キリングループは、サッカー日本代表を特集した1月1日付朝日新聞朝刊の新年別刷り第5部に、広告を掲載した。新年別刷り第5部は、新聞8ページ分に相当する「パノラマワイド」という特別仕様。広告は、キリンがサッカー日本代表を応援してきた40年間の歴史や、これからもファンやサポーターと共に応援していくというメッセージを、キリンビールのフラッグシップであるビール「一番搾り」のブランド訴求と併せて発信した。
2018年1月1日付 朝刊別刷り第5部 中面1.1MB
メモリアルイヤーを盛り上げる元日の新聞広告
キリングループは、今から40年前の1978年からサッカー日本代表を応援し続けてきた。FIFA公認の国際Aマッチ「キリンカップサッカー」や「キリンチャレンジカップ」に特別協賛。2015年4月からはサッカー日本代表オフィシャルパートナーとなり、SAMURAI BLUE(日本代表)、なでしこジャパン(日本女子代表)やU-23以下各年代の日本代表、フットサル、ビーチサッカーなど、全カテゴリーのサッカー日本代表をファンやサポーターと一緒に応援している。
2018年は、キリングループが日本代表を応援するようになって40年という節目の年。サッカー日本代表は、FIFAワールドカップ(W杯、以下同)に初めて出場してから20年という記念の年であり、6月にはW杯ロシア大会が開催される。この3つが偶然重なったサッカーのメモリアルイヤーを盛り上げようと、2018年元日に日本代表を特集した新年別刷り第5部に広告を掲載した。
「40周年という記念の年に、今まで以上にインパクトがあって面白いことができないかを、2017年9月頃から同じサッカー日本代表のサポーティングカンパニーである朝日新聞の営業さんに相談していました。その後、サッカー日本代表を特集する別刷りがパノラマワイドという特別仕様で元日に発行され、そこに広告枠があることも知りました。きっと今までにない新しいものになると思いました」
キリン ブランド戦略部主務の泉伸也氏は出稿の狙いをそう説明する。
キリンビールは2016年10月に、「一番搾り 熊本づくり」の全国販売にあわせて、新聞6ページ分に相当する「パノラマ6」という別刷り広告を発行した。そのとき新聞が配布された直後からSNS上で情報が拡散され、大きな話題となった。また、W杯出場を決めた翌日の2017年9月1日付朝日新聞朝刊では試合結果と連動した「状況対応型」の広告を掲載。キリングループがファンやサポーターと、一丸となって日本代表を応援していることを発信した。「サッカーを応援する」ことと「商品の魅力を伝える」という2つの目的を「新・一番搾りで乾杯!」というメッセージで結びつけることに成功し、40周年を記念した今回の広告もこの流れをくんでいる。ポイントは、キリングループ内の垣根を越えた連携だという。キリンビール マーケティング部 メディアグループリーダー 主務の波多野潤氏は、次のように説明する。
「2017年9月に掲載した広告で、キリンのサッカー担当者である泉とキリンビールのブランド担当者である私が連携して、初めてサッカーとブランド訴求を一体化させた新しい広告をつくりました。今回の40周年の広告は、その成功体験が基になっています。キリンビールにとって、『一番搾り』は営業の柱。サッカー日本代表のオフィシャルパートナーという資産や優位性をブランド訴求にも生かすために、サッカー日本代表といえばキリン、キリンといえば『一番搾り』とストレートに打ち出しています」
サッカーを通じて人を応援する
パノラマワイドは、新聞4ページを横につなげる4連版で表裏8ページ。計120段というボリュームだ。観音開きにすることで、横長のサイズを最大限に活用している。
広告は、キリングループのみのマルチ広告で展開した。広告スペースは、フロント面の下3段と中面下5段の4連版、最終面の全15段の3カ所。中面下5段の4連版の広告は、キリングループが日本代表を応援してきた変遷が年表になっている。
「パノラマワイドの紙面は、想像していた以上にインパクトがありました。新聞だからこそ実現できるサイズです。大きな紙面をダイナミックに使った編集記事は保存しておきたくなる内容で、キリンの広告もうまくマッチできたと思っています。社内でも好評で『記念に欲しい』『お客様に渡したい』という声がありました。全国の営業所に送付して、得意先にもお配りしています」(波多野氏)
クリエーティブは、サッカー日本代表の応援を始めてから40周年であることを前面に押し出しすぎない表現を模索したという。
「キリングループがサッカー日本代表をオフィシャルパートナーとして応援していることは、サッカーファン以外の人たちにも広く浸透していると感じています。しかし、1978年から継続していることは、知らない人が多い。40周年を積極的に伝えようとすると、どうしてもキリンが主語になってしまいます。それでは共感が得られないのではないか、と社内で議論になりました」(泉氏)
そこで、これまで日本代表をファンやサポーターと一緒に応援してきたことや、これからも「共に」応援し続けるという、これまでの姿勢をそのまま伝えていくべきだと考えた。
「コピーにある『私たち』という主語は、キリンだけではなく、ファンやサポーターも含めたものです。日本代表を応援する人を応援し、共感していただくことでキリンのファンになってもらえることが理想。そのため、企業の一方的な主張になりすぎないように配慮しました」(泉氏)
最終面の全15段広告の写真は、スタジアムでサッカーを観戦するサポーターだ。その中心に40周年を記念したロゴを配した。「このロゴは、これからも継続して応援し続けるという意味を込めて、『4』は矢印にもなっています」(泉氏)
40周年をはじめとするメモリアルイヤーは、始まったばかりだ。今後の展開について、泉氏は意気込みを語った。
「W杯に向けて、世の中のサッカー機運をもっと高めていきたいです。マスメディアとデジタルメディアに加え、試合への協賛やパブリックビューイングの開催など、リアルなコミュニケーションを統合させながら、多くの人に楽しんでもらえるイベントなども企画しています。サッカーファンに共感していただき、最終的にはキリンのファンになってもらえるように、取り組んでいきたいです」
3つのポイント
◆新聞社に期待したこと
成果物として形に残り、一覧性があって広げたりめくったりしながら見やすいこと。そして、新聞のスケール感とインパクトのある表現であれば、それを価値だと目に留めてくれる人はいるはず、と考えました。
◆朝日新聞のイメージ
サッカー日本代表のサポーティングカンパニーで、サッカーを応援する企業という共通項があるので、我々の目指すことを理解してもらえると考えました。信頼しているメディアのひとつです。
◆コミュニケーション上の課題
サッカーの応援活動は、CSVの一環。私たちの活動に共感した人がキリンのファンになり、最終的には商品を買ってもらうことを目指しています。しかし、CSVの成果はすぐに出るものではなく、数値化しにくいものです。サッカーを通じた社会活動も行っていますが、まだ認知が低いため、情報発信をしていきたいと思います。