金や銀のエンゼルを集めて応募すると「おもちゃのカンヅメ」がもらえる。そんなキャンペーンで発売以来、多くのファンに愛されてきた森永製菓の「チョコボール」。この国民的お菓子が、かわいらしい「キョロちゃん」のキャラクターとともに、2017年で50周年を迎えた。そこで、50周年を記念した商品や新「おもちゃのカンヅメ」を発表し、キャンペーンを展開した。
歴代の「おもちゃのカンヅメ」や「キョロちゃん」が一堂に
「チョコボール」が誕生したのは1967年。同社は50周年を記念して、2017年3月、商品に50周年マークをつけた。7月には金箔(きんぱく)付き「チョコボール」が入っていたり、一粒を通常の50倍の大きさにした「チョコボール」を期間限定で発売。「おもちゃのカンヅメ」は、くちばしをなでるとしゃべる「金色のキョロちゃん缶」にリニューアル。タレントを起用したテレビCMも話題となった。11月から金のエンゼルの量を期間限定で2倍にし、大チャンス企画も実施している。
「キョロちゃんの日」である9月6日には、「チョコボール」「おもちゃのカンヅメ」「キョロちゃん」の50年の歴史を、すごろくで紹介する全30段の新聞広告を朝日新聞に掲載した。
2017年9月6日付 朝刊2.0MB
「これまでも『チョコボール』や、『おもちゃのカンヅメ』の歴史に関心をもつ方は多くいました。また『チョコボール』は、今では子どもの頃に食べていた方が親や祖父母となり、3世代に愛されています。そんな幅広い世代に、『チョコボール』への愛着をさらに深めてもらいたい。そのような思いから、『チョコボール』の歴史が一目で伝わり、みんなで遊べるすごろくにしようとの案が生まれました」と、森永製菓菓子食品マーケティング部の野条理恵氏は語る。
同社は2016年、ドラえもんとのコラボで「ハイチュウ」40年の歴史を紹介する全30段広告を朝日新聞に掲載し、社内外から非常に良い反響を得ていた。そのため新聞全30段を使って「チョコボール」の歴史を紹介する企画はイメージしやすかった。しかしこれまで提供してきた「おもちゃのカンヅメ」は約40缶、「チョコボール」は約70種類もあるので、そこから何を載せるかのセレクトは難しかったという。
「出したいものがいっぱいあったので、かなり悩みましたね。50年の変化がうまく伝わり、コメントをつけやすいものを中心に、なんとか紙面に収まるよう絞りこみました」
それでもこの紙面を見た人は、「チョコボール」のバリエーションの多さ、趣向をこらした歴代の「おもちゃのカンヅメ」の数々に驚いたことだろう。
「おかげさまでキョロちゃんのかわいさが引き立つ、とても楽しい紙面になりました。この紙面は保存していただき、お孫さんが来たときなどに一緒に遊んでもらいたいと思いました。インパクトある紙面だけに、掲載日にはSNSでも話題となり、多くの人に遊んでもらえたようです。なかにはすごろくのゲーム性をもっと要望される方もいて、それだけ真剣に遊んでもらえたのだと感謝しています」
家族で何度も遊んでもらえるこの紙面は、広告としての接触時間は非常に長いものとなる。またすごろくをしながら笑ったり、興奮したり、発見をしたり。そんな体験は、「チョコボール」への深い愛着につながったことだろう。
この企画は社内でも好評で、社員にとっても大きなメリットがあったという。 「ホームページで過去の商品や歴史は紹介しています。しかし、これだけたくさんの商品がひとつのビジュアルで、コンパクトにまとまったかたちで世に出ることはありません。営業担当からは『豆知識として使える』『商談に役立つ』と大変喜ばれました」
インパクトある大きな紙面で、体験を提供できる新聞メディア
「チョコボール」には中高年の男性ファンも多い。子どもの頃、「おもちゃのカンヅメ」に憧れていた人が、大人になってコレクションしたり、それをSNSで投稿したりしている。歴代の「おもちゃのカンヅメ」を紹介するまとめサイトもあるほどだ。そのような背景もあり、最近の「おもちゃのカンヅメ」は、謎解きを楽しめるものなど、大人も楽しめる要素が盛り込まれている。
「『チョコボール』が誕生した時代は、子ども向けのチョコレートなどなかったので、丸い子ども向けのチョコレートはそれだけで話題になりました。また子どもが自分の小遣いでおもちゃを自由に買えなかった時代に、エンゼルを集めて応募するとおもちゃがもらえるキャンペーンは画期的なものでした」
しかし現在では、子どもにとってチョコレートは特別なものではなくなった上に、たくさんのおもちゃに囲まれて暮らしている。そこで今は、ターゲットを子どもだけに絞らず、幅広い層へのアプローチを目指しているという。
「幅広い層にメッセージをきちんと伝える上では、新聞は効果的です。最近はデジタルメディアも注目されていますが、紙面をぱっと広げたときのインパクトで強い印象を与えたり、すごろくのような体験を提供できたりすることは、新聞というアナログ媒体ならではの良さだと思います」
もちろん、価値観やライフスタイルが多様化した現代では、様々なアプローチで消費者との接点をもつ必要がある。より戦略的に運用することが重要だ。
「『チョコボール』はどちらかというとアナログメディアとの親和性があると感じていますが、古いものだと思われないような施策も必要です。訴求したい内容に合わせて、アナログとデジタルのメディアを上手く組み合わせていくことが大事だと思います。おかげさまで50周年の取組みはとてもうまくいきました。今後も国民的お菓子として、幅広い層から愛され続けるよう、お菓子の開発と効果的なキャンペーンを継続していきたいと考えています」と野条氏は締めくくった。
【3つのポイント】
◆新聞社に期待したこと
記者が丁寧に取材をし、裏付けをとっている新聞記事は、メディアとしての信頼性が高い。そんな新聞だからこそ、広告にも信頼感を持ってもらえます。新聞社には、今後もメディアとしての信頼性を何より大切にしてほしいと思っています。
◆朝日新聞のイメージ
朝日新聞に対しては、バラエティに富み、幅広い層に読まれている新聞といったイメージを持っています。また今回の企画のように、ビジュアルのインパクトが強い広告企画も多いので、紙面全体から楽しい印象を受けています。
◆コミュニケーション上の課題
消費者との接点を増やすためにも、SNSなど新しいものには積極的にチャレンジしたいと考えています。一方で消費者との直接的なコミュニケーションは、わずかなミスがとりかえしのつかないことになる怖さもあります。どう見極め、判断するが課題です。