一人ひとりを見つめながらーーCSR活動への思いと姿勢を独自のキャンペーンで訴求

 NTTドコモは、自社が手がける様々なCSR活動を「ForONEs」と銘打ったキャンペーンとして展開している。NTTドコモ プロモーション部Web担当の後藤真紀氏、同部戦略担当の猪嶋李佳氏に、これまでの取り組みや反響などについて聞いた。

記事として読んでもらいCSRの取り組みや事業サービスの理解を促す

 「多くの企業がCSR活動に取り組む中、お客様からすればどうしても同じように見えてしまいがちです。そんな中、NTTドコモは活動一つひとつに対して一人ひとりを見つめながら取り組んでいる、という思いや姿勢を前面に出し、ドコモならではの形で伝えたいと考えました。そして、『ForONEs ー世界は、ひとりの複数形でできているー』というコンセプトのもと、様々なプロモーションをスタートさせたのです」

後藤真紀氏

 後藤氏はキャンペーンの背景についてそう説明する。

 「ForONEs」のサイトで、「○人に1人は」というキャッチコピーを用意して、同社が手がけるCSR事業をわかりやすく訴求している。たとえば、「この国を旅する8人に1人は、外国人です」として、同社の「はなして翻訳」「てがき翻訳」サービスを、「この国の成人の2人に1人は、もう一度学び直したいと思っています」のコピーでオンライン学習サービス「gacco(ガッコ)」を紹介するといった具合だ。確かに、多くの企業が手がけるCSRリポートなどとは一線を画すコミュニケーションだ。

 このウェブサイトに加え、CSRの取り組みをまとめた冊子「コミュニケーションブック」も作成。新聞、テレビ、雑誌といったマスメディアも使ってコミュニケーションを展開している。

2016年12月20日付 朝刊2.3MB

 2016年12月20日付朝日新聞朝刊には、「企業価値を高めるダイバーシティー 働き方改革が企業を成長させる」という見出しの記事体裁の広告特集を出稿した。同月12日に行われた「CHANGE Working Styleシンポジウムー働き方を変えるー」(主催・朝日新聞社)で同社の吉澤和弘社長が自社の働き方改革について講演したことを受け、女性キャリア開発支援など、現在推進中のダイバーシティーに関する取り組みを、図表も用いてわかりやすく紹介した。

 「当社では社会的関心の高いダイバーシティーや働き方改革についてもCSR活動の一環として取り組んでいますが、あくまでも社内における社員を対象とした施策です。純広告だと、一般の読者にはともすれば他人事として捉えられる可能性がある。当社の考えや具体的な制度についてより広く訴求し、働き方に関する話題として共感を得るためには、読み物である記事体裁の方が適していると考えました」(後藤氏)

 その思いとねらいはきちんと届いたようだ。「『読んで理解が深まった』『働き方に向き合っていることがわかって、ドコモの印象が変わった』など、読者の方から好意的な反響がありました」(猪嶋氏)

 2017年3月8日付朝日新聞朝刊には、「ForONEs」のキャンペーン広告を掲載。「この国の青少年の3人に1人は、ネットで悩んだ経験があります。」のキャッチコピーとともに、インターネットに潜む危険や、ルールやマナーの大切さを伝えることを目的に、全国で開催している「スマホ・ケータイ安全教室」と、青少年を違法・有害情報から守るフィルタリングサービスを紹介した。3月にキャリア各社が提供するフィルタリングサービスが「あんしんフィルター」という名称に統一されたこと、新年度を前にスマートフォンや携帯電話を子どもたちに持たせることを検討する人が増えることもあり、このタイミングを選んだという。

2017年3月8日付 朝刊2.0MB

「さじ加減」を探りながら最適なコミュニケーションを掲げる

 さらに、対向面には記事体裁の広告特集を載せた。朝日新聞には社会問題や教育に関心のある読者が多いため、その読者層にふさわしい内容をと、専門家が「スマホ社会に必要な情報リテラシー」について解説した。

 「子どもたちのスマホ利用の現状や巻き込まれやすいトラブルやリスク、現場での取り組みについてなど、わかりやすくまとまっているのはもちろん、子どもたちをトラブルから守るためのチェックリストもあり、実践的な情報を届けることができました」と後藤氏。さらにこう評価した。

 「純広告だけでなく、専門家が第三者的な視点に立った解説がセットになっていたからこそ、相乗効果でドコモの取り組みや思いがきちんと伝わった。そう捉えています。朝日新聞社ならではのネットワーク力、企画力や編集力を実感できたクリエーティブ、コミュニケーションでした」

猪嶋李佳氏

 猪嶋氏によれば、「掲載後の調査では、『記事と広告の組み合わせが新鮮だった』『社会問題にもなっているスマホに関するトラブルやリスクに対し、企業としてきちんと取り組んでいる姿勢に共感できた』など、非常にポジティブな声が多かった」という。

 「ForONEs」は、今年度も引き続き取り組みを進めている。

 「全体のコンセプトはそのままに、新しい活動を紹介しながらリニューアルしていく予定です。また、昨年度まではインフルエンサーがメインターゲットでしたが、今年度は、社会課題に興味がありながらも具体的にはまだ行動を起こしていない人や、これからやってみたいという層にまで広げていきたい」と猪嶋氏は意欲を見せる。

 CSRのコミュニケーションゆえの難しさ、課題もある。猪嶋氏はこれからの展望も含めこう語った。

 「社会課題にアプローチする商材は社内にたくさんありますが、それがCSR活動として紹介すべきなのかという判断は難しい。また、PR色が強くなりすぎると消費者は引いてしまうでしょうし、逆に弱すぎると社会課題についてドコモが傍観者のようにただ意見を述べているような印象になってしまう。その判断、表現のニュアンスやさじ加減を探りながら、より広い層に当社の思いや取り組みを届けられるよう、メディア選択やタイミングを見据えて取り組んでいく考えです」

3つのポイント

新聞社に期待したこと
様々なメディアでコミュニケーションする中で、しっかりと読み込める新聞は、認知や理解促進を深められると考えた。読んで興味を持ってもらえれば「ウェブで」という、ウェブへの誘導もできる。段階的なコミュニケーションに、新聞の果たせる役割があると捉えている。

朝日新聞のイメージ
社会問題や教育に関心があり、情報やメディアリテラシーの高い読者が多いと考えている。CSRというテーマからビジネスパーソンを対象としたコミュニケーションに力を入れてきたが、朝日新聞に出稿したことでさらに広い層にメッセージを届けることができた。

コミュニケーション上の課題・注目している手法
今年度からさらにターゲットを広げていくことを検討する中で、これまでとは違うメディアでの展開、たとえば自社サイトではないネットメディアなどを活用したコミュニケーションも視野に入れていく考えだ。