お客様が自ら広告に接触したくなる“エンタメ性”を演出 若年層を動かす

 この夏、『じゃらん』はタレントを起用し、テレビCMを放映した。それとともに「じゃらんの夏旅」を訴求するクロスメディアプロモーションの一環として、朝日新聞のパノラマ6の別刷り広告特集を活用した「じゃらん×乃木坂46新聞」を制作。コンビニエンスストアにあるリクルート専用ラックに設置してファンの能動的な行動を喚起し、情報番組やSNS上でも大きな話題を呼んだ。

パノラマ6の別刷り広告特集

「じゃらん×乃木坂46新聞」を専用ラックに設置し、コレクター心を刺激

 7月10日、ツイッター上に「これ、どこで手に入るの?」「あの店舗にあのメンバーの号外があった!」「4種類コンプリート!」という乃木坂46ファンの声があふれた。

 それは、国内旅行向け雑誌『じゃらん』と、人気アイドルグループ乃木坂46がコラボした「じゃらん×乃木坂46新聞」。乃木坂46の人気主要メンバー4人のほぼ等身大グラビアがプリントされた、パノラマ6・ブランケット判(15段)6ページの別刷り広告特集だった。

 配布エリアは地下鉄乃木坂駅半径5kmの、コンビニエンスストア500店舗に限定。リクルートグループ専用のフリーペーパーラックに、各店舗40部ずつ設置した。ほぼ等身大ポスターはメンバーごとに4パターン制作し、店舗によって異なるメンバーのものを置いた。直接来店して手に取ってもらうというこれまでにないスタイルがファン心理をくすぐり、計2万部を配りきった。

新井智惠氏

 この企画の目的は普段『じゃらん』との接触が少ない若年層にアプローチし、新たなお客様を獲得すること。部数やエリアを限定してプレミアム感を演出し、PR効果を狙おうと考えた。リクルートライフスタイル 企画統括室 編集統括部 コンテンツマーケティンググループの新井智惠氏は、こう明かす。

 「年々、旅行マーケット全体の宿泊旅行実施率(旅行へ行く回数)が下がってきており、特に若年層は顕著です。旅行サービスの新規参入が相次ぎ、業界内の競争も激化した。こうした背景の中、いつもと違う切り口でじゃらんに興味を持ってもらいたいと考えました」

 パノラマ6の広告特集をコンビニラックに置くというやり方で展開したのは、「実物を手に入れたい、手元において飾りたいという欲求を刺激し、コンテンツを読み込んでもらいたかったからです。当社で制作するミニ雑誌にしなかったのは、伝えたいことを第三者の視点で伝えるため。広告主が直接コミュニケーションするより、朝日新聞という媒体を通した方が読者にフラットにとらえてもらえると考えました」(新井氏)

 コンビニエンスストアに設置されているラックには、リクルートコミュニケーションズの流通開拓ノウハウが凝縮されている。ここは普段、リクルートが発行するフリーペーパーが設置されている。リクルートコミュニケーションズ マーケティング局 コミュニケーションデザイン部 ブランド推進グループ マネジャーの細貝智博氏は、次のように力をこめた。

 「当グループの強みであるラックを活用することで、広告をコンビニエンスストアに置くという『媒体社×流通×商品・サービス』を掛け合わせた新たな取り組みにチャレンジできました。ウェブとは異なり、手に取ることが出来るリアルな媒体という新聞ならではの特性を生かしたクリエーティブを追求し、それを無料でラックに置いたからこそ、お客様が能動的に広告に接触しにいくエンターテインメント性の高いキャンペーンにまで昇華できました。朝日新聞と一緒に、新しいプロモーションメディアを開発したような感覚です」

 コンビニエンスストアチェーンの通販サイトでは、『じゃらん』9月号の購入予約特典としてパノラマ6を封入。直接店舗へ行けない全国のファンも手厚くフォローした。

SNS映えするスポットを提案、前日の告知で瞬く間に拡散

細貝智博氏

 パノラマ6の紙面では『関東・東北じゃらん』編集長がプロの視点から夏旅のトレンドや楽しみ方を解説・提案。「クチコミ信頼度No.1」というじゃらんの強みを大きく訴求しながら、宿泊予約以外のサービスもアピールした。

 「近年、旅の楽しみ方が多様化しており、SNSで旅先を選ぶ方たちが増えています。いわゆるSNS映えを狙った、ナイトプールやナイトバーベキューなどこの夏トレンドのナイトアクティビティを紹介。若年層にアプローチするにあたって、旅のプロがアドバイスするという語り口で入りやすくしながら、若年層と親和性の高いSNSでシェアできるフォトジェニックなスポットを提案することを意識しました」(新井氏)

 配布前日の7月9日18時に、じゃらんの公式ツイッターアカウントで告知情報を発信すると、ファンを起点に瞬く間に拡散した。翌朝、テレビの情報番組でも取り上げられたのをきっかけにさらに話題が広がった。

 ツイッター上では「壁に飾った」「4種類コンプリートして、写真を撮った」「ファンのことわかってる!」などのポジティブな投稿が相次いだ。「この新聞を見て旅行に行きたくなった」「次の乃木坂46のツアーは、『じゃらん』で宿泊予約します」といった利用・行動につながるツイートも多数見受けられた。

 「狭いエリア限定の施策にもかかわらず、この新聞を認知している方、接した方のアクション率が、他の施策に比べて高かったことに驚きました。利用意向も圧倒的に高かかった。若年層が初めて旅行を予約する時にすばやくリーチし、じゃらんを好きになってもらう。そしてロイヤルユーザーになっていただく。その理想的な形を実現できたと感じています」(新井氏)

【3つのポイント】

新聞社に期待したこと
コンテンツ制作力。通常の広告では成し得ないクオリティーの高いクリエーティブとなったのは、新聞社の持つノウハウを活用できたおかげだと考えている。

朝日新聞のイメージ
圧倒的なメジャー感と信頼感がある。広告主が直に発信するより、朝日新聞という題字のもとで伝えると信頼性が高まり、浸透しやすい。

コミュニケーション上の課題・注目している手法
旅行市場が縮小傾向のなか、いかに若年層にアプローチし、旅行の楽しさに開眼してもらうか。SNSを使ってリアルとデジタルを接続する方法を模索している。あらゆるメディアを組み合わせることによって、プロモーションの大きなうねりを生みだしたい。