることが分かっています。今後は季節に合わせた展開なども検討していきたい」
最後に、今後の展開について相沢氏は、次のように語る。
「売れ行きは好調ですが、商品の認知も機能理解も、まだまだ不十分。商品を露出し、売り場の棚を獲得することで、まだまだ数字は伸びると見込んでいます。指名買いを増やすためにも、生活習慣病と内臓脂肪の関係や、なぜ内臓脂肪が増えると良くないのか、といった啓発活動にも力をいれていきたい。そのためには、マス広告だけでなくターゲットを絞ったマーケティングも必要だと考えています」