創業100周年を社会貢献考える好機に 「なめらか」をキーワードに一般認知の向上図る

 軸受け(ベアリング)を主力商品として、グローバルに事業を展開する精密機器メーカー「NTN」は、2018年3月1日に創業100周年を迎える。2017年春からは「な(N)んて(T)な(N)めらか」をキャッチコピーにコミュニケーション活動を展開。朝日新聞朝刊に掲載された全15段の広告をはじめ、社会・ステークホルダーに向けて、これからの100年を見据えたメッセージを広く発信している。

プロジェクトチームで徹底的に議論

 あらゆる回転部を支え、機械の摩擦を減らし、エネルギーを無駄なく使うために欠かせないベアリング。NTNは、自動車のタイヤの円滑な回転を支えるハブベアリングで世界シェア第1位、エンジンの駆動力をタイヤに伝達するドライブシャフトで世界シェア第2位を誇るなど、高い技術と品質で業界をリードし、自動車、建設機械、風力発電、航空・宇宙、鉄道をはじめ、多くの産業に用いられて人々の暮らしを支えている。

 創業100周年事業推進プロジェクトリーダーの井口耕平氏は「100周年は長年培ってきたトライボロジー技術(潤滑や摩擦、摩耗に関する技術)をさらに追求し、循環型社会に向けて今後拡大する自然エネルギーなどの新事業領域を広く知っていただく絶好のチャンスにしたいと考えました」と語る。

NTN井口耕平氏 創業100周年事業推進プロジェクト
プロジェクトリーダー
井口耕平氏

 同社は中期経営計画において、2015年4月~2018年3月の3年間を、次の100年も持続的に成長するための「あるべき姿」に向けた「変革」とその礎づくりの期間に設定。2015年10月には、井口氏らが加わるプロジェクトチームを立ち上げた。社会にどのように受容され、どんな貢献を果たしていくかの議論をゼロから重ねるうち、浮かび上がった課題が社会における同社の認知度の低さ。井口氏は「あるマーケティング調査では、認知率は一般層で約20%、ビジネス層でも約40%。同じ調査で、当社と同じようなBtoB企業でも一般層に80%以上も認知があったメーカーもあり、次の100年の原動力となる新領域の開拓と従業員の士気を上げるためにも、一般層の認知度を2倍の40%に上げることを目標にコミュニケーション活動に取り組むことにしました」

 一般層の8割に知られていない中、どんなメッセージを発信すれば良いのか。試行錯誤を経てたどり着いたのが「これからの100年の社会のためにNTNができること」を考えるという原点だった。井口氏は「私たちが培ってきたベアリングの技術は、摩擦を減らし、省エネルギーに役立つ『エコ商品』です。機械を『なめらか』に動かすことは、社会や暮らしを『なめらか』にすることにつながるのではないか。その思いを皆が共有した時に社名の頭文字を結びつけた『な(N)んて(T)な(N)めらか』のキャッチコピーが生まれました。『新しい技術の創造と新商品の開発を通じて国際社会に貢献する』との企業理念も、優しい語感の中に盛り込むことができたと感じています」と明かす。

採用活動ふくめ社内外に効果

 2017年4月からは創業100周年のイメージキャラクターに、女優の多部未華子さんを起用。ヨーロッパをイメージした街角で、オルゴール人形に見とれる多部さんが「なんてなめらか」とつぶやくテレビCMは話題を呼び、4月17日には全15段の広告を朝日新聞朝刊に掲載した。「なん(N)て(T)な(N)めらか」「あ、気付きましたね。ベアリングの仕事に。」のコピーとともに、ボールベアリングの写真を載せて日常生活の中での出会いを訴求。ビジュアルでは多部さんの顔をクローズアップし、親しみやすさの中にも、「目力」に満ちた力強い表情でインパクトを持たせた。6月19日にはドライブ編、8月24日と10月25日には環境編を続け、持続可能な社会づくりに貢献していることについて、段階を追って伝えた。

2017年4月17日付 朝刊2.4MB

2017年6月19日付 朝刊1.7MB

2017年8月24日付 朝刊2.1MB

2017年10月25日付 朝刊2.0MB

 新聞広告は「信頼性が高く、自社のブランド価値を高めてくれます。テレビCMで印象を持ってもらい、伝えきれない情報は新聞でお届けすることができたと感じています」と語る。一般紙での広告展開は「これからは企業も社会的な存在として、一般にメッセージを発信していく必要性があります。朝日新聞は教育や環境に力を入れているイメージが強く、当社の企業姿勢を知っていただくには最適なメディアの一つです」と明かす。

 営業担当が取引先を訪問した時、話題になったり、採用活動の学生たちの関心度が明らかに上がったりするなどの効果が出ており、社内から「家庭で会社のことが話題にのぼるようになった」「子どもが学校の友達に自慢できた」などの声が寄せられているという。

 創業100周年の社会貢献事業では自転車レース「ツアー・オブ・ジャパン」に冠協賛し、自然エネルギーについて楽しみながら考える「NTN回る学校」を各地で開催した。さらに10月に東京で開かれた「朝日地球会議2017」(主催:朝日新聞社)に特別協賛。ハイブリッド街路灯、マイクロ水車、垂直軸風車などの取り組みを紹介して、「地産地消エネルギー」について識者らと議論を深めた。

 「100周年事業を通して、当社が創業以来受け継いできた開拓者精神と共存共栄精神の大切さを改めて確認できました。これからも取り組みを継続。『世界をなめらかにする仕事。』を追求していきたい」と井口氏は結んだ。